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相馬監督を迎えてJ3初年度に臨む町田

大島和人スポーツライター

FC町田ゼルビアは、J3初年度にどう臨むのか?相馬直樹新監督、新加入選手13名(※李漢宰は指導者講習会で欠席)を迎えた新体制発表会が18日、町田市内で行われた。

相馬直樹監督は2010年にJFL2年目の町田で指揮を執り、チームを2位に導いている。しかし町田は順位的な条件を満たしつつ、主にスタジアム設備の問題で昇格ができなかった。相馬監督はJ1川崎の監督に引き抜かれ、翌シーズンのJ2昇格はポポビッチ監督(現セレッソ大阪)によって果たされた。しかしアルディレス監督のもと臨んだJ2初年度は最下位でJFLに逆戻りし、秋田豊監督でJ2昇格を期した13年シーズンもJFL4位と低迷。町田は思うに任せぬ2年を経て、J3初年度を迎えることになった。

J3開幕を迎える他クラブは、例年以上に積極的な補強を進めている。昨年のJFLを制し、天皇杯でもベスト16入りしたAC長野パルセイロは、スタジアム整備などの諸条件が揃い、J2昇格を期して充実の補強をした。元日本代表の伊東輝悦など有力選手が加入し、戦力的な厚みも増している。

現段階で発表されている町田の新加入は計14名。移籍8名、大卒選手5名、育成組織からの昇格1名という内訳だ。華やかな補強はなく、他クラブからの補強もJ1清水からGK高原寿康が加入したことを除くと、J2中下位クラブからの移籍組ばかり。“目玉”を強いてあげるなら、町田で3シーズンプレーし、12年のJ2で7得点を挙げた鈴木崇文が岡山からのレンタルで復帰したことくらいだ。

J2昇格に向けた条件はJ3優勝、もしくは2位でJ2下位との入れ替え戦を制することとなる。その厳しい条件はもちろん、他クラブの補強を考え合わせれば、昇格への道は決して平たんなものでない。「非常に難しいリーグ」(相馬監督)という認識は、下川浩之社長も認識している。秋田監督と単年契約を結び、社長が“J2に復帰できなければクビ”と公言した昨季に比べると、多少の“柔らかさ”を感じる質疑応答だった。下川社長も「あまりプレッシャーをかけないで…」と口にする。

4年ぶりの復帰となる相馬監督は「懐かしい気持ちはある。色んな方から“お帰りなさい”と言って頂いた」と目を細める。サポーターに対しても「ボランティアの方はもちろん、練習の時におにぎりを持ってきてくれる人がいたり…。そういう人たちに愛されるクラブでなきゃいけない」と想いを口にしていた。川崎の監督、山形のコーチとして順風満帆とはいかない2年を過ごしたが、「4年前とは違います。幅はできたのかなと思う」(相馬監督)と自らの成長を口にする。下川社長は「今までだったら絶対に笑わなかったところで笑ったりして、車で行ったらハンドルの遊びができた」とその変化を認める。

新監督から具体的な戦術、起用に踏み込んだ言葉はなったが、強調していたのは「ハードワーク」「一体感」といったベースの部分。今まで不在だったフィジカルコーチにも大塚慶輔氏が登用された。14年は「きちんと積み上げる。今年来年と基礎を作って、簡単にJ2へ落ちないチームに作る」(相馬監督)取り組みの端緒となる。13年のJFLを制したのは、2年後のJ2入りを目指して、長期的なチーム作りをした長野だった。チャレンジャーとしてJ3初年度を迎える町田も、“急がば回れ”の地道なチーム作りを進めることになりそうだ。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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