雨に泣かされた履正社がまさかの逆転負け!近畿大会1週目の6試合は、見事に各府県が1勝ずつ!
秋の近畿大会が19日に、兵庫のほっともっと神戸で開幕し、第1週の6試合が行われた。優勝候補の履正社(大阪1位)が開幕戦に登場し、近畿大会初出場の滋賀短大付(滋賀2位)と対戦。初回に先制するも、相手の軟投派左腕を攻めきれず、雨が強くなった6回に一挙4点を奪われ、1-4でまさかの逆転負けを喫した(タイトル写真)。
履正社は雨中で逆転を許す
開始当初から雨が降り出し、グラウンド整備後の6回あたりから本降りとなった。
6回裏、先発の辻琉沙(2年)が制球を乱し無死満塁で、遊撃手の矢野塁(2年=主将)が救援に立つ。大阪大会と同じパターンだ。ここで滋賀短の6番・北嶋朔太郎(1年)が初球を迷わず振り抜く。打球は雨を切り裂いて左中間に飛び、逆転の2点適時二塁打となった。その後も履正社は捕手の悪送球やスクイズで加点され、一気に4点を失った。最も雨が強かったタイミングで、履正社の選手たちには気の毒としか言いようがない。44分間の中断後に反撃を試みたが、最後まで滋賀短の櫻本拓夢(2年)をとらえきれず、初回の辻の犠飛による1点にとどまった。
「負けたのは私の責任」と選手をかばう履正社監督
まさかの展開に涙を流す選手もいて、履正社の多田晃監督(46)は「せっかく大阪大会で頑張ってくれたのに、負けたのは私の責任」とうなだれた。
雨で守備が乱れたことについては「条件は相手も同じ。完敗です」と、潔く負けを受け入れた。昨年は同じ滋賀2位の滋賀学園を圧倒しながら、京都1位の京都外大西に序盤からエースが崩れ、準々決勝敗退。惜しくもセンバツ出場を逃した。今秋も大阪桐蔭に完勝したが、甲子園未経験校にまさかの初戦敗退でセンバツは遠のいた。ショックは大きいかもしれないが、ライバルを圧倒した事実は揺るぎない。自信を取り戻してほしい。
天理はエースが投打に好走塁で大活躍
初日の残り2試合が21日の月曜に延期され、試合順が入れ替わった。滋賀短と次戦で当たるのは天理(奈良1位)と和歌山東(和歌山2位)の勝者で、この試合から詳述する。天理はエースの下坊大陸(しもぼう・りく=2年)が、自己最速を1キロ更新する141キロの直球に、「チェンジアップやカーブの抜く球がよかった」と話すように、和歌山東打線を全く寄せ付けず、9回途中3安打1失点の快投を見せた。下坊は最初の打席に安打で出塁すると、相手バッテリーのスキを逃さない盗塁に続き、2つの暴投で先制の生還をするなど投打にわたって大活躍。高校通算9本塁打の打力に、50メートル6秒ジャストの俊足まで披露した。
試合は中盤に、4番・冨田祥太郎(2年)の2点適時打などで加点した天理が、5-1で和歌山東に快勝した。和歌山東はエース・西岡悠斗(2年)が力投したが、ワンバウンド投球が多く、天理の機動力にかき回された。準々決勝では、秋の近畿大会9回の優勝を誇る天理と、初の甲子園を狙う滋賀短が対戦する。
初出場の北稜は大院大高に0-1で惜敗
今春、「大阪2強」を連破し一躍、脚光を浴びた大阪学院大高(大阪3位)は、近畿大会初出場の北稜(京都3位)と対戦。北稜の技巧派左腕・中村勇翔(1年)の緩い球を打ちあぐみ、終盤の1点勝負となった。大院大高の辻盛英一監督(48)が「終盤はまっすぐ勝負で」と指示した8回、ようやく先頭の1番・朝田光理(2年)が二塁打で出塁すると好機が広がり、5番・一柳(ひとつやなぎ)颯馬(1年)の適時打で均衡を破る。守っては先発の下條晃大(2年)が再三、走者を背負いながらも粘り、5安打完封で1点を守り切った。
辻盛監督に「攻略法が見つからなかった」と脱帽させた北稜の中村は、120キロにも満たない直球に、緩い変化球を高低、コーナーに投げ分け、フライアウトを量産した。それでも北稜の中西俊介監督(37)は、「まだまだ中村にはチャンスがある。もっと大きい投手にしてやりたい」と、さらなる成長を願った。
