名古屋めしの王道「味噌煮込みうどん」が進化! つけ麺、鍋の〆、リゾットも
名古屋めしの中でも特に広く親しまれている味噌煮込みうどん
味噌煮込みうどんはバリエーション豊かなご当地グルメ・名古屋めしの中でも代表格の一品。明治時代がルーツの老舗もあるなど歴史があり、地域特有の豆味噌を使う郷土色もあり。地元では外食でも自宅でも食べる機会は多く、日常食としての浸透度は名古屋めしの中でも随一です。
この味噌煮込みうどんに近年新たな動きが。これまでになかった食べ方を提案する店が少しずつ現れているのです。今回はそんな“進化系・味噌煮込みうどん”を紹介します。
つけ麺スタイルで麺を堪能する「HigashiyamaNikoten」
ミシュランにも掲載された「千年ニコ天」が今年10月に移転リニューアルした「HigashiyamaNikoten」(名古屋市千種区)。きしめん、味噌煮込み、カレー煮込みの3種類のみで価格は1500円~と、常識破りのメニュー構成・価格設定でも注目を集めています。
ぐつぐつ味噌煮込みうどん(トップ画像)は、名前の通りぐつぐつ煮え立つ味噌つゆの土鍋と麺が別々で出てくるつけ麺スタイル。本来、味噌煮込みうどんは土鍋で麺をゆで、そのままお客の前に運ばれるのが常識で、このような提供方は筆者が知る限り他では見たことがありません。
「愛知県産小麦きぬあかりで打った麺は、もちっとしたうどんらしさがあり、ピカッとつやがあって見た目もいい。ゆでて冷水でしめるとその特徴が活きるので、あえてその状態で出し、お客さんが自分でゆでることで食のエンターテイメント性も楽しんでもらおうと考えました」と店主の中村誠さん。
やや細めの麺はあらかじめゆで上げてあるので、そのままでもちもちした食感を楽しめ、さらに土鍋に入れて自分好みのゆで加減で味わうことができます。味噌は名古屋の帝国醸造製の豆味噌を使用。手づくりの優しい味わいが引き立つつゆに仕上げてあります。地元の味噌煮込みツウなら素材や製法へのこだわりに他にはない個性を感じられ、若い世代や旅行者なら親しみやすさと楽しさに味噌煮込みうどんへの興味が高まる、そんな一杯です。
(関連記事/「きしめん1杯1500円!業界の常識を覆すミシュラン掲載の名店の挑戦」2021年10月27日)
絶品鍋をセルフ味噌煮込みうどんで〆る「山本屋本店」
味噌煮込みうどん専門店として全国にその名が知られるのが「山本屋本店」です。名古屋市内を中心に10店舗以上があり、“味噌煮込み=太くて固い”麺のイメージはこの店によって広まったと言っても過言ではありません。
この超有名店に、実は激ウマの鍋料理があることはまだあまり知られていません。その名も味噌もつ鍋です。2007年に当時の新店舗向けに開発され、2010年頃から他の店でも採用されることになりました。「名古屋ツウの芸能人やインスタグラマーの方が気に入ってくれることが多く、最近になってようやくじわじわ知られるようになってきました」と山本屋本店企画部の永田剛典さん。
国産牛もつは新鮮でぷるぷるつやつや。これを一昼夜、味噌漬けにします。「メニュー開発にあたって、もつ鍋の本場・博多で食べ歩きをしたのですが、赤味噌に漬けたもつはありませんでした。うちの味噌もつ鍋は本場でも味わえないオリジナルなんです」と前出・永田さん。もつを漬けるのも、鍋にとかし入れるのも、味噌煮込みうどんに使うのと同じ、地元産豆味噌をベースとした山本屋本店特製ブレンド。ただし配合は微妙に変えてあり、味噌煮込みうどんの特徴を活かしつつ、鍋料理専用にアレンジしています。
もつ鍋のおいしさはもちろんですが、最後に最大のお楽しみが。〆に味噌煮込みうどん専用の生麺が出てくるのです。名古屋の人なら誰もが食べたことがあるであろう山本屋本店の味噌煮込みうどんですが、生の状態で見る機会はまずありません。これを自分で鍋に投入し、自分好みの固さ・柔らかさに煮て食べることができるのです。しかも、ダシに溶け出したもつのうまみや野菜の甘みが麺にしみ込み、ひと味違った“山本屋本店の味噌煮込みうどん”を味わえます。
価格も1人前2090円(2人前より)とリーズナブルで、しかも11~2月限定の忘・新年会プランならつまみやデザートなどもついて2500円~と超お値打ち(3日前までに要予約)。誰もが知る有名店の意外でおトクな活用法としてもお勧めです。
カレー煮込みの〆はチーズリゾット!「みそ煮込みの角丸」
「みそ煮込みの角丸」(名古屋市東区)は大正15年創業の老舗にして幅広く親しまれる人気店。平日のランチタイムは近隣のビジネスマンでにぎわい、休日には遠方から訪れる人で行列ができることも珍しくありません。
同店が中心になって、今から10年前に新ご当地グルメとして売り出されたのがカレー煮込みうどん。味噌煮込みと同じ煮込み専用麺(一般的なうどんと違い、塩水ではなく真水で生地をこねる)を使い、カレー仕立てにしたもので、いわば味噌煮込みうどんの発展的メニュー。それ以前から名古屋や愛知のうどん店では見かける一品だったのですが、PRに力を入れることで人気が高まり、それぞれの店の個性や完成度もアップしています。
「麺やダシは味噌煮込みうどんと同じですが、カレールゥはもともとあるカレー中華などとは違う専用のものを使っています。味噌煮込みうどんのインパクトにも負けないよう、よりパンチを重視してルゥとスパイスを配合しています」と角丸・3代目の日比野宏紀さん。
そして5年ほど前にトッピングメニューとして考案したのがチーズリゾット。残ったつゆにごはんと粉チーズを投入して〆にするのです。ごはんの一粒一粒にカレーと和風だしの風味がしっかりからみ、チーズでさらにまろやかさがアップ。筆者は残しておいた玉子も混ぜてみたところこれが大正解。カレー、チーズ、玉子とそれぞれのコクが一体となって満足度がグッと高まりました。
「味噌煮込みでもカレー煮込みでもどちらもチーズリゾットにできます。一度食べた人は“これは絶対味噌だよね!”“絶対カレーが合う!!”とそれぞれ熱烈に好きになってくれます。つゆも残さず平らげてもらえるので、SDG´sにも合っている食べ方なんです(笑)」と日比野さん。
味噌煮込みうどんと並ぶ名古屋のご当地麺・きしめんは、幅広麺やこれまでになかったトッピングなど創作性あふれるメニューでここ数年人気が盛り返しています。対して味噌煮込みは盤石の人気を誇るがゆえに長らく目立った新メニューはありませんでした。そんな中で個性を発揮している新・煮込みうどん。伝統ある一品に新たな魅力が加わり、名古屋めしシーンのさらなる活性化につながりそうです。
(写真撮影/すべて筆者)