【SUPER GT】GT500はチャンピオン候補がなんと10チーム!大接戦の最終戦をプレビュー!
「SUPER GT」の最終戦がいよいよ11月28日(土)、29日(日)の2日間、富士スピードウェイ(静岡県)で開催される。
今年はコロナ禍でシーズン前半戦を無観客で開催し、サーキットも富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎの3箇所に限定して転戦したイレギュラーなシーズンになってしまったが、例年以上に予想通りにいかないレース展開が続いており、ドラマに満ちたシーズンになっている。
今回は国内3メーカーが争うGT500クラスの見どころをプレビューしよう。
新規定化の大混戦シーズンに
2020年のSUPER GTは新しい規定の下、華々しく開幕するはずだった。
特にGT500クラスはDTM(ドイツツーリングカー選手権)との共通技術規定であるクラス1で統一され、新時代を迎えた。この規定変更に合わせてトヨタがGRスープラを投入。そしてベース車両がミッドシップエンジンのホンダNSXは新規定に合わせてFR化されるなど、変化に富むシーズンと言える。
さらにGT500全チームがDTMとの共通部品としてBOSCH(ボッシュ)製のECU(エンジンコントロールユニット)を使用することになり、ECUの変更は今季の勢力図争いに大きな影響を与えるだろうと予想されていた。つまりは開幕前の開発競争でいかにライバルを凌駕できるか、という部分がポイントになるだろうと予想されていた。
SUPER GTは特定メーカーの独走を許さないために、成績に応じた重量ハンデシステムを採用しているが、これまでの傾向を見ていくと、開幕ダッシュに成功したメーカーがシーズンを制するパターンが多い。
そんな中、開幕戦・富士スピードウェイ(7月18日〜19日)ではGRスープラが上位5台を独占する横綱相撲を披露。開幕前から速さが伝えられていたGRスープラがシーズンを席巻するのではないかと予想された。
しかし、第2戦・富士スピードウェイ(8月8日〜9日)では開幕と同じサーキットであるにも関わらず、FR化したホンダNSXが予選から速さを見せ、決勝でも優勝。スープラ祭りに歯止めをかけた。
そして第3戦・鈴鹿では開発面の遅れが顕著だったニッサンGT-Rが独走で優勝。なんと3レースを終えて、勝者は3レースとも異なるメーカーのマシンになった。開幕戦のスープラ上位独占からは想像もできない混戦のシーズンだ。
しかも、第4戦・ツインリンクもてぎでは第2戦で優勝した#17 KEIHIN NSX(塚越広大/ベルトラン・バゲット)がGT500ではレアケースとなるシーズン序盤での2勝目をマーク。さらに第6戦・鈴鹿サーキットではセーフティカー導入前のドンピシャのタイミングを読みきった#23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が奇跡的な2勝目をマーク。今季は本当にドラマチックなレースが続いている。
チャンピオン候補は10チーム
1シーズンに2勝目を飾ったチームが2チームも存在するという、全く予想できないレース展開が続いたことで、最終戦にチャンピオン獲得の可能性を残しているのはなんと15チーム中10チーム。これだけたくさんのチームが最終戦までチャンピオンの可能性を残すシーズンはそうそうない。
最も重要視されるドライバーズ選手権でポイントランキング首位につけるのが、#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)=51点。そして同点の#37 Keeper Tom’s GR Supra(平川亮)=51点だ。
- 37はニック・キャシディがフォーミュラE参戦準備のために離脱し、第7戦から昨年のGT500王者の山下健太がチームに加入。開幕戦と同じウェイトハンデなしの富士スピードウェイだけにGRスープラは有利と考えられるが、その中で山下健太の力が非常に重要になってくる。
そしてランキング3位に今季鈴鹿で2勝をした#23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)=49点が首位のチームから2点差で続き、さらにこれまた同点で#100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)=49点がランキング4位につける。さらに首位から3点差で#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)=48点で続く。3点差以内に5チームがひしめき合う大接戦。ここまで紹介した5チームは最終戦で優勝すれば他のチームの成績に関係なくチャンピオンを獲得するという分かりやすい構図だ。
そして今季まだ未勝利ながらランキング6位につけるのが#14 WAKO’S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井翔)=47点で、このチームは予選でポールポジションを獲得して1点を加算すれば、優勝=チャンピオンという資格を得られることになる。
いくら何でもひしめき合いすぎの大混戦だ。これら6チームが予選から上位を走り、優勝したチームがチャンピオンという構図ならば一番分かりやすいのだが、そうはならないのが今年のGT500。他のチームが決勝レースの主導権を握ってしまうと、細かいポイント計算が必要なレースになってくる。
GT500 ドライバーズランキング(第7戦終了時点)
1. KEIHIN NSX-GT(塚越/バケット)=51点
2. Keeper Tom’s GR Supra(平川)=51点
3. MOTUL AUTECH GT-R(松田/クインタレッリ)=49点
4. RAYBRIG NSX-GT(山本/牧野)=49点
5. ARTA NSX-GT(野尻/福住)=48点
6. WAKO'S 4CR GR SUPRA(大嶋/坪井)=47点
7. Keeper Tom’s GR Supra(キャシディ)=46点
8. au TOM'S GR Supra(関口/フェネストラズ)=45点
9. DENSO KOBELCO SARD GR Supra(中山)=42点
10. ZENT GR Supra(立川/石浦)=37点
11. DENSO KOBELCO SARD GR Supra(コバライネン)=31点
12. Modulo NSX-GT(伊沢/大津)=31点
チャンピオンの権利があるのは以上
スープラの逆襲なるか?
ウェイトハンデなしで富士スピードウェイでの66周の決勝レース。このフォーマットは7月の開幕戦と全く同じ。そのため、トヨタ勢がホームコースとする富士で、GRスープラが上位を独占するというストーリーが現実になってもなんら不思議ではない。しかしながら、最終戦の富士は一筋縄ではいかない要素が絡み合って、面白い戦いになりそうだ。
開幕戦との違いはまず、季節が異なること。11月末の富士は晴れればそれなりに気温が上昇する日もあるが、曇れば凍てつくような寒さになる。そこで重要になるのがタイヤ。優勝=チャンピオンのランキング上位陣の中では多くのチームがブリヂストンユーザーで、#23 MOTUL AUTECH GT-Rがミシュランユーザー。どれだけ冬の路面に合わせられるかが勝負のカギになる。
また例年、最終戦はツインリンクもてぎ(栃木県)で開催されているが、オーバーテイクが難しいストップ&ゴーサーキットのツインリンクもてぎと違い、富士スピードウェイは約1.5kmの長いストレートがあり、TGRコーナー(第1コーナー)でのオーバーテイクシーンが多い。ストレートスピードの速さは重要なファクターであり、ベース車両の空力性能という意味ではGRスープラ勢がやや有利か。
直線の速さにはエンジンの出力も必要だ。今季も使用できるエンジンは年間2基までで、2基目のエンジンをいち早く投入したのは第3戦の鈴鹿で勝利した #23 MOTUL AUTECH GT-R。新しいエンジンで第3戦に勝利した。ただ第3戦から最終戦までの6レースを2基目で戦うことになり、最終戦は最も使いこんだエンジンとなる(#23は第3戦以降、全戦完走している)。
他のチームはというと、全15チーム中11チームが1基目のエンジンを5戦目まで使い、第6戦の鈴鹿から2基目を投入。つまりこれらのチームはパワー重視で終盤3レースを戦えるわけだ。チャンピオン候補チームでは#23 MOTUL AUTECH GT-R以外は全て3レース目のエンジンで最終戦を迎えることになる。
どのチームがチャンピオンになれるかは予選での速さである程度見えてしまうかもしれない。しかし、決勝レースでのツキも含めて予想外の番狂わせが起きてしまうのも今季のSUPER GTだ。展開によっては同ポイントで並ぶことも考えられる。そのケースで有利になるのはやはり2勝を挙げている#17 KEIHIN NSX-GTと#23 MOTUL AUTECH GT-Rの2チーム。勝利数差のアドバンテージが最後に命運を分けるかもしれない。
最終戦で笑うのは、FR化して今季大活躍のホンダNSXか、苦しみながらもチームワークで躍進してきたニッサンGT-Rか、それともデビューイヤーでホームコースでの王座決定を狙うGRスープラか。SUPER GT史上最も面白いチャンピオン争いがいよいよ始まる。