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「咬ませ犬」ばかりを選ぶ世界4位

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank

 8月末に発表されたWBAランキングで、スーパーウエルター級4位とされたヴィト・ミエルニッキ・ジュニア(22)が、9月末にマディソン・スクエア・ガーデンのリングに上がり、10回判定勝ちを収めた。

 これでミエルニッキの戦績は、20勝(12KO)1敗となった。ミエルニッキは今回も絶対に負けない相手――16勝(2KO)5敗1分の31歳――をイタリアから呼び寄せた。

Mikey Williams/Top Rank
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 初回から間断なくジャブを放ってペースを掴んだ世界4位だが、スピードがなく、動きも単調で、世界タイトル奪取を期待できる選手には、とても見えない。

 しかし、ミエルニッキはチケットを売る能力が抜群だそうだ。7歳でボクシングを始め、2011年、2012年、2014年、2015年と、4度全米ジュニア王者になっている。アマチュア時代は、現WBAライト級チャンピオンのジャーボンテイ・デービスと、何度もスパーリングを重ねている。

Mikey Williams/Top Rank
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 147勝22敗のアマ・レコードでプロに転向。デビュー時から過保護なマッチメイクが目立ったが、8回戦時代に黒星を喫してからは、それがより濃くなった。デオンテイ・ワイルダーvs.ルイス・オルティス第2戦、ワイルダー対タイソン・フューリー第2戦、統一スーパーミドル級4冠王者、サウル・"カネロ"・アルバレスvs.元WBOスーパーウエルター級チャンプ、ハイメ・ムンギア戦など、人々の目に留まるビッグマッチの前座で咬ませ犬との試合ばかりこなしている。言うまでもないが、プロモーター、マネージャーの強力な後ろ盾があるからだ。

 今回のマディソン・スクエア・ガーデンも、女子ボクシング界が注目する一戦がメインイベントであった。

Mikey Williams/Top Rank
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 ミエルニッキは冒険することもなく、激しい攻防もなく、無理に打ち合うこともせず、まるで長距離走のような戦いに終始した。スコアは100-90、98-92、95-95であった。

 フルマークでミエルニッキを勝者としたジャッジがいる一方で、斬られ役に勝ち切れなかったと見た者もいる。次第にそのメッキは剥がれつつある。

Mikey Williams/Top Rank
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 ミエルニッキは、ロニー・シールズの指導を受けている。シールズは、1986年12月に浜田剛史の持つWBCジュニアウエルター(現スーパーライト)級タイトルに挑み、1-2の判定で敗れた男だ。世界には届かず、26勝(19KO)6敗1分けの戦績で引退したが、トレーナーに転向後、マイク・タイソン、イベンダー・ホリフィールド、タイレル・ビッグス、デビッド・トゥーア、パーネル・ウィティカ―、メルドリック・テイラー、リビングストン・ブランブル、アルツロ・ガッティ、ラウル・マルケス、ジャーメル・チャーロらのコーチを務め、第一線で活躍中だ。

 シールズは、この22歳を変えられるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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