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雰囲気に飲まれた? 日本代表、年内最後も完敗。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:ロイター/アフロ)

 過酷な授業を受けている。

 ラグビー日本代表は現地時間11月24日、戦前の世界ランクで6つ上回るイングランド代表に14—59で敗れた。

 エディー・ジョーンズヘッドコーチは言う。

「イングランド代表にはおめでとうと言いたい。ヘッドコーチのスティーブ・ボーズウィックはいい仕事をしているのではないでしょうか」

 敵地ロンドンのアリアンツスタジアムで年内最後のテストマッチ(代表戦)を落とし、秋のキャンペーンは1勝3敗。10月26日には国内の日産スタジアムでニュージーランド代表に19—64と屈し、現地時間11月9日にはスタッド・ド・フランスでフランス代表に12―52と大敗。特にフランス代表戦では序盤から圧倒された。

 世界ランクに劣るウルグアイ代表には同16に36—20で勝利も、反則禍で足踏みしたか。イングランド代表を迎えたこの日も序盤に反則を重ね、相手の強みとするトライラインの攻防に持ち込まれて32分までに28—0とされた。

 イングランド代表とは東京・国立競技場での今年最初のテストマッチでも対戦。スコアは17―52。今回、点差は広がった。

以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所)。

——きょうの試合を振り返って。

「(日本語で)いま、少し新しい車。シーズンを振り返れば、ちょうど新車に乗っている感じ。まだ走り出したばかり。ひとつの点がうまくいけば、もうひとつの『部品が請われてしまう』。本日はラインアウトとスクラムがうまく運べませんでした。まだまだ200キャップ以下(メンバー23名のテストマッチ出場数が少ない)という若いスコッド。プロセスを重視し、やり続けるしかありません。シーズンを通してアップダウンはありますが、特にここが伸びた、ここがひどくなったという点はありません。プロセスを信じてやり続けるしかない」

——試合を通してコンテスト(相手と競り合う)キックを多用したような。

「(キックを)防御ラインの間に落とす狙いがあった。ボックスキックを蹴ってのコンテスト(上空での競り合い)は避けたいと思っていた。どうしてもそこを(強みとする)相手に狙われ、(自陣から)抜け出せないという状況は避けたかった。ラインの間に落とすキックにはスキルが必要だしその意味で苦戦しましたが、アイデアはよかった」

——2015、19年のワールドカップで好成績を収めた日本代表の次のステージは。

「まずは時間。今回のような機会が必要。現状スコッドは200キャップ程度。それはひとり10キャップ程度かそれ以下であることを意味します。経験を積むことで、順応ができるようになりますが、今回は園面で苦戦している。やり続けるしかない。経験を積むことで学べる。

 本日、相手のマーカス・スミス(スタンドオフとして好チャンスメイクを連発)について。彼は若い頃から見ている選手ですが(後述も参照)、状況判断、落ち着き、俊足を活かすところが素晴らしかった。やはり、約40キャップを持っていると言えます。そうなるには我慢が必要で、やり続けるしかない。

 我々はスピードに乗って違った形のラグビーがしたい。それをするとスキルにプレッシャーがかかる。学ばないといけない。本日は後半、慣れる部分もありましたが、最後にボールを渡す(攻め込んでエラーで終わる)シーンもあった。やり続けて経験値を積むしかない」

 今年の日本代表ではジョーンズが約9年ぶりにヘッドコーチに復職。ワールドカップフランス大会のあった昨秋までと比べ、スコッドを大幅に若返らせている。戦術も刷新。ジョーンズが「新しい車」という比喩を掲げるのはそのため。今年は、勝っても負けてもこの趣旨で語りがちだ。

 この日急遽フッカーで先発した、初キャップの李承爀(スンヒョ)は言う。

「相手が序盤から来るのはわかっていたんですが、会場の雰囲気だったりに飲まれがちです。もっと自分たちでマインドセットして、欧州に飲まれないような自信というものを付けたいです」

 インサイドセンターとして途中出場の梶村祐介は、「お互いにもっと成長しないと」と述べた。選手のパフォーマンス、試合ごとにコーチ陣が立てるプランやトレーニングプログラムの両方に進歩が必要だと語った。

 ちなみにジョーンズは22年まで約7年間、イングランド代表を率いていた。

 今年は現地で、元同国代表のダニー・ケアが自伝を出版。ジョーンズの選手、スタッフへの辛辣な対応について紹介している。

 試合2日前にあたる現地時間22日のオンライン会見には、ケアと見られるアカウントも出席して質問を試みていた。

 なおその日の会見には、出席予定だったジョーンズはコンディション不良のため欠席。ニール・ハットリーコーチングコーディネーターが代理で登壇していた。

 年内最後のイングランド代表戦では、指揮官も登場。敗戦後は齋藤直人ゲーム主将とともに現地で会見。オンラインでも繋いでいた。

 ジョーンズの問答にはこのようなものもあった。

——イングランドに帰国して見てどうだったか。

「悪くはない。楽しかった。きょうのハーフタイム、コーチングボックスから下の更衣室に降りる際に邪魔されたことが残念でしたが! トゥイッケナム(アリアンツスタジアムの旧名)に戻れたことは嬉しい。もちろん結果は残念だが、雰囲気は最高。選手たちがこうした場所でプレー経験を積めたことが今後にとっていい。スタッド・ド・フランス、トゥイッケナム…。10キャップ程度の選手がこの舞台でできたことは、若い選手の知識として素晴らしいものになる」

——ダニー・ケア氏の書籍についてはどう感じるか。

「実はいま、新しい本を出そうとしている。題名は『ケアリング・アバウト・ケア』! 前注文を受け付けています」

 画面の向こうで笑みを浮かべていた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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