どら焼きの名店・桃六さんはこし餡も!「道明寺」で楽しむしっとりこし餡と道明寺の秋の花
お花見といえば桜、すなわち春のイメージが強いのですが、個人的には秋もお気に入りの季節のひとつ。早い物は5月頃から楽しむことができ、9月になるとより一層豊かな花弁を携える優雅な姿に出会うことができます。
日本では仏花(お墓参りやお仏壇にお供えする花)という印象が強い花ですが、日本の国の花として指定されているように、実は非常に高貴な花。その証拠に、「まさり草(どの草花よりも優れて美しい)」や「千代見草(長寿祈願)」などの和名でも呼ばれているほか、天皇家の御紋やパスポートにも用いられています。いかがでしょう?菊のイメージが少し変化したという方もいらっしゃれば嬉しいなと思います。
さて、秋になると栗やさつまいもを用いた和菓子のほかに、菊のイメージを用いた和菓子も姿を現します。そしてそれは練り切りだけにあらず。
今回は東京都中央区京橋というオフィス街の中心にお店を構える1872年創業の老舗、「桃六」さんの「道明寺」をご紹介。
道明寺といえば関西風の桜餅、だけではありません。道明寺は道明寺粉といいまして、美味しく食べられる状態に炊き上げた糯米を乾燥させたもので、その後それぞれ用途にあわせて挽いたものです。関西風の桜餅のつぶつぶの大きさが異なるのはその挽いている大きさの違い。やや小さめの、一粒一粒が丸みを帯びた状態に整えた道明寺粉は、菊の花のような優しい紫色に染め上げ、とろりとしたこし餡をたっぷりと包んでいます。上にはふっくらとした小豆の蜜煮がちょこんと。菊の花の芯でしょうね。
このままでも勿論美味しいのですが、ここで桃六さんの熟練の経験が光る一工夫!透明な錦玉(甘い寒天液のこと)を纏わせることで、艶と乾燥防止とさらに美味しさをプラス。素朴な糯米の甘味の一歩手前に、お砂糖が活きる錦玉の甘味が加わり、より満足感の高い味わいに仕上がります。また、深緑色の葉っぱは抹茶の羊羹。菊の花の葉っぱって、やや縦長のような独特な形をしているんですよね。
菊の花はとっつきにくいようなイメージもありますが、この機会にぜひ甘い菊から菊の魅力にふれてみてはいかがでしょうか。