「たけのこの里」、「きのこの山」に3年遅れて立体商標登録に成功
3年前に書いた記事「明治が"きのこの山"の形状を立体商標登録、"たけのこの里"は?」 がツイッターで突然引用され始めたので、どうしたのかと思ったら、何と「たけのこの里」(の形状)の方もつい最近に登録されたためでした(参照ニュース )。
登録番号は6419263号、登録日は2021年7月21日です。出願日は2018年5月29日なので、3年以上をかけてようやく登録できたことになります。ちなみに、「きのこの山」(の形状)の方は、2017年6月20日出願で2018年3月30日登録なので9カ月くらいで登録されています。
上記過去記事および別の過去記事「お菓子形状の立体商標登録について:”きのこの山”はなぜすごいのか」でも書いたように、一般に、商品形状そのものの立体商標登録を特許庁に認めてもらうのはハードルが高く、使用による識別性(セカンダリーミーニングとも言います)を認めてもらう必要があります。つまり、様々な証拠の提出により、多くの消費者が「あーこの形と言えばこの商品だよね」と思う状態であることを立証しなければなりません。
商標権は(更新料さえ払えば)永遠に継続することから、商品形状の立体商標を登録できれば、他社による類似形状の商品の製造・販売を永遠に禁止できるというきわめて強力な権利が得られます。ゆえに、審査のハードルが高いのは当然と言えます。
特許情報プラットフォームは、機能拡張により、最近の商標の審査経過の一部をウェブから無料で閲覧できるようになっています。「たけのこの里」の登録については”経過情報”をクリックし、”審査記録”の「意見書」(2019年10月30日付)をクリックすると、明治がどのような証拠を提出したかがわかります(具体的な証拠文献の閲覧には費用(600円)を払って別途閲覧請求を行う必要がありますが、普段インターネット出願ソフトを使っている専門家でないとちょっと面倒です)。意見書において、明治は主に以下のような主張を行っています。
- 1979年より40年以上の長期にわたって全国的に販売
- パッケージでは商品形態を大きく表示
- 市場調査会社のデータでは年間売上げ40億円から60億円くらい
- 市場シェア約9%(ただし、「きのこの山」との合算)
- テレビ広告・新聞広告の記録(具体的内容は閲覧請求をしないとわかりません)
- 調査会社の消費者調査において89%の認知度
- 新聞・雑誌でロングセラー商品として紹介する記事
- 日本食糧新聞社主催の食品ヒット大賞において、優秀ヒット賞を受賞
ということで、特に、消費者調査における認知度を考えると、使用による識別性は十分にあると言ってよいと思います。
ところで、「きのこの山」が9カ月で登録されたにもかかわらず、「たけのこの里」の審査が3年以上(証拠を提出してからも2年弱)かかった理由はよくわかりません。特許庁の内部プロセスがわからないので推測するしかありませんが、単にコロナ禍で事務手続が遅れただけかもしれませんし、より入念な調査が必要ということだった(正直、「きのこの山」と比べ「たけのこの里」の方が市場で似た形状のお菓子が多いようにも思えます)のかもしれません。