オートバイのあれこれ『SDRってどんなバイク?』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今回は『SDRってどんなバイク?』をテーマにお話ししようと思います。
今日取り上げるのは、ヤマハのSDRというモデル。
SDRは、1987年(昭和62年)に登場した2ストローク単気筒エンジンのロードスポーツモデルです。
最大の特徴は、“とにかくシンプル”であること。
まるで極限まで減量したボクサーのような超絶スリム&プレーンな造りとなっています。
これは、コストカットのような目的ではなく、当時過熱し切っていたバイクのハイパフォーマンス化に対するアンチテーゼとしての設計でした。
ヤマハは、
「行き過ぎた高性能化はライダーがついていけない。ハイグレードなパーツも、結局持て余すことのほうが多い。無駄に着飾るのではなく、もっとライダーに寄り添ったバイクを作りたい」
と考えていたのです。
こうしてシンプルを徹底的に突き詰め、乾燥重量105kgというオフロードバイク並に軽い車体を手に入れたSDRは、結果的にユーザーフレンドリーなだけでなく、タイトな峠道やミニサーキットでは格上モデルをも「カモれる」俊敏性を発揮することにもなり、この「何気なく速い」キャラクターが一部のスポーツバイク好きから支持を集めました。
しかし、当時はやはり“スペック至上主義”の時代。
TZRやFZRのようなレプリカモデルと比べると、どうしても見劣りしてしまうスペックだったSDRはさすがに大きな人気を得ることができず、わずか2年ほどでカタログ落ちすることになってしまいました。
面白いバイクだったにもかかわらず、レプリカブームに飲まれてしまった不運なモデルだと言えるでしょう。