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エディー・ジョーンズの若手の伸ばし方。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
第1次政権時代(2015年)のジョーンズ氏(写真:ロイター/アフロ)

 日本代表のヘッドコーチに9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズは2月6日からの2日間、福岡でトレーニングスコッド合宿を開催。大学生9名を含む34人と世界一を目指すマインドセット、かねて提唱する「超速ラグビー」というコンセプトを共有した。

 終了後はテレビカメラを前に約10分、ペン記者に囲まれながら約25分の取材に応じた。テレビ用の取材では傑出した若手の名を挙げ、才能のある選手の発掘に不可欠な「先生」の存在についても話した。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――所感は。

「本当に楽しい合宿になりました。若い人たちもすごく情熱的で、そのおかげで、シニアの選手たちが上がるということも起きています。そして新しいスタイルで、たくさん学びが回収できたと思います。

(以下、ひと言目のみ日本語で)この合宿は、コンセプトのキャンプ。概念を落とし込む目的がありました。超速ラグビーとは? どうしていけば超速ラグビーができる? …それを伝えられました。何を目的にしてどう到達するかも話しました」

――満足度は。

「満足することはまずない。いつも、もっと、もっと、と思うところがある。今日は選手たちも、『もっとやりたい』という風になっていた。いいスタートが切れたかなと思いますし、いい感じで成長はしていますが、少し、やるべきことを先に進みすぎたところもあります。日本がやるべきことを、しっかりとやっていかないといけない」

――プレー、理解度の面で傑出した選手は。

「(ひと言目は日本語で)学生2人ね。(高木)城治、9番。石橋チューカ(いずれも京都産業大学1年)。若い選手で、大学から来て、高いレベルの強度に早く適応できた」

――初日の練習後、リーチ マイケル選手、姫野和樹選手といった主将経験者を交えて石橋選手と話し込む場面がありました。

「どうプレーを発展させればいいかを話しました。姫野選手とリーチ選手は本当にお手本となる選手。彼らにも恩返しをしていきたい思いがある」

――そのリーチ選手は、本職のフランカーやナンバーエイトではなくロックでの選出です。

「彼とはちゃんと話しています。で、彼にはあなた10番だよって言ったんです。6 +4は10だよと。ブラインドサイドフランカー(6番)と左のロック(4番)がプレーできる選手を、私たちは求めています」

――石橋、高木両選手のよさは。

「(石橋)チューカ選手はですね。若いロックの選手であり、結構スリムで今後体重を増やしていかないといけないですが、本当に懸命に取り組みたい、学びたいという願望を持っている選手。(高木)城治はラックの付近で速く、パスもまあまあよく、走れる選手。今後の日本代表にはこのようなスクラムハーフが必要です。

 今後、期待している選手で言えば、青木(恵斗)選手、高本(とむ)選手。帝京大学です。青木はいいランニングができ、高本は『抜ける』能力がある。2人ともフィジカルもいいです」

――若手が増えてきたなか、経験豊富なリーチ選手、姫野選手には何を求めますか。

「才能の発掘には必ず、お手本となる先生が必要です。姫野選手、稲垣(啓太=左プロップ、今回はクロスボーダー戦参加のため選外)選手、リーチは、すごく重要な役割を果たしてもらわないといけないことになる。若い選手たちがどれだけ早く成長できるのかは、どれだけ早く学べて、高いレベルのラグビーに適応できるかにかかっています。この 2 日間を通して、私は感銘を受けています」

――コンセプト以外に、9年前からの変更点はありますか。例えば選手との接し方などについて。

「いまの若い子には『こうしなさい』と教えるのではなく、ガイドする、誘導するという形を取ります。機会を与え、選手たち自身で解決策を考えるように促す。変わらないのは、スタンダード。ワールドクラスの高いスタンダードを継続する」

――今後、各カテゴリーを視察されるはず。選手たちにはどんなプレーを見せてほしいですか。

「その選手たちの強みを見せてほしいです。まず、選手が自分自身の自分の強みはこれだということをわかった上で、それを表現、実行する。一貫性を持ってやる。やり続ける。なおかつ、その強みで相手を上回る、圧倒するところを見せてほしいです」

――先週末は欧州6か国対抗のイタリア代表対イングランド代表を現地視察されました(27―24でイングランド代表が勝利)。

「ちょっとおかしな試合だったかなと思います。イタリア代表がいいスタートを切れていて、イングランド代表が勢いを取り戻して、後半になると、スタートとストップが繰り返された。イングランド代表は、結果に対しては満足していると思います。ただイタリア代表のプレーにもすごく素晴らしいところが見られた。また、ワールドカップに比べてキックが多かったのかなという印象でした」

――イタリア国内の若手育成プランについて。

「イタリアにはいま2つしかプロフェッショナルなチームがないんです。そして、国内に3つのナショナルアカデミーがあり、そこで若い選手たちを育成している。システムがちゃんとあるんです。代表チームからその下のユースまでの一貫したシステムがあるので、才能を発掘できていると思います。日本で私がやるべきことは、まさしく若い選手たちの発掘です。イタリアから何が学べるのか、という意味で、すごく価値があるツアーでした」

――日本代表はこの両国と今年、対戦します(イングランド代表とは6、11月に、イタリア代表とは7月にそれぞれ激突)。

「実は両方とも全く違うプレイスタイルです。イングランド代表はセットピース重視。そしてキックを蹴ってくる。それを踏まえ、私たちがどうやってそのブレイクアップをしていったらいいのか…。イタリア代表は結構よりアンストラクチャーでプレーする傾向にある。私たちはもう少しタイトにプレーしていかないといけない」

 この後、場所を移し、ペン記者対象の取材に突入した。今回の選考ポリシーや今後の展望について述べた(詳細は別途)。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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