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「いろいろな国を自由に楽しめる世界を」 在日20年超、日本一バズる大使が桃鉄を通じて希求する平和

南龍太記者
「桃鉄」シリーズ最新作をプレイするレジャバ大使(左)ら

ジョージア、かつてのグルジアは、どこにある国かご存じだろうか。ロシアとトルコに挟まれた国で人口は400万人弱、日本の5分の1ほどの国土だ。

そのジョージアの駐日大使、ティムラズ・レジャバ氏(35)は2021年に大使に就任後、巧みな日本語でSNSを駆使し、X(旧ツイッター)のフォロワー数が26万を超すインフルエンサーでもある。

以前、人気ゲーム「桃太郎電鉄(桃鉄)」で遊ぶ様子をSNSでつぶやいてバズった縁で、シリーズ最新作「桃太郎電鉄ワールド」を今月試遊した。ゲームに登場する自国の首都トビリシの魅力を伝えるとともに、争いが絶えない現実世界を憂い、ゲームの世界観が示すような平和の到来を願った。

在日ジョージア人は漸増

試遊のあった11月上旬、ジョージアの伝統衣装で登場したレジャバ氏は、「この服はハレの日とか、そういうめでたい機会に正装として着ることが多い」と流暢な日本語で説明する。

ジョージアの首都トビリシで生まれた後、4歳の時に家庭の事情で広島県に移り住んだ。日本での生活は都合20年以上に及び、日本語が上手なのもうなずける。

遡ること1991年にソ連が崩壊、グルジア・ソビエト社会主義共和国だったジョージアは、ロシア主導のCIS(独立国家共同体)への不参加を決めるなど、ロシアに対する複雑な感情を持ち続けた国の1つだった。反ロシア感情を背景に、ロシア語読みの「グルジア」の呼称を拒み、日本も2015年から「ジョージア」に称呼を改めた。

グルジアとして登録外国人統計(現在留外国人統計)に登場した1994年当初、日本には6人のジョージア人がいたと記録されている。4歳だった約30年前、つまり1990年代前半に日本へ移り住んだレジャバ氏は最初期の「ジョージア人移民」に当たる。

その後徐々に在留者は増え、最新の2022年末の統計によると、81人が暮らすようになっている。類別で最も多いのは「留学生」で24人を占め、「技術・人文知識・国際業務」も15人と多い。

在留外国人統計より筆者作成
在留外国人統計より筆者作成

日本暮らしが長いレジャバ氏は、子どものころから日本のテレビゲームに親しみ、弟ともよく桃鉄で対戦していたという。

遊んで学べるゲーム

桃鉄は国内外、津々浦々の駅や港を結ぶ線路や航路を、プレイヤーが振って出たサイコロの目に応じて進むすごろくのようなゲームだ。目的地がランダムで決まり、プレイヤー同士が我先にとゴールを目指す。

各地の駅ではご当地の名産や民芸品、有名施設にまつわる物件が売られている。所持金が許せば購入でき、その物件から定期的に収益が得られる仕組みだ。決められた年限で、最終的にお金や資産を多く持っている人が勝ちとなる。

1988年に桃鉄シリーズの第一弾がファミリーコンピュータのソフトとして発売した。35周年を迎えた今もなお、根強い人気を誇る。

11月16日発売予定のシリーズ最新作は世界が舞台で、ニューヨークやロンドンといった大都市のほか、アディスアベバやヤンゴン、バグダッドといった行きやすくはない国々の都市も多く登場する。縁遠いと思っていた世界が身近に感じられ、ゲームを通じて国内外の地理が覚えられる。それこそが「桃鉄」シリーズの醍醐味であり、長年愛される秘訣でもある。

トビリシに一番乗りし、記念撮影するレジャバ氏(左)
トビリシに一番乗りし、記念撮影するレジャバ氏(左)

この日は体験会として、ジョージアの首都、トビリシが目的地となった。大使を含む3人が試遊し、トビリシを目指した。道すがら、沖縄の駅に止まったり、中国の各都市を通ったりしてその都度、各地にまつわる思い出やエピソードを語り合い、盛り上がった。

トビリシに一番乗りしたのはレジャバ氏。ゴールするとすぐ「ジョージアワイン屋」や鶏肉をガーリックで煮込んだ料理の「シュクメルリ屋」などの物件を買えるだけ買ってご満悦。さらに、ジョージアのワインの歴史やシュクメルリの魅力、温泉がある首都について「トビリシ」という言葉自体が「温かい水」を意味しているといったトリビアを、嬉々として解説していた。

トビリシ駅で買える物件の内容について紹介するレジャバ氏
トビリシ駅で買える物件の内容について紹介するレジャバ氏

希望に共鳴

試遊を終えた後、レジャバ氏は「他の駅にはどんな物件があるか、とても楽しみ。外交官の間で『この前、あなたの国でこんな物件が買えた』と話題になりそう」と期待した。

報道陣から、どの国の大使と対戦してみたいか聞かれると「それはちょっと、どこと特定するのは難しい」と明言を避けた。

一方、最新作の副題「地球は希望でまわってる!」に着目し、「世界情勢は今、非常に混迷している。本来は(桃鉄の世界観のように)いろいろな国のいろいろな文化を自由に、弊害なく楽しめる世界だったらいいなと思う。この『希望』という言葉に非常に共鳴する気持ちでいる」と感慨を述べた。

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平和の願いも込められたゲームを通じ、混迷が続く世界が少しでも安寧に向かうように――。プレイ中もプレイ後も、大使の表情は真剣そのものだった。

(写真はいずれも筆者が撮影、11月6日東京都中央区)

コピーライト:さくまあきら Konami Digital Entertainment

記者

執筆テーマはAIやBMIのICT、移民・外国人、エネルギー。 未来を探究する学問"未来学"(Futures Studies)の国際NGO世界未来学連盟(WFSF)日本支部創設、現在電気通信大学大学院情報理工学研究科で2050年以降の世界について研究。東京外国語大学ペルシア語学科卒、元共同通信記者。 主著『生成AIの常識』(ソシム)、今年度刊行予定『未来学の世界(仮)』、『エネルギー業界大研究』、『電子部品業界大研究』、『AI・5G・IC業界大研究』(産学社)、訳書『Futures Thinking Playbook』。新潟出身。ryuta373rm[at]yahoo.co.jp

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