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台風5号が西進して東北上陸へ 都道府県別にみると岩手県・宮城県なら2回目、福島県なら初の上陸

饒村曜気象予報士
東北地方に接近中の台風5号の雲(8月10日15時)

台風5号が東北上陸へ

 日本の東海上を北上中の台風5号は、進路を次第に西に変え、8月12日に東北地方に上陸する可能性がでてきました(図1)。

図1 台風5号の進路予報と海面水温(8月10日3時)
図1 台風5号の進路予報と海面水温(8月10日3時)

 東北地方に接近する台風5号に関する情報は、最新のものをお使いください

 台風が発達する目安の海面水温は27度と言われていますが、台風5号が進んでいる日本の東海上の海面水温は28度くらいです。

 このため、最大風速が30メートル、最大瞬間風速が40メートルの台風に発達してから東北地方に上陸すると思われます。

 多くの台風は、北東進して日本に接近・上陸しますが、太平洋高気圧が強く張り出してくる真夏は、北西進、あるいは西進して接近・上陸することが珍しくありません。

 ただ、台風が西進してくるのは北緯30度くらいがほとんどで、台風5号のように北緯35度以北で西進してくるものは数が少なく、その結果として東北地方に上陸する台風の数は少なくなっています。

台風の上陸

 気象庁では、台風の上陸を「台風の気圧が一番低い場所が、九州、四国、本州、北海道の海岸線に達した場合」と定義し、沖縄本島など島の上を通過した場合は上陸とはしていません。

 従って、沖縄本島など沖縄県の島の真上を台風が通過することがあっても、上陸は0となります。

 また、栃木・群馬・埼玉・山梨・長野・岐阜・奈良・滋賀の8県は海に面していませんので、上陸なしです。

 これらの県を除く38都道府県別の上陸数を、台風の統計がある昭和26年(1951年)以降でみると、一番多いのは鹿児島県の43個、次いで高知県の26個です(表)。

表 台風の都道府県別上陸数(昭和26年(1951年)~令和5年(2023年))
表 台風の都道府県別上陸数(昭和26年(1951年)~令和5年(2023年))

 岩手県や宮城県は、過去に1個の台風が上陸したことがあり、台風5号がどちらかの県に上陸すると、その県では2回目、福島県に上陸すると初めてということになります。

 福島県のように、これまで台風上陸がないのは、定義上上陸のない沖縄県と海なし県である8県を除くと13都府県です。

 福島県など9府県は、図2のようなコースを台風が進めば上陸する可能性があります。

図2 台風上陸の可能性がある9府県
図2 台風上陸の可能性がある9府県

 しかし、東京都や富山県、香川県、岡山県は、曲がりくねった狭い海峡を陸地にかからず通過することは考えにくいので、台風上陸はなさそうです(図3)。

図3 台風上陸の可能性がほとんどない4都県
図3 台風上陸の可能性がほとんどない4都県

台風上陸が少ない東北地方は特に警戒が必要

 東北地方に接近している台風5号の北西側には、活発な雨雲があります(タイトル画像)。このことは、台風接近前から大雨が降る可能性があることを示しています。

 また、台風5号の南西側にも活発な雨雲があり、台風通過後に追い打ちの雨を降らせる可能性があることを示しています。

 北日本では暴風や高波、土砂災害、河川の増水や氾濫、低い土地の浸水に警戒してください。

 気象庁では、きめ細かく、暴風域に入る3時間ごとの確率を発表しています。

 暴風域に入る確率の数値は、台風接近と共に大きくなってきますが、例えば、宮城県の東部仙台では、8月12日未明が34パーセントと前後の時間に比べて高くなっています(図4)。

図4 宮城県が暴風域に入る確率
図4 宮城県が暴風域に入る確率

 この前後の時間に比べて確率が高くなっているところに注目すると、東部仙台に台風5号が一番接近するのは8月12日未明ということになります。

 東北地方の台風上陸数が少ないということは、台風襲来の経験が少ないということであり、加えて、台風5号は災害が起きやすいとされる未明の接近です。

 最新の気象情報を入手し、より一層の防災対策が必要です。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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