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高まる新型肺炎への警戒感 西半球最大、ニューヨークの中華街は今 路上でマスク売る人も

南龍太記者
(写真:ロイター/アフロ)

 コロナウイルスの感染懸念が世界的に強まる中、西半球で最も多くの中国人が住むニューヨークでも警戒感が広がっている。以前は風邪の流行期でもマスクをして出歩く人をほとんど見掛けなかったが、このたびの緊急事態を受け、マスクを着ける人の姿が目立つようになってきた。人々の意識が変わり始めた。

 市内での感染者は今のところ確認されていない。ただ、一時は感染者が出たと報道されて情報が錯綜するなど混乱もあった。日本のように、マスクが高額で多数転売されるような騒ぎにはなっていないものの、一部で品薄となる店舗は出てきている。

 もちろん、中国人が多く暮らしていることとコロナウイルスの感染は短絡的に結び付かないが、元来世界中から大勢がやって来る国際都市のニューヨーク。今後も予断を許さない。

 

フラッシングの様子を伝える地元のフリーペーパー(筆者撮影)
フラッシングの様子を伝える地元のフリーペーパー(筆者撮影)

中国人は50万人超

 ニューヨーク市には50万を超す中国人が暮らしている。カリフォルニア州のロサンゼルスやサンフランシスコを大きく上回り、中国人のコミュニティーとしては西半球最大とも、アジア以外で最も多いともいわれる。

 ニューヨーク市内には10ほどのチャイナタウン(中華街)があるとされ、マンハッタン区の南部やクイーンズ区フラッシングだけでそれぞれ数万人の中国人が生活している。

異国情緒漂うフラッシング(19年2月、筆者撮影)
異国情緒漂うフラッシング(19年2月、筆者撮影)

 旧正月には毎年パレードが行われ、たくさんの人出でにぎわう。その時期でなくとも、市全体の相場に比べて安い食品や日用品のお店、中華料理店がひしめき、チャイナタウンは常に混み合っている印象だ。

 旧正月はパレードの他にも大小さまざまなイベントが開かれ、中国人もそうでなくても、楽しみにしている人は多い。

 だが今年はコロナウイルスの感染を警戒し、コミュニティーの団体が計画していた関連イベントは相次いで中止となった。数千人規模の参加が見込まれていた中、苦渋の判断だった。

 下記のツイッターのように、コロナウイルスへの本国の対応をめぐって批判の声も出ているようだ。

マスクしない習慣に変化

 フラッシングの街中を撮影したこのユーチューブの動画は、投稿者によると今年1月14日に撮られたものだという。インフルエンザの流行も不安視されていた時期だが、マスクを着けている人はほとんど見当たらない。東京などと違い、ニューヨークでは人々がマスクをする習慣がない。

 しかし、今回のコロナウイルスの問題を受け、マスクをする人が徐々に増え始めている。市当局などが必要に応じたマスクの着用を推奨していることも背景にある。

 2月1日にフラッシングの様子を伝えた米ABCによると、ドラッグストアではマスクが品切れになったり、顧客1人当たりの購入数を制限したりしている。路上でマスクを販売する業者も現れ始めたという。

ABCのサイトより
ABCのサイトより

 筆者も同じクイーンズのドラッグストアに立ち寄った。報道されているような日本ほどではないが、マスクはやはり品薄のようではあった。

3人検査、1人陰性

 2月4日現在、ニューヨークでは3人がコロナウイルスの検査を受け、うち1人が陰性と判明、残り2人は検査中となっている。

 感染をめぐり、ニューヨークの地元紙が先月末「クイーンズで市内初の新型ウイルス感染者が出た」と報じて一時騒ぎとなったが、市はその事実はないと否定した。

 米国内外の情勢を見れば、いつニューヨークで感染者が出てもおかしくない状況だ。市の保健当局や学校も予防を徹底するよう呼び掛けている。収束のめどが立たない中、まずは個々人による自己防衛が肝心だろう。

記者

執筆テーマはAIやBMIのICT、移民・外国人、エネルギー。 未来を探究する学問"未来学"(Futures Studies)の国際NGO世界未来学連盟(WFSF)日本支部創設、現在電気通信大学大学院情報理工学研究科で2050年以降の世界について研究。東京外国語大学ペルシア語学科卒、元共同通信記者。 主著『生成AIの常識』(ソシム)、今年度刊行予定『未来学の世界(仮)』、『エネルギー業界大研究』、『電子部品業界大研究』、『AI・5G・IC業界大研究』(産学社)、訳書『Futures Thinking Playbook』。新潟出身。ryuta373rm[at]yahoo.co.jp

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