Yahoo!ニュース

日本代表リーチ マイケル、ニュージーランド代表戦では「課題を出す」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
映像チェックも個人練習も「人を巻き込んでやろう」と皆に意識づけしているとか。(写真:つのだよしお/アフロ)

 4年に1度のワールドカップの日本大会を来年に控えるラグビー日本代表は、今秋、ニュージーランド代表などと戦うツアーに挑戦。本番前に備え、さらなるチーム力強化に注力する。8月下旬、リーチ マイケルキャプテンが共同取材に応じ、本大会や現在のチーム、今度のツアーへの展望を語っている(本稿は後半。前半はこちら)。

 15歳で来日して札幌山の手高校、東海大学を経て現在は東芝でプレー。2008年から日本代表入りし、ワールドカップには2大会連続で出場中。南アフリカ代表などから3勝した前回のイングランド大会では、キャプテンを務めている。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――本番の対戦相手がロシア代表、アイルランド代表、サモア代表、スコットランド代表の順に決まりました。各試合に向けたプランは。

「いまのところないです」

――2015年のイングランド大会時は、ずいぶん前から対戦カードごとの戦い方を設計し始めていた。例えば今回であれば、アイルランド代表やスコットランド代表をどう倒すかの計画がなされていてもいいような。

「南アフリカが初戦でよかった。準備しやすい。でも、そこ(強豪国)だけを考えると、一発目のロシア代表に負けてしまう。先を見てしまうと、負けた南アフリカ代表みたいになっちゃう。ただ、このチーム(日本代表)のよさは柔軟性があること。サンウルブズ(※1)では相手によってサインが変わっているけど、それを覚える能力が高い。エディーの時はサインが細かい、やらないといけないことが細かいから。いまは相手によってサインを変えて、それの細かいところをやるのが選手です」

※1日本代表の兄弟チーム、国際リーグのスーパーラグビーに挑戦。

――最も重要な試合は。

「ロシア代表戦が一番、重要かなと。難しい。周りは日本代表が勝てるだろうと思っていて、ロシア代表からしたら、ここしかないとチャンスに思っている。変にやったら、負ける。勝っていい流れを作る。『勝ったけど、最初の10分悪くて何とか勝った』というのもだめ。勘違いしたら、終わる」

――改めて、アイルランド代表、スコットランド代表に勝つには。

「間違いなく、ゲームマネージメントを頑張らないといけない。プレッシャーをかけられた時のマネージメント。負けている原因はその辺にありますが、そこを勝つ原因にしたい。ゲームマネジメントはサンウルブズの時間を使ってコツコツ1試合、1試合、経験しながら(質を上げる)。フィジカル面であれば走る量、スピードを、どの相手よりも一番にしなきゃいけない。それは監督が代わっても一緒。

 あとはトランジション(攻守逆転時)のスピードを世界一にしないといけない。ニュージーランドに比べたらまだ。この間に観たオーストラリア代表対ニュージーランド代表の試合では、オーストラリアがミスをした分、ニュージーランド代表がトライしている」

――そのニュージーランド代表とは11月3日に対戦する。

「今年、いい相手とできる。前回のワールドカップ前と比べたら、やっている相手のレベルが全然、上。毎年いい相手とできている」

――そのニュージーランド代表戦で何を得られるのか。

「それによってだいぶわかりやすくなる。何を強化しないといけないか。過去3年間でやって来たことをすべて出して、新しい課題も出す。相手は世界トップのひとつ。フィジカリティが足りないかもしれないし、スキル、ゲームマネジメントの何かしらが足りないかもしれない」

――この秋、ニュージーランド代表の次は、イングランド代表と対戦します。

「この2つに勝つのがベスト。勝って新しい課題をもらうのと、負けて課題をもらうのとなら、勝つのがベスト。勝ったら、ある程度、満足してしまう。負けたら足りない…となる。でも、勝って自信をつけるのが一番。