東洋大姫路は平安を圧倒し、地元ファンに応える
地元の期待を一身に受けて登場した東洋大姫路(兵庫1位)は、前評判通りの実力を発揮して、難敵の龍谷大平安(京都2位)を圧倒した。「東洋大姫路の打線じゃない」と岡田龍生監督(63)もびっくりの、初回から5安打5得点の猛攻で主導権をがっちり握ると、安定感抜群のエース・阪下漣(3年)も危なげない投球を披露。5、6回にも援護を受けて7回を4安打7奪三振の完封で、東洋大姫路が9-0の7回コールド勝ちを決めた。岡田監督は「チームとしての経験値はあるが、まだまだ私の考えが伝わっていないことがあった。もっと緻密にやれるはず」と、スクイズ失敗の場面などを指摘し、反省を促した。
一方、平安の原田英彦監督(64)は、「こんなのは平安じゃない。投手に戦う気持ちが出てこない」とがっくり。それでもエースの山本陽斗(2年)からバトンを受けた同じ左腕の高信春太(2年)、速球派右腕の鏡悠斗(2年)が力投し、「これから競争させる」と古豪復活を誓っていた。東洋大姫路は大院大高と4強入りを懸けて戦う。
54年前の決勝の再戦は、またも三田が涙
20年ぶりの近畿大会となった三田学園(兵庫3位)と、市和歌山(和歌山3位)の対戦は、昭和45(1970)年秋の決勝カードの再現となった。試合は三田の熊野慎(2年)と市和歌山の土井源二郎(2年)の両エース右腕が、息詰まる投手戦を展開。8回は、お互いに先頭が安打で出塁し、先攻の三田が3塁残塁で無得点だったのに対し、市和歌山は同じ2死3塁から4番・森本健太郎(1年)がしぶとく右前に運んで貴重な先制点をもたらした。
土井は9回も走者を背負ったが決定打を許さず、5安打無四球で完封。三振も10個奪った。市和歌山の半田真一監督(44)は、「土井はベストピッチに近い。経験値も高く、自分から崩れない」とエースを絶賛し、県大会で失点が多かった試合運びが一転したことには、「こういう(ロースコアの僅差)試合ができて成長につながる」と、手応えをつかんだ様子だった。54年前の決勝は、市和歌山商(当時)が三田に1-0で勝っているが、スコアも勝敗も同じだった。
進学校の奈良は県大会から成長した姿を見せる
夏の全国王者・京都国際が敗れて波乱含みの京都を制した立命館宇治は、34年ぶり出場の進学校・奈良(奈良2位)と対戦。3回に5番・田中太惇(たいじゅん=2年)の適時打で先制した立宇治は、6回、相手の継投機を逃さず、9番エースの道勇壱心(どうゆう・かずむね=2年)の適時打などで突き放した。道勇は8回に内野ゴロで1点を失い、9回もピンチを招いたが、1失点の完投。4-1で奈良に快勝して、市和歌山と準々決勝で当たることになった。立宇治の里井祥吾監督(41)は、「道勇は丁寧に投げていた。変化球もよく打つ」と、投打で活躍の185センチ右腕を褒めていた。
終盤も粘って見せ場を作った奈良の吉村貴至監督(51)は、「県大会で天理に1イニング8点取られて、強豪の力を教えてもらった。中間テストや修学旅行もあった中、その後の2週間で成長できた」と、部員21人で健闘した選手たちを称えていた。6回にエース・神山詞(かみやま・うた=2年)が降板したあと、守備が乱れたことは残念だったが、一塁手の宮崎友佑(2年)、主将の米田(こめだ)朋恭(2年)が登板し、「3人でいこうと決めていた」と話す吉村監督は、強豪相手に計6安打4失点(自責1)と奮闘した投手陣にも合格点を与えた。
大阪桐蔭や智弁和歌山は今週末に登場
第1週は見事なまでに2府4県が1勝ずつとなったが、残る1回戦の滋賀学園(滋賀1位)-大阪桐蔭(大阪2位)、智弁和歌山(和歌山1位)-神戸学院大付(兵庫2位)のビッグカードが控える。特にこの2カードの勝者、その後の勝ち上がりが、センバツ選考に大きな影響を及ぼすことも間違いない。今週末は、甲子園を懸けた大一番になりそうだ。