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V候補筆頭・大阪桐蔭を脅かすのはこのチームだ!  夏の甲子園49代表出揃う

森本栄浩毎日放送アナウンサー
東京2代表を最後に甲子園49校が出揃った。大阪桐蔭が優勝候補の筆頭だ(筆者撮影)

 長かった地方大会も、東京ドームでの東西東京大会で終わり、49代表が出揃った。優勝候補筆頭は大阪桐蔭で、智弁学園(奈良)、智弁和歌山横浜(神奈川)、明豊(大分)、明徳義塾(高知)、東海大菅生(西東京)の6校がこれを追う。3日にリモートで、組み合わせ抽選会が行われ、9日に開幕する。

一体感出た大阪桐蔭が筆頭

 大阪桐蔭は春も優勝候補の一番手だったが、初めてのフリー抽選がたたって、手の内を知られる智弁学園と当たり、同校にとって初めてのセンバツ初戦敗退を喫した。夏は長くフリー抽選が続いていて、レベルの高い近畿勢といきなり当たる可能性もある。

大阪桐蔭の4番を打つ花田は、大阪大会でも勝負強さを発揮。準決勝では14回に勝ち越し打。決勝では先制の2点適時打を放った。右翼の守備もハイレベルだ(5月22日筆者撮影)
大阪桐蔭の4番を打つ花田は、大阪大会でも勝負強さを発揮。準決勝では14回に勝ち越し打。決勝では先制の2点適時打を放った。右翼の守備もハイレベルだ(5月22日筆者撮影)

 松浦慶斗(3年)を筆頭に、竹中勇登(3年)ら多彩な投手陣に加え、池田陵真(3年=主将)、花田旭(3年)らが並ぶ強力打線は機動力も使って、相手投手を圧倒する。大阪大会の苦戦続きでチームに一体感が生まれたのも好材料。甲子園でも窮地に立たされたとき、この経験は必ず生かされるはずで、優勝候補の一番手に推したい。

大阪桐蔭と2勝1敗の智弁学園

 近畿勢はレベルが高い。6代表全てが昨秋の近畿大会に出ていて、4校が春夏連続の甲子園だ。秋の近畿、センバツで大阪桐蔭を連破した智弁学園は、西村王雅(3年)、小畠一心(3年)の左右両輪に加え、2年生投手にもメドが立って、投手層の厚さは大会屈指。打線も力はあるが、主砲の前川右京(3年)が本調子ではなく、小坂将商監督(44)も前川の打順に頭を悩ませている。投打がかみ合えば、優勝してもおかしくない戦力で、大阪桐蔭とは2勝1敗。直近の春の近畿決勝ではサヨナラ本塁打で惜敗しているだけに、選手たちは4度目の対戦を熱望している。

強打伝統の智弁和歌山は投手が充実

 全国屈指の右腕・小園健太(3年)の市和歌山を倒した智弁和歌山も、投打にスケールが大きい。エース・中西聖輝(3年)に加え、伊藤大稀(3年)は球速も147キロまで伸び、中西と肩を並べるまでに成長。市和歌山との大一番で先発を任された。次期エース候補の塩路柊季(2年)も加え、本格右腕三枚が揃う。1年から中軸を打つ徳丸天晴(3年)ら、伝統の強打線も健在で、投打のバランスがいい。春の近畿大会準決勝で大阪桐蔭と直接対決し、サヨナラ負けを喫したが、内容的には遜色なかった。大阪桐蔭は、両智弁とは当たりたくないだろう。

新監督の横浜は1年生加入で勢い

 激戦の神奈川を勝ち抜いた横浜も楽しみだ。センバツ優勝のライバル・東海大相模との直接対決は、コロナの影響で実現しなかったが、相模と同等の力があると言っていい。183センチの左腕・金井慎之介(3年)は最速148キロを誇る。強力打線の近畿勢との力勝負を見てみたい。また、左腕・杉山遥希と1番を打つ遊撃手の緒方漣の1年生新戦力の加入が勢いをもたらしている。昨年就任した村田浩明監督(35)にとっては甲子園初采配で、「新生横浜」の第一歩となる。

多彩な投手陣誇る春準優勝の明豊

 センバツ準優勝の明豊は、決勝サヨナラ負けの悔しさをバネに、たくましくなって戻ってくる。189センチのエース・京本眞(3年)を始め、左腕・太田虎次朗(3年)、横手から力のある球を投げる財原光優(3年)がいて、投手陣は多彩かつハイレベル。それぞれが先発、救援、抑えのいずれでも力を発揮できるため、川崎絢平監督(39)も、相手によって柔軟な起用ができる。センバツで智弁学園を、3人の継投で破った会心の試合がその典型だ。打線も、4番・米田友(3年)を軸に、下位までまんべんなく打てる。

森木を倒した明徳はスキのない野球

 全国トップ級の剛腕・高知の森木大智(3年)を攻略して意気上がる明徳義塾も、充実した戦力を誇る。原動力は左腕の代木大和(3年)で、185センチの恵まれた体から、最速143キロの直球を投げる。高知商戦では大量失点して打線に助けられたが、高知との大一番では森木に堂々と投げ勝った。カットボールが武器で、球速もまだまだ伸びそう。1年からレギュラーの米崎薫暉(3年=主将)から始まる打線は、小技も交え、好機で確実に得点する。スキのない野球は、甲子園経験の浅いチームにとっては大きな壁になっている。