 去年はオーストラリア代表と試合をして、『あぁ、これは無理だな』と感じたんですね(※2)。アイルランド代表戦でもものすごくいいディフェンスをしているけど、下げられて、下げられて…となっていた(※3)。ここでもっと身体を作らないといけない(と考えた)。でもいま、相手への怖さはない。方向性はいい感じ」

※2 昨年11月に対戦し30-63で大敗。

※3 昨年6月に2戦、おこない、22-50、13-35で連敗。

――ワールドカップに向け、国民の盛り上がりが不足しているのでは。

「気にしていない。いまは(トップリーグ期間中とあって)代表から離れていて、東芝に集中している。でも、すごい楽しみではある。均ちゃん(最多キャップ保持者の大野均)と喋って『あと3回行けんじゃねーか』って言われました。均ちゃんは、37歳でワールドカップに出てるから。僕もあと1回(2023)は確実に出ます」

――次回大会でキャプテンとなれば、2大会連続での就任となります。気持ちの変化は。

「変わらない。でも、1回経験しているのは絶対に大きいと思います。前は何も予測できなかったけど、今度は予測ができる。ただ予測できないのが、日本大会がどうなるのかということ。前回は注目を浴びていなかったけど、日本大会だと注目されたなかでプレーしないといけないから、ホテルの暮らし、生活が変わると、プラスとマイナスがあります。そのことはしっかりミーティングを組んで何回か(話し合う)。1回、話すだけじゃ終わらないから、リマインドする。

 プラスの方が多いかな。スタジアムも慣れているし、時間、暑い天気、あとは家族も近く出しご飯も困らない。そのへんはプラス。ただ、周りに友達が多いし、時間があったら会いに行きたいということが出てくるかもしれない。試合の準備をしないといけないのに友達がホテルに会いに来たり、チケットが欲しい人が出てきたり。それで、集中力が切れてしまう…。そこは予測しないといけない」

――マイナス面をカバーするにはメンタルコーチが必要だと思われますが。

「まだ探していると思っています。必要は必要です。日本開催。考えるだけで楽しみではあるけど、ちゃんとやらなきゃいけないというプレッシャーはあるから」

――リーチ選手がワールドカップに初出場した2011年時と比べ、日本ラグビー界は進化したか。

「想像した以上によくなっている。日本のラグビーをリスペクトしている人はいっぱいいます。(自身はもともと)すげーと思っていた。高校生の時も上手な選手もいるし、いまやっと日本の良さがわかってきた」

――今大会の日本代表も、国籍を問わないダイバーシティーなチームになりそう。連携は。

「(外国出身者とも)サンウルブズで一緒にやっているからまだ楽。彼らのよさは一所懸命さ。チームをリスペクトしています。ワールドカップだけ出たい、代表になりたいだけというのを感じさせない。ピーター・ラピース・ラブスカフニなんかは、日本ラグビーを強くしたい、勝ちたいと思っている。皆、目的は一緒」

――選手たちをひとつにするチームビルディング、考えていますか。

「考えています。そういうの、大事。(2015年の代表には)トンプソン ルークみたいな一生懸命、身体を張る選手がいた。それを、(現代表にも)伝えないといけない。たださっきも言った通り、ワールドカップに出たいから(というだけの理由で)このチームに入る選手は、いない」

――相手は日本代表を分析してくる。

「覚悟しています、ただ、分析されても、怖くない。ボールインプレーが長いから、それに耐えうるタフさがあるかどうか」

――国民が最も注目する瞬間だが。

「格闘技の人と話しても、日本人が一番メンタル強いってよく言われます。それを改めて見せたい。勝ちに行く姿、でかい相手を倒す姿を見せたい。でかい相手を倒すのはとても大変だけど、それを見せたい。それは色んなスポーツにもいい影響を与えるかなと思います。鍛えれば、強い。格闘技の人も皆、言います。外国には、均ちゃん(※4)みたいなクレイジーな人がいない。昔、均ちゃん、ゾンビみたいだって言われていましたよ。倒れても、倒れても立ち上がって、血を流して、髪も長くて!」

※4 日本代表最多キャップを誇る大野均。リーチと同じ東芝に所属し、ひたすら身体を張ることで知られる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事