官民連携2:下水道事業におけるウォーターPPP。一時的ではなく、持続可能な仕組みこそが求められる。
地域の課題の解消を目指し、住民のニーズに応えながら、目標を明確に設定して進めることを理想とする官民連携。そこには、一時的な取り組みとしてとらえるのではなく、長期的な成果を目指した持続可能な仕組みが求められる。
効率性が問われるPPP、果たしてどのような仕組みになっているのだろうか
2022(令和4)年度末、全国の下水道管渠の総延長は、約49万kmに達している。だが、標準耐用年数50年を経過した管渠の延長は現在約3万km(総延長の約7%に相当する)であるが、10年後には約9万km(約19%に相当する)に、20年後は約20万km(約40%に相当する)にまで膨らむと試算されている。急速に増える老朽化する管渠への維持更新が、喫緊の課題となっている。下水道事業の課題は管渠に留まらない。施設の老朽化対策への検討も迫られている。2021(令和3)年度末で、約2,200箇所ある下水処理場。処理場においても、機械・電気設備の標準耐用年数15年を経過した施設が約2,000箇所(全体の90%)にまでのぼる。
国土交通省は、ウォーターPPPのガイドラインを出した。維持管理と更新を一体的に行う方式のもと、性能発注を基本とし、民間企業が一括して行うウォーターPPP。そこには、長期的に、公共施設の管理や更新を民間企業が行うこととなる。
ウォーターPPPの契約期間は、事業期間が10年以上となる包括的民間委託と違い、原則、10年と定めた。また、維持管理と更新を一体的に最適化するための方式として、維持管理と更新を一体的に実施する更新実施型と、更新計画案の策定とCM(コンストラクションマネジメント)によって地方公共団体の更新を支援する更新支援型を基本としている。このとき、管理・更新一体マネジメント方式は、コンセッション方式と異なって、事業期間、公共施設等運営権、利用料金直接収受の有無の設定が求められる。さらに、事業開始後もライフサイクルコスト縮減の提案を促進するため、プロフィットシェアの仕組みを導入している。
表1 下水道事業の官民連携
企業の選定、果たしてどのような仕組みになっているのだろうか
民間企業の選定には、プロポーザル方式を採用する。複数の企業が各企画を提案し、最も適した計画を選択する方法である。まず、発注者は事前に建築物の場所・目的・期間を示し、設計者はその建築物の設計に対する遂行方法やメリットを提案し、提案書の形でとりまとめる。発注者は、その提案書を審査するとともに、設計者に提案内容についてのヒアリングを行う。さらに、提案書とヒアリングの結果をもとに、技術力や経験、プロジェクトにのぞむ体制などを、公正に評価して、設計者を選ぶことになる。官民連携は、民間企業のノウハウを活用することで、効率的な運営が期待できるであろう。それだけではない。新しい技術の導入や企業の努力によって、コストの削減の可能性も秘めている。それだけに、ウォーターPPPは、地域の水インフラの持続可能な運営に大きな役割を果たすことが期待される。
予期せぬ事態、そこには致命的な事態に発展しないための仕組みが重要であろう
一方で、予期せぬ事態への備えも企業の選定で確認していく必要があろう。特に、ライフラインとなる水道事業においては、致命的な事態にまで発展する恐れがある。実際に、現場では、様々な対策が講じられてきている。AIを活用した災害時の迅速な状況把握と避難誘導をはじめ、防災チャットポットを用いた災害時の避難情報の提供への取り組み、ドローンを活用した食品や救急用品等の物資の輸送の実証実験。
多くの関係者が関わる官民連携では、関係者全員が同じ方向に取り組めるように明確な目標とビジョンを立て、定期的な報告と情報共有によって、プロジェクトの進行の透明性を確保し、定期的な会議とワークショップを通じて、関係者間のコミュニケーションが要になるであろう。そして、いざ、予期せぬ事態に直面した場合でも、柔軟な対応と真摯な姿勢が求められる。関係者が安心して取り組める官民連携こそが求められるであろう。