エース復活の菅生は2年生4人がスタメン

 最後に甲子園出場を決めた東海大菅生は、センバツ8強の実力校。東京ナンバーワンの呼び声通り、危なげなく西東京大会を勝ち抜いた。肩の不調でセンバツは不本意な投球に終わったエース左腕・本田峻也(3年)が復調したのが大きい。大会序盤のヤマとみられた国士舘戦で先発を任され、若林弘泰監督(55)の期待に応えた。投手陣の安定感は上記各校よりやや落ちるが、臨機応変な起用ができる。2番で捕手の福原聖也や4番の小池祐吏ら2年生4人がスタメンに名を連ね、打線はつながりがいい。

春夏連続組で力があるチームは?

 実績や戦力で、優勝候補を列挙したが、智弁和歌山と横浜以外はセンバツにも出ている。センバツからの連続出場組ではまず、県岐阜商の充実ぶりが目を引く。エース・野崎慎裕(3年)ら豊富な投手陣の中から小西彩翔(2年)が急成長。強打の捕手・高木翔斗(3年=主将)が攻守で牽引する。広島新庄も新戦力で力を伸ばした。伝統的に好左腕が育つ環境で、故障から復帰した西井拓大(3年)が主戦格に成長。同じ左腕の秋山恭平(3年)、右腕・花田侑樹(3年)は実績十分で、投手陣は万全だ。

神戸国際大付の阪上は、ヒジの不調でセンバツで力を発揮できず。6月から本格的に投球を再開し、「もう不安はない」ときっぱり。夏こそ甲子園のマウンドで躍動したい(7月29日筆者撮影)
神戸国際大付の阪上は、ヒジの不調でセンバツで力を発揮できず。6月から本格的に投球を再開し、「もう不安はない」ときっぱり。夏こそ甲子園のマウンドで躍動したい(7月29日筆者撮影)

 神戸国際大付(兵庫)は、エース・阪上翔也(3年)の復活が大きい。ヤマとみられた明石商戦で完投勝ちした。打線がいいので、主戦格の楠本晴紀(2年)に安定感が出てくれば、上位進出も期待できる。その神戸国際にセンバツ開幕戦で惜敗した北海(南北海道)は、世代屈指の左腕・木村大成(3年)が健在。今夏はやや失点が多かったが自己最速を150キロまで伸ばし、春の雪辱を期す。北信越勢随一の実力校・敦賀気比(福井)は、決勝で背番号「5」の本田克(3年)が完封するなど、チーム力を伸ばしている。

激戦区の代表は力がある

 激戦区を勝ち抜いたチームは力がある。東邦、中京大中京、享栄という愛知県下のライバル校を、全て撃破した愛工大名電も楽しみなチーム。マウンドにも上がる強打の田村俊介(3年=主将)が大車輪の活躍を見せて、「夏に弱い(5勝12敗)」汚名を返上したい西日本短大付(福岡)の大島柊(3年)は、県の決勝で3安打完封するなど、近年珍しい先発完投型の大エース的存在。強打のチームとの対戦になれば面白い。専大松戸(千葉)はセンバツ初戦惜敗の雪辱を。浦和学院(埼玉)は、今大会限りで勇退を表明した森士監督(57)のためにも、選手たちは上位進出を誓っているはずだ。

初出場は5校、意外な新田の初出場

 今大会は公立が11校で、「強豪私学全盛」という昨今の流れには一定の歯止めがかかった。初出場は5校。うち東北学院(宮城)、鹿島学園(茨城)、東明館(佐賀)が春夏通じて初めての甲子園。鹿島学園の鈴木博識監督(71)は、日大藤沢(神奈川)で甲子園采配を経験。日大でも監督を務め、多くの有名選手をプロへ送り出している。京都国際は春夏連続で、下級生中心ながらかなりの実力がある。意外だったのは、センバツ準優勝経験のある新田(愛媛)で、8度目の挑戦でようやく夏の甲子園切符を手に入れた。

ナンバーワン投手は157キロの明桜・風間

 最後に、注目選手を。今年の地方大会では好投手が相次いで敗れ去り、投手として最も注目されるのは明桜(秋田)の風間球打(きゅうた=3年)だろう。秋田大会でマークした157キロは、今世代全国トップで、183センチの恵まれた体格。山梨県出身で、同県出身の輿石重弘監督(58)に誘われた。下級生では近江(滋賀)の山田陽翔(2年)に注目。エースとしては滋賀大会21イニングで28三振を奪って防御率はゼロ(失点1)。4番打者としても勝敗を左右する場面で2本塁打と、投打でチームを引っ張る。

49校全てが「完走」を

 今大会は学校関係者だけの入場で、一般のファンはスタンド観戦できない。五輪が無観客になった以上、仕方ないと諦めるしかないが、この決定以降、コロナの感染状況は急速に悪化している。地方大会でも有力校がクラスター発生で辞退を余儀なくされ、ホテルで団体生活を送る甲子園大会でもその懸念がかなりある。死に物狂いでつかんだ夢の舞台。49校全てが「完走」できることを心から祈っている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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