糖尿病の薬物療法って?〜注射治療編〜【いまさら聞けない糖尿病について、理学療法士が解説します】
田舎の民間病院で理学療法士として勤務しているぴぴです。
みなさまにひとつでもためになるような知識や情報をお届けしていきたいと思います。
注射治療って何をするの?
糖尿病の治療に用いられる注射といえば「インスリン」ということばがよぎる方も多いと思いますが、実は最近ではインスリン以外の選択肢も増えてきています。薬の種類だけでなく、注射の回数や注入器にもバリエーションがあり、糖尿病の状態とライフスタイルに合わせた治療ができるようになりました。
本記事ではさまざまな視点から注射治療の特徴を確認していきます。
どんな種類の注射があるの?
注射の薬剤の種類には大きく分けてインスリンとインスリン以外のものの2種類あります。
インスリン注射について
インスリンとは、膵臓で作られるホルモンです。
血糖値を低下させる作用のある唯一のホルモンで、生きていくために不可欠なものです。膵臓の機能が低下してしまうなどの理由で自分でインスリンを作り出すことができない場合には注射で補う必要があります。
インスリン注射の種類
1) 超速効型インスリン製剤
- タイミング:食直前
- 作用時間:10~20分
- 持続時間:3~5時間
2) 速効型インスリン製剤
- タイミング:食事30分前
- 作用時間:30分~1時間
- 持続時間:5~8時間
3) 中間型インスリン製剤
- タイミング:朝食前など、1日のうちの決めた時間に実施
- 作用時間:30分~3時間
- 持続時間:18~24時間
4) 持効型溶解インスリン製剤
- タイミング:食前や就寝前など、1日のうちの決めた時間に実施
- 作用時間:1~2時間
- 持続時間:ほぼ1日中効果があり、血糖値を全体的に下げます。
5) 混合型インスリン製剤:超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤を、いろいろな割合で混ぜてある製剤
- タイミング:あらかじめ決めた食事の前に実施 超速効型を混合している場合は食直前、速効型を混合している場合は食事30分前
- 作用時間:超速効型/速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤のそれぞれの作用時間に効果がでる
- 持続時間:中間型インスリンとほぼ同じ(18〜24時間)
6) 配合溶解インスリン製剤:超速効型または速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤を混ぜてある製剤
- タイミング:食直前に1日1回または朝食直前と夕食直前の1日2回
- 作用時間:超速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤のそれぞれの作用時間に効果がでる
- 持続時間:持効型インスリンとほぼ同じ(ほぼ1日中)
インスリン以外の薬剤(GLP-1受容体作動薬)
GLP-1受容体作動薬は、膵臓に作用し、インスリンの分泌を促す作用を持つ注射薬です。インスリン分泌がわずかでも行う機能が残存している2型糖尿病の方向けの薬剤です。
- 膵臓からインスリンの分泌を促す
- 膵臓のグルカゴンというホルモンを抑え、血糖値の上昇を抑える
- 胃や消化管の動きを遅くし、ゆっくりと消化させる
- 脳に働きかけ、食欲を抑える
というメカニズムで血糖をコントロールします。
注射はどれくらいの頻度で打つの?
- 週1回
- 1日1回
- 1日2回
- 1日3回
など、お薬の種類や持続時間によって異なります。
注射器の種類
- シリンジ
- ペン型注入器
- オートインジェクター
注射と聞くと痛いし面倒というイメージがあると思いますが、現在では薬剤や注射器そのものも進化しており、自分でも簡単に注射ができるようになってきています。
まとめ
注射治療は薬剤の種類にもよりますが、内服薬よりも速効性の高いものもあります。
治療開始時は主治医と相談しながら低血糖にも気をつけ、適切に活用していただけたらと思います。