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台風20号の東の雲、さらにその東の雲とUターンする台風20号により最悪3回連続の大雨の可能性?

饒村曜気象予報士
台風20号の雲とその東の雲、さらにその東の雲(10月23日15時)

令和6年(2024年)の台風

 令和6年(2024年)は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計がある昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります。

 6月に台風の発生はなく、7月も台風発生数が2個と平年に比べて少なかったのですが、8月は平年並みに6個、9月は平年より多い8個も発生しています(表)。

表 台風の発生数・接近数・上陸数(令和6年(2024年)と平年値、接近数については月をまたぐ場合があるので月の値の合計は年の値と一致しない)
表 台風の発生数・接近数・上陸数(令和6年(2024年)と平年値、接近数については月をまたぐ場合があるので月の値の合計は年の値と一致しない)

 このため、9月末までの台風発生数は、平年が18個から19個ですので、ほぼ平年並みの発生数になってきました。

 そして、10月は、これまで2個発生しています。

 これまでに発生した20個の台風の発生位置をみると、台風が発生した月によって発生海域が偏っています(図1)。

図1 令和6年(2024年)の台風発生海域(丸数字は台風番号)
図1 令和6年(2024年)の台風発生海域(丸数字は台風番号)

 5月から7月は南シナ海からフィリピンの東海上で発生しましたが、8月は日本の南で発生しています。

 9月は、バラつきはありますが、多くはマリアナ諸島の東海上で発生しています。

 そして、10月9日15時に南鳥島近海で台風19号が、22日3時にフィリピンの東で台風20号が発生しました。

台風20号の西進

 北上してフィリピンンのルソン島の東に進んできた台風20号は、次第に進路を西に変え、ルソン島を横断して南シナ海で西進する見込みです(図2)。

図2 台風20号の進路予報と海面水温(10月24日0時)
図2 台風20号の進路予報と海面水温(10月24日0時)

 台風20号が進む南シナ海は、海面水温が29度以上で、台風発達する目安の海面温度27度よりも高いことから、風速25メートル以上の暴風域を持つと予想されています。

 台風20号は、風速15メートル以上の強風域が広く、大型の台風に分類されていますが、雲の塊が広い範囲に散在しているという特徴があります。

 台風20号は、南シナ海を西進することから、日本へ影響はないように見えます。しかし、広い範囲に雨雲があり、その一部が南西諸島や西日本に北上してくる見込みです(図3)。

図3 予想雨量分布(10月25日夜)
図3 予想雨量分布(10月25日夜)

 つまり、南シナ海の台風20号の中心付近の雲ではなく、その雲の東にある雲の塊(タイトル画像の赤丸)の北上には注意が必要なのです。 

 さらに、その東(マリアナ諸島の東)にある雲の塊(タイトル画像の黄丸)は次第に渦を巻いて熱帯低気圧が発生する見込みです(図4)。

図4 予想天気図(10月24日9時の予想)
図4 予想天気図(10月24日9時の予想)

 マリアナ諸島の東にある熱帯低気圧は、台風21号に発達するかどうかは、現時点でわかりませんが、台風にまで発達しなくても、北西進のち北東進して日本に接近して大雨を降らせる可能性があります。

 つまり、最悪の場合、台風20号の東にある雲の塊の北上によって大雨となり、その後、熱帯低気圧(台風21号)が北上して大雨となり、さらに、Uターンして東進してくる台風20号から変わった低気圧によって大雨となるという、3連続の大雨となる可能性があります。

 最新の気象情報に注意が必要な一週間です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図1の出典;気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典;気象庁ホームページに筆者加筆。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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