60歳大女優、ミシェル・ヨー。アカデミー賞受賞スピーチで「女盛り」についてチクリと言及
12日に行われた第95回アカデミー賞授賞式では、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞や監督賞を含む7部門で受賞した。
主演女優賞を獲得したのは、主人公エヴリン役を演じたミシェル・ヨーさん。ヨーさんはアジア系女性として初、そして有色人種の女性として2人目の同賞獲得となった。
受賞が決まった瞬間「この受賞をアジア系女性が成し遂げるのに95年もかかった」「歴史が作られた」などとSNS上では大騒ぎとなった。
受賞スピーチでヨーさんは、「これを今観ている私のような少年少女にとって、この受賞は希望と可能性を意味する良い事例になるでしょう」と述べ、「これは夢が叶うという証です」と握り締めたオスカー像を掲げた。さらに「女性たちよ。どうか誰もあなたに『女盛りを過ぎた』なんて言わせないで」と付け加えると、会場から大きな拍手が沸き起こった。
これは先月、CNNの朝の番組でオンエアされ大炎上したアンカー、ドン・レモン氏の「女盛りは40代まで」発言を皮肉ったものと思われる。
ヨーさんはマレーシア出身の60歳。1984年に俳優業を香港でスタートし、その後渡米。この賞に辿り着くまで苦節39年かかった。
アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞(今年1月)でも主演女優賞を受賞した彼女は、その時のスピーチで「昨年私は60歳を迎えた」「女性は年齢の数字が大きくなればなるほど、機会に恵まれることは少なくなる」と女性の年齢による機会損失について訴えていた。
今回のアカデミー賞のスピーチの後半では、高齢になる母親への感謝も忘れなかった。彼女は大きく深呼吸をし、このように述べた。「この受賞をマレーシアで今観てくれている84歳の母に捧げます。そして世界中のすべての母にも。母親がいなければ今夜ここにいる誰もが存在しません」。
アカデミー賞では、エヴリンの夫役でベトナム出身のキー・ホイ・クァンさんも助演男優賞を獲得。クァンさんは受賞スピーチの冒頭で、同じく84歳になる高齢の母親に対して、泣きながら「ママ、オスカー取ったよ」と報告した。
「私の人生は難民ボートから始まったが、ここまで辿り着いた。諦めかけた時もあるが妻にいつか自分の時代が来ると励まされ続けた。映画だけで起こる話ではない。これはアメリカン・ドリームだ。夢は信じないと実現できない。皆さんも夢を諦めないで」と、こちらも感動的なスピーチだった。
授賞式の翌朝、CNNの番組でレモン氏は、これらの受賞について「特にアジア系アメリカ人やアジア系の俳優にとって、特別な受賞の瞬間になった」とコメントしたが、ヨーさんのスピーチについては言及しなかった。
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止