「咬ませ犬」ばかりを選ぶ世界4位
8月末に発表されたWBAランキングで、スーパーウエルター級4位とされたヴィト・ミエルニッキ・ジュニア(22)が、9月末にマディソン・スクエア・ガーデンのリングに上がり、10回判定勝ちを収めた。
これでミエルニッキの戦績は、20勝(12KO)1敗となった。ミエルニッキは今回も絶対に負けない相手――16勝(2KO)5敗1分の31歳――をイタリアから呼び寄せた。
初回から間断なくジャブを放ってペースを掴んだ世界4位だが、スピードがなく、動きも単調で、世界タイトル奪取を期待できる選手には、とても見えない。
しかし、ミエルニッキはチケットを売る能力が抜群だそうだ。7歳でボクシングを始め、2011年、2012年、2014年、2015年と、4度全米ジュニア王者になっている。アマチュア時代は、現WBAライト級チャンピオンのジャーボンテイ・デービスと、何度もスパーリングを重ねている。
147勝22敗のアマ・レコードでプロに転向。デビュー時から過保護なマッチメイクが目立ったが、8回戦時代に黒星を喫してからは、それがより濃くなった。デオンテイ・ワイルダーvs.ルイス・オルティス第2戦、ワイルダー対タイソン・フューリー第2戦、統一スーパーミドル級4冠王者、サウル・"カネロ"・アルバレスvs.元WBOスーパーウエルター級チャンプ、ハイメ・ムンギア戦など、人々の目に留まるビッグマッチの前座で咬ませ犬との試合ばかりこなしている。言うまでもないが、プロモーター、マネージャーの強力な後ろ盾があるからだ。
今回のマディソン・スクエア・ガーデンも、女子ボクシング界が注目する一戦がメインイベントであった。
ミエルニッキは冒険することもなく、激しい攻防もなく、無理に打ち合うこともせず、まるで長距離走のような戦いに終始した。スコアは100-90、98-92、95-95であった。
フルマークでミエルニッキを勝者としたジャッジがいる一方で、斬られ役に勝ち切れなかったと見た者もいる。次第にそのメッキは剥がれつつある。
ミエルニッキは、ロニー・シールズの指導を受けている。シールズは、1986年12月に浜田剛史の持つWBCジュニアウエルター(現スーパーライト)級タイトルに挑み、1-2の判定で敗れた男だ。世界には届かず、26勝(19KO)6敗1分けの戦績で引退したが、トレーナーに転向後、マイク・タイソン、イベンダー・ホリフィールド、タイレル・ビッグス、デビッド・トゥーア、パーネル・ウィティカ―、メルドリック・テイラー、リビングストン・ブランブル、アルツロ・ガッティ、ラウル・マルケス、ジャーメル・チャーロらのコーチを務め、第一線で活躍中だ。
シールズは、この22歳を変えられるか。