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【全文】米の対北担当官があす訪韓。北朝鮮の「勝手に盛り上がるな」談話に韓国メディアが「異例」と注目。

2019年6月、板門店での米朝首脳会談時。10月までの「電撃対談」はあるか?(写真:ロイター/アフロ)

明日7日から、朝鮮半島関連のニュースが再び動き始めるだろうか。

7月7日から9日の間、米国務省のスティーブン・ビーガン副長官兼北朝鮮政策特別代表が韓国を訪問する。何らかの対北メッセージがあるのかが焦点のひとつだ。

これに先立ち、北朝鮮が発表した談話が韓国で注目を集めている。

「朝鮮民主主義人民共和国 チェ・ソニ外務省 第一副部長 談話」(朝鮮中央通信7月4日)

談話を報じる韓国メディア「YTN」。サムネイルの女性がチェ・ソニ第一副部長

これを韓国の大手メディア「中央日報」が「異例」と評価した。

 北朝鮮外務省第1次官「米国と対座する必要ない」…異例の談話に隠された計算表

11月3日に控える米大統領選の前に、米朝交渉が再開するのではないか。こういった国際世論を北側が一蹴するものだ。

韓国「中央日報」は、「現状において、米朝交渉の実務を担当したチェ氏が談話を直接発表するのが異例」という。

ビーガン―チェのラインは両国の現政権下での交渉で実務を担当した”パートナー”なのだ。

ビーガン氏の訪韓を報じる「YTN」

談話が発表された7月4日は、アメリカ独立記念日でもあった。そこにはどういった背景があるのか。北朝鮮側の談話全文を翻訳しつつ、これを巡る韓国側の視点を紹介する。

朝鮮民主主義人民共和国 チェ・ソニ外務省 第一副部長 談話

 我々の記憶からさえもぼんやりと忘れられていた《朝米首脳会談》という言葉が数日前から話題に上がり、国際社会の注目を集めている。

 当事者である我々がどのように考えているかについては全く意識せず、未熟な仲裁の意思を表明している人がいるかと思えば、米国の大統領選挙前に朝米首脳会談を進めなければならない必要性について、米国執権層が共感しているという声も聞こえてきている。

 さらには、その《10月の予想外の贈り物》とやらを受け取れるという期待感を目にすれば、我々の非核化措置を条件に、制裁緩和と交換してしまえると見る、空想家たちまで現れている。

 私は、些細な誤判断や段階の踏み間違いも、致命的で取り返しのつかない後遺症をもたらすことになる、今のような鋭敏な時期に米朝関係の実態を無視した首脳会談説が世論化されていることに対して、はかなさを禁じ得ない

米国のことを「当事者たる北の意向を考えない」、韓国のことを「未熟な仲介の意思を示している人」、そして国際世論を「空想家」と酷評している。また「10月の贈り物」とは、11月3日の米大統領選前のサプライズ的な両国交渉のことだ。

しかし、細部の表現よりも「中央日報」はこのくだりでの「国際世論牽制」に注目した。

11月の大統領選挙を控えて支持率が下がり再選レースに黄信号が灯ったトランプ米大統領が大統領選挙前の米朝首脳会談を電撃的に試みる可能性が最近韓国と米国で提起されているのに線を引いた。

出典:北朝鮮外務省第1次官「米国と対座する必要ない」…異例の談話に隠された計算表

確かに、ここ数日、米韓の動きが活発だ。

上記のビーガン氏訪韓のみならず、米国内でボルトン前大統領補佐官などが大統領選前の10月の首脳会談の可能性を提起した。また韓国の文在寅大統領も先月30日に韓―EU首脳会談で「米大統領選挙前に、米朝間の対話努力がもう一度推進される必要がある」と発言。2019年6月30日に続き、仲裁役を買って出る姿勢を見せた。また韓国メディアでは10月のサプライズ的な交渉開催がありうるという米韓政界での読みや、米韓の極秘での水面下の交渉の存在も囁かれている。

「中央日報」はこういった動きがあるなかで、北側が国営メディアの論評ではなく、チェ第一副部長の談話として発信した点が「異例」だという。実は関心を示しているのではないか、というのだ。

談話を最後まで読んで、これが分かるだろうか。

談話記事のキャプチャ。北朝鮮対外宣伝公式サイト「我々の民族同士」より
談話記事のキャプチャ。北朝鮮対外宣伝公式サイト「我々の民族同士」より

 

 すでに成し遂げられた首脳会談の合意も眼中になく、対朝鮮敵視政策に執拗に縛られて走る米国と、果たして、対話や取引の成立がありうるというのか。

 我々と場を新たに組む勇断を下す意志もない米国が、どんな浅知恵をもって我々に近づいてくるのか、あえて会わずとも明らかだ。

 米国がまだ交渉のようなものを以て我々を揺るがすことができると考えているのなら、それは誤算である。

 我々はすでに、米国の長期的な脅威を管理するために、より具体的な戦略的試算表を組んでいるのだ。

 その某の国内政治日程のような外部的要因によって、我々の国の政策が調整変更されることはないだろう。

 より長い言葉で言うまでもない。

 

 米朝対話を彼らの政治的危機を処理するための道具としてしか見ない米国とは、向き合う必要はない。

 主体109(2020)年7月4日 平壌

中央日報は、「これまでのような強い言葉での非難がない」点、そして「2017年の米独立記念日(7月4日)には大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施し、大々的に祝った」という点から「該当談話は挑発として決して強くはないとも読める」と指摘する。さらに国内専門家のコメントを引用し「自国を立てた形での交渉には意思があるのでは」と見ている。

確かに、この談話には最近の「金与正談話」で多く見られた「吐き気がする」「冗長」「嫌悪感」「恥知らず」「厚かましい」「ズボンの股間から離れられない」といった表現に比べ、マイルドではあるが。

当のビーガン氏は6月30日に「電撃会談の流れにはならないだろう」と発言。いっぽうで韓国政府統一部(省)は6日にブリーフィングを行い「先日の北からの談話はあったが、北とアメリカの対話が早い時期に実現するよう努力していく」とした。いっぽうで、韓国側の統一省トップに就任予定のイ・イニョン氏との面談は「まだアメリカ側から要請が届いていない」としている。

ビーガン氏は9日まで韓国に滞在後、日本を訪問する予定も伝えられている。 

はたして動きはあるだろうか――。

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吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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