【SUPER GT】KONDOレーシングの逃げ切り、王座獲得なるか?GT300最終戦プレビュー
11月28日(土)、29日(日)の2日間、富士スピードウェイ(静岡県)で開催される「SUPER GT」最終戦。
GT500クラスは史上稀に見る大混戦で、なんと10チームがチャンピオンの可能性を残す注目の最終戦。GT500のプレビューに関しては前回の記事をご覧いただくとして、今回はGT300クラスのチャンピオン争いにフォーカスを当てよう。
GT300クラスもドライバーズ選手権では7チームにチャンピオン獲得の権利がある状態で最終戦を迎えることになった。GT500ほどの接戦ではないものの、これまた例年以上に優勝予想が難しいGT300の王座争いはレースウィークを通じて混迷を極めるだろう。
タイヤ戦争に異変?予測不能な勢力図
1レースで約30台が出場するGT300クラス。ニッサンGT-R、メルセデスAMG GT、スバルBRZ、ホンダNSX、トヨタGRスープラ、アウディR8、ランボルギーニ・ウラカン、ポルシェ911 GT3など国内外の様々なタイプのマシンが同じ土俵で戦うということがGT300の魅力だが、どのチームにも優勝の可能性があるという部分がファンを引きつけるところだろう。
今季で言えば、前年のドライバーズ選手権で(ポイント獲得チーム中)最下位だった「#360 RUNUP RIVAUX GT-R」(青木孝行/大滝拓也)が第7戦・ツインリンクもてぎで3位表彰台を獲得。
また、今季チーム体制もドライバーラインナップも一新した「#21 Hitotsuyama Audi R8 LMS」(川端伸太朗/近藤翼)が第6戦・鈴鹿サーキットで優勝したりと、いわゆる伏兵的存在のチームが急上昇して活躍するところも面白い。
思えば、7月に延期され、無観客開催で始まった今季の「SUPER GT」GT300クラスの混沌とした争いは開幕戦・富士スピードウェイでの「#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT」(吉田広樹/川合孝汰)のデビューウインから始まった。
同チームが投入したGRスープラはGT300独自のJAF-GT規定のマシンで車体開発の自由度が高いが、チームの歴史もまだ短く、川合孝汰はGTデビュー戦だっただけに、GRスープラのデビューウインは鮮烈だったといえよう。
そのGRスープラ優勝に大きく貢献したと考えられるのがタイヤだ。近年のGT300はタイヤ戦争がGT500以上に激しさを増している。2018年、19年とブリヂストンが2連覇し、横浜ゴム、ダンロップがそれに対抗する構図に今季からはミシュランもGT300に復帰した。ハイグリップなタイヤ開発とそれに合わせたマシン作り、エンジニアリング力が求められるのだ。
2018年はブリヂストンユーザーが8戦中5勝と圧勝したが、2019年はブリヂストンは僅か3勝にとどまり、2020年も7戦終えて僅か2勝。今季は横浜ゴム(4勝)の活躍が目立っている。
一方で、横浜ゴムと共に3回チャンピオンを獲ったADVANユーザー筆頭の「#4 グッドスマイル 初音ミクAMG」(谷口信輝/片岡龍也)は今季まだ未勝利で苦しむなど、通常の方程式では成り立たないのが今季のGT300である。
KONDO RACINGがランキング首位
GT500を前に脇役として捉えられてもおかしくないGT300だが、近年はプライベーターの域を超えたプロフェッショナルなレースぶりで注目度が増しているといえよう。
そんな中、今季の最終戦を前にランキング首位に立っているのが近藤真彦監督率いるKONDO RACINGの「#56 リアライズ日産自動車大学校GT-R」(藤波清斗/J.P.オリベイラ)。
今季の同チームは昨年のドライバー、平峰一貴とサッシャ・フェネストラズがチームを卒業し、全く新しいドライバー編成となった。しかし、オリベイラはGT500を経験した最強の助っ人である。そして藤波はGT300のレース経験は多くはないものの、同じFIA GT3の日産GT-Rでスーパー耐久に参戦し、富士24時間レースでは2連覇しているGT-R使いだ。
新ラインナップのKONDO RACINGはシーズン序盤、昨年ほどのインパクトの強さはなかったものの、シーズン後半になって突如、主役級に躍り出てきた。第5戦・富士スピードウェイでの優勝に続き、第7戦・ツインリンクもてぎでも優勝し、一気にランキング首位に立った。
様々な条件が整い、タイヤや車体に何かしらの有利なものがないと2勝することさえ難しいSUPER GTで、KONDO RACINGはなんとシーズン後半に2勝した。マシンはどのチームでも買える、仕様変更不可のFIA GT3マシン(ニッサンGT-R)。
タイヤに関しては、KONDO RACINGはGT500を含めて昔から横浜ゴムとは繋がりが深いが、今季予選で同チームがトップ3に入ったのは僅か1回(第3戦・鈴鹿)のみということで、タイヤで他を圧倒しているわけではなさそう。第5戦は6番手から、第7戦は7番手からスタートしての優勝ということで、決勝レースでの強さとチームワークの強さが光っている。
第7戦で優勝し、ランキング首位に立ったところで、まさかの近藤真彦監督のプライベートに関する週刊誌報道、そして活動自粛発表。
タレント活動とは一線を引いた形でレース業界のビジネスを展開する近藤監督だが、残念ながら今年のサーキットでの監督業務は見合わせる方向だ。監督不在の最終戦、「#56 リアライズ日産自動車大学校GT-R」(藤波清斗/J.P.オリベイラ)が首位を守りきれるか注目したい。
7チームの王座争い、スバルや初音ミクも
4点差に6チームがひしめき合うGT500に比べると、GT300はチャンピオン候補7チームのポイント差は大きい。しかし、予選で伏兵が現れることが多く、決勝での順位変動が激しいGT300では大逆転のチャンピオン獲得も考えられる。
ランキング首位の「#56 リアライズ日産自動車大学校GT-R」(藤波清斗/J.P.オリベイラ)=56点と、ランキング2位の「#65 LEON PYRAMID AMG」(蒲生尚弥/菅波冬悟)=51点の差は5点。優勝=20点、2位=15点という獲得ポイントになるため、#65 LEON が優勝、#56 リアライズが2位となった場合、同点にはなるが、2勝をマークしている#56 リアライズがチャンピオンとなる。
一方、#65 LEONが自力チャンピオンになる条件はポールポジション獲得=1点、優勝=20点を取ること。#65 LEONが開幕戦・富士以来のポール獲得となれば、チャンピオンの可能性が広がることになる。
そして、ランキング3位につけるのは「#11 GAINER TANAX GT-R」(平中克幸/安田裕信)=43点。トップから13点差であるため優勝してもライバルの結果次第ということになるが、秋以降にダンロップは予選で速さを見せているので、ポール獲得となれば追い風になるだろう。
また開幕戦ウイナーの「#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT」(吉田広樹/川合孝汰)、「#61 SUBARU BRZ R&D SPORT」(井口卓人/山内英輝)、「#55 ARTA NSX GT3」(大湯都史樹)が41点で並び、チャンピオンの可能性を残す。大湯のチームメイト、高木真一はスーパー耐久のクラッシュによる怪我で最終戦も欠場する。
そしてシーズン終盤にようやく表彰台を獲得してギリギリいっぱいチャンピオン争いに踏みとどまったのが「#4 グッドスマイル 初音ミクAMG」(谷口信輝/片岡龍也)=36点。ポールポジション獲得=1点を得なければ王座争いから脱落するという厳しい状況ではあるが、ノーウェイトの最終戦でどんなパフォーマンスを見せるか注目だ。
チャンピオン獲得の権利を持つ7チームだけではなく、「#6 ADVICS muta MC86」(阪口良平/小高一斗)、「#96 K-tunes RC F GT3」(新田守男/阪口晴南)、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」(嵯峨宏紀/中山友貴)など予選から上位に来そうなチームが数多く存在するGT300。チャンピオン争い=優勝争いとはならないかもしれないが、動きの多いレースになることは間違いない。
GT500のチャンピオン争いを含めて、観戦する方も頭フル回転のレースになりそうだ。