日本のシングルマザーが悲惨な理由
日本におけるシングルマザーの貧困率が先進国中突出して高いとの記事が話題となっています。
【参考リンク】日本のシングルマザーの貧困率が突出して高い理由
原因自体は記事で言及されているように、日本においてはシングルマザーの正規雇用比率が極めて低いという点につきるでしょう。
といって「非正規雇用が悪なので規制します」では、民主党政権時の“有期雇用5年ルール”のようにさらに彼女たちを追い詰めるだけの結果になるでしょう。
そもそも、なぜシングルマザーの正規雇用比率は低いのでしょうか。
日本型雇用では女性はあくまでサポート役
日本企業のほとんどは終身雇用を前提とした雇用慣習を採用しています。必要最小限の人員で繁忙期には残業で対応する、空きの出た事業所に辞令一枚で転勤する等が代表的なものです。
たとえ終身雇用が提供できていないような規模の企業であっても、同じ慣習は広く浸透しています。大企業に合わせた法律が適用されるのだから当然ですね。
残業や転勤といった働き方を行うためには男性の方が適していると、少なくとも企業サイドは考えます。そのことは22.2%という新卒採用者における女性比率を見ても明らかです(総合職、コース別雇用管理制度の実施・指導状況2014より)。
男性であれば、いくらでも正社員の働き口は見つかるでしょう。女性でも男性同様の働き方が可能なら、努力すれば正社員になれるはずです。でも、小さな子供のいる女性にはなかなか難しいというのが現実でしょう。
雇用改革とユニバーサルな社会保障の導入が鍵
抜本的な対策としては、まず解雇規制緩和や有期雇用上限ルールの廃止などにより正規雇用と非正規雇用の格差を是正する労働市場改革が必要でしょう。解雇しやすくなれば採用の門戸が広がり、非正規雇用の上限を無くすことで雇用形態にかかわらず各人に能力に応じた仕事を任せられるからです。
合わせて、現役世代向けの社会保障機能を“正規雇用”という形で民間企業に丸投げするのではなく、ベーシックインカム(あるいは給付付き税額控除)のような形で税金によって導入するのが有効でしょう。
上記2点のうち、どちらか一つでも実現できれば、日本のシングルマザーの生活は劇的に向上するはずです。
ただ、それらは既に正社員の椅子に座っている人たちにとってはなんの意味もない、というかむしろ自分たちの既得権に反する制度であり、少なくとも積極的に支持に回ることはないでしょう。
日本のシングルマザーの悲劇は、本来彼女らの側に立つべきリベラルの多くが、上記のような正社員労組を支持基盤とし、むしろシングルマザーを追い詰める側に回っている点にあるというのが筆者の見解です。