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今年最大のメンズモード映画「華麗なるギャツビー」解禁!!

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
「華麗なるギャツビー」6月14日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

今年のカンヌ映画祭のオープニングを飾った「華麗なるギャツビー」は、謎の大富豪、ジェイ・ギャツビーの夢の破綻を描いた人間ドラマであると同時に、1920年代のジャズエイジをコスチュームとジュエリーで再現した究極のファッションムービーでもある。ヒロインのデイジーが身に付けるフラッパーガール風のドレス類はプラダ、ダイヤのヘッドドレスはティファニーが各々映画のために製作したカスタムメイドだが、注目はギャツビーを演じるレオナルド・ディカプリオやトビー・マグワイア扮する語り部役のニック・キャラウェイ等が、シーン毎に粋に着こなすプレッピーなメンズファッションの数々だ。衣装担当のキャサリン・マーティンが発案したアイディアを、アメリカントラッドの老舗、ブルックス ブラザーズが精密に仕立て上げたスーツやタイは、タイムレス且つエッジィ。今、スーツを新調したいと考えている若いサラリーマンにとって絶好のテキストになるはずだ。

スーツは今風にコンシャスな仕立て

月夜に浮かび上がるコンシャスなシルエット
月夜に浮かび上がるコンシャスなシルエット

原作者、F・スコット・フィッツジェラルドが小説に記したギャツビーの人物像は、巨万の富を手に入れても尚、純粋さを失っていないイノセントな青年。そのイメージに則り、劇中でギャツビーが好んで身に付けているのはパステルカラーのスーツ類だ。それらは、リネン100%のピンク!!!のストライプスーツや、オフホワイトのスーツ、薄茶のスリーピーススーツ等で、どれもVラインは浅く、全体的にはややコンシャスなシルエットになっているところがポイントだ。これは、ロバート・レッドフォードがギャツビーを演じた「華麗なるギャツビー」(74)のためにラルフ・ローレンがデザインしたスーツ類に比べて、明らかに時代のトレンドを意識したもの。ディカプリオの恐らく映画のために作り直したであろう引き締まったボディラインが服の個性を際立たせる役目を果たしている。

蘇る数々のプレッピーアイテム

黄色いコンパーティブルとボーダーハットのレオ
黄色いコンパーティブルとボーダーハットのレオ

また、舞台となるニューヨーク・ハイソサエティの日常着として登場するアイビーリーグスタイルも、時代を超えておしゃれ好きの好奇心をくすぐってくれる。ギャツビーが黄色いコンパーティブルでドライブする時に被るボーダーハットや、レガッタブレザー、そして、ペニーローファーやウィングチップは、実際にプリンストン大学出身の原作者、フィッツジェラルドが愛用していたアイテムだし、それらが、プレッピールックと呼ばれる学生スタイルの代名詞としてアメリカントラッドを牽引してきたブルックス ブラザーズによって再現されていることに意味がある。

「コズモポリス」を超えるメンズモード映画

すでに公開された「コズモポリス」では、ロバート・パティンソンがグッチのスーツやシャツを全編を通して身に付け、リムジンの中で暮らす孤独なディーラーというキャラ設定のリアリティを見事に衣装で表現していたし、「キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け」では投資家に扮したリチャード・ギアが役柄に見合ったブリオーニのスーツを愛用していた。どれも、映画の衣装としては的確なチョイスだったが、「華麗なるギャツビー」のメンズファッションはアイテムの数、美しさ、そして、実践性に於いてそれらの上を行くもの。今年最大のメンズモード映画として、自信を持ってお薦めしたい。

「華麗なるギャツビー」(C)2013 Warner Bros.Entertainment Inc.All rights reserved.

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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