なぜ苦戦したのか 井岡一翔を苦しめた3つの要因とは
9月1日、ボクシングWBO世界タイトルマッチが行われ王者の井岡一翔(32=志成)とフランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ)が戦った。試合は国内世界戦では初の無観客で行われた。
試合の展開
試合がはじまると序盤から積極的に攻めるロドリゲスに対して、井岡はジャブをつきながら様子を見る。
井岡は展開を変えようとボディを放つが、ロドリゲスのプレッシャーが強く、なかなか自分のぺースに持ち込めない。
負けじと打ち返していたが、ロドリゲスのパワーにおされ気味な印象を受けた。
中盤には、井岡も距離を取りながらジャブをつき有効打を決める。
ロドリゲスは少し疲れた様子で、井岡のボディがじわじわと効いていたようだ。
しかし、後半に入ると再びロドリゲスの猛攻が続いた。
勝敗は判定に持ち込まれ、三者三様の3-0の判定(116-112)で井岡が3度目の防衛に成功した。
なぜ苦戦したのか
ここまで接戦するとは井岡自身も予想していなかっただろう。
苦戦した理由として以下の3つが挙げられる。
一つ目は「体格差」だ。
対戦相手のロドリゲスはミニマム級で世界タイトルを獲得し、減量苦で3階級上げてきた挑戦者だ。
井岡も下の階級から上げてきたため、身長・リーチの数字はほぼ同じだったが、いざリングで向かい合ってみると体の厚みはロドリゲスが上回っていた。
体格を活かし、近距離ではロドリゲス有利な展開が続いた。
二つ目は井岡の持ち味である「距離感」を活かせていなかった。
井岡はジャブをつきながら絶妙な距離を作り試合を組み立てる選手だ。
しかし、ロドリゲスが近距離戦に持ち込んでくるため、井岡の得意な間合いを作り出せていなかった。
パンチを打つタイミングも読みづらく、クリンチする場面も多かったためペースを掴めなかった。
三つ目は「会場の雰囲気」だ。
ガランとした観客席は寂しいものがあった。
歓声が一つのリングに集まるボクシングは、観客からの声援が選手を後押しする。
私も経験があるがリングに届く歓声は選手の士気を高め、試合を優位に進めることができる。
試合後のインタビューでは「準備してきたけど、死に物狂いの相手に手を焼いた。試合を行えたこと、それに勝てたこと。そこに尽きると思う」と話していた井岡。
世界戦ともなると相手は死に物狂いで向かってくる。
ここのところ3戦連続で指名試合をこなし、挑戦者のレベルも常にトップクラスだ。
試合前にはタトゥー問題やドーピング騒動など、リング外でのストレスもあっただろう。
今後の井岡
防衛戦に勝利した井岡は、この階級での4団体統一を目標としている。
スーパーフライ級は選手層の厚い人気の階級で「Superfly(スーパーフライ)」と銘打たれた興行があるほど盛り上がりを見せる。
そんな激戦階級で王座に君臨する選手たちは以下の通りだ。
他にも、4階級王者のローマン•ゴンサレス(ニカラグア)やシーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)、カルロス・クアドラス(メキシコ)など強豪ぞろいだ。
中でもエストラーダは、全階級最強を決めるパウンド・フォー・パウンドランキングに入っており注目度も高い。次戦はローマン•ゴンサレスとの再戦が内定している。
井岡もエストラーダとの対戦を望んでいるが、まずはIBF王者のアンカハスとの統一戦を目指している。
井岡は2009年にプロになり、これまで4階級制覇、日本の歴代王者の世界戦勝利数では通算18勝と具志堅用高や井上尚弥をおさえ1位だ。
数々の偉業を成し遂げてきた井岡だが、年齢は32歳となり残されたキャリアはそう長くない。
「この階級で一番強いと証明したい」
ボクシングキャリア集大成のチャレンジに期待したい。