秘めたるポテンシャル活かせるか?名古屋・熱田神宮横に新商業施設「あつたnagAya」がオープン
知名度より地元度重視のショップラインナップ
名古屋の名鉄神宮前駅に観光商業施設「あつたnagAya」(あつたナガヤ)が、9月6日(金)オープンします。
駅西側エリアに3棟の木造平屋建ての建物が並び、16区画にグルメを中心としたショップが入居します。ショップは名古屋、東海地方を拠点とするブランドが中心。味噌煮込みうどん、味噌串カツ、味噌おでん、手羽先、あんかけスパゲティなどの名古屋めし、和洋のスイーツが揃う充実したラインナップとなっています。
誰もが知るナンバーワンブランドでなくとも、地域に長く愛されているショップがピックアップされているのも特徴。味噌煮込みうどんは山本屋本店、山本屋総本家ではなく独立系で海外で爆発的な人気を獲得している「大久手山本屋」、あんかけスパはヨコイではなくカフェレストランのドンキホーテで長く愛されてきた外食グループの「鯱ひげカフェ」、味噌カツは矢場とんではなく岐阜を拠点にとんかつ店で人気を得る「串カツくった」、和菓子は両口屋是清ではなく郊外を中心に15店舗以上を展開する「亀屋芳広」・・・。商業施設のラインナップとしては新鮮味があり、かつバックボーンからは安心感が感じられる店舗構成となっているのです。
年間700万人の参拝者集める熱田神宮のおひざ元だが・・・
「熱田の地域らしさを重視して店舗誘致を行いました。今後も名古屋市や周辺の商店街などと連携しながら、熱田神宮周辺エリアにふさわしいにぎわいを創出していきたいと考えています」とは事業者の名古屋鉄道担当者。
そう。施設ができた名鉄神宮前駅は熱田神宮の最寄り駅。熱田神宮は三種の神器のひとつ、草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)をご神体とし、国内でもとりわけ崇敬を集める神社。参拝者数は年間700万人を誇り、名古屋市の中でもその集客数はダントツのトップです。
その一方で、熱田神宮にそれだけの人出がありながら、周辺エリアににぎわいの波及や一体感がないことが、名古屋市や地元にとっての長年の悩みでした。参拝をして、あつた蓬莱軒でひつまぶし、あるいは境内の宮きしめんできしめんを食べたら、後は市内の他のエリアへ移動する人が大半だったのです。熱田神宮の圧倒的な集客性をエリア全体で活かしきれていないことは、名古屋が観光に弱いといわれる要因のひとつでもありました。
イートイン、テイクアウト、さらにショッピングができる路面店を集めた「あつたnagAya」は、そんなこれまでの課題を解消する期待を担っています。
シャッター街の商店街や古びた横丁に秘められたポテンシャル
「あつたnagAya」の開業で熱田神宮玄関口のイメージが一新されるのは確かですが、今後は周辺の商店街などにも活性化の気運を広げていくことが重要です。
名鉄の神宮前駅の700m北にはJR熱田駅があり、この間を結ぶのが熱田神