竜巻注意情報とは 遭遇確率は80年に一回
竜巻注意情報が始まって今年で13年、適中率は約5%と非常に低いままだ。一つの市区町村が竜巻被害に遭う確率は80年に一回程度だが、2012年5月には一瞬で街が破壊される被害が起こった。竜巻注意情報の難しさを浮き彫りにする。
竜巻注意情報 適中率は約5%
今まさに竜巻が発生しやすい状況であることを知らせるのが竜巻注意情報です。2008年3月から始まり今年で13年、2018年は一年に648回発表されました。
一方、一年あたりの竜巻発生確認数は23件(2007~2017年、海上竜巻を除く)です。竜巻注意情報が適中した確率は平均して5%程度と、天気予報の適中率8割(明日と明後日)と比べて非常に低いのが現状です。
竜巻は予測困難
竜巻は発達した積乱雲から垂れ下がる柱状または漏斗状の雲を伴う激しい渦で、大きさは直径約100メートル、寿命は平均で12分と非常に短時間で、極めて小さい現象です。そして、竜巻の構造もよくわかっていません。強い竜巻は風速計そのものを壊してしまうからです。世界最強といわれるトルネード(竜巻)の風速は毎秒135メートル(1999年5月3日、米オクラホマ州)です。これはドップラーレーダーによる推定値で、風速計で観測されたものではありません。
そのため、世界トップクラスのスーパーコンピューターを駆使しても予測は難しく、竜巻注意情報が始まった当初から適中率はほとんど変わっていません。
それでも竜巻注意情報を出し続ける背景にはひとたび竜巻が市街地を襲うと大きな被害が発生するからです。
2012年5月6日には茨城県つくば市や栃木県真岡市などを竜巻が直撃しました。轟音とともに激しい突風が吹き、電柱がなぎ倒され、住宅など約1,000棟の屋根が吹き飛んだり、窓ガラスが割れたりしました。竜巻は極めて小さい現象ですが、一瞬で街を破壊する力があります。
関東は竜巻多発地帯
竜巻は日本全国で発生しますが、地域による偏りがあり、日本海沿岸や太平洋側で多く発生します。また、山間部で少なく、平野部で多い特徴があり、関東は全国でも竜巻が多く発生する場所です。1990年12月には千葉県茂原市で国内最大規模の竜巻が発生しました。
遭遇確率は80年に一回
竜巻に遭遇する可能性はどのくらいあるのでしょう。竜巻被害を受ける確率を市区町村単位で見積もってみました。全国1922市区町村とし、一年に平均して23件の竜巻被害が発生したとすると(竜巻被害と市区町村は全国一様と仮定)、一つの市区町村が一年間に竜巻被害に遭う確率は0.012で、約80年に一回の割合です。自分が住んでいる市区町村で竜巻被害が発生する可能性は一生に一度あるかないか程度、必ずしも身近にあるとは言えません。しかし、一瞬で街を破壊する竜巻。どのくらい備えればいいのか、竜巻注意情報の難しいところです。
【参考資料】
気象庁:竜巻注意情報・竜巻発生確度ナウキャスト
気象庁:竜巻等の突風データベース
気象庁: 竜巻等突風予測情報改善検討会(第1回)、資料6田村委員資料、平成24年5月31日
気象庁:平成20年度突風等短時間予測情報利活用検討会(第2回)、竜巻などの激しい突風に警戒をよびかける気象情報の利活用ガイドライン(案)、平成20年11月25日
世界気象機関(WMO)、米アリゾナ州立大学(ASU):GlobalWeather&Climate Extremes Archive、Tornado:Highest Recorded Wind Speed in Tornado (via Doppler Radar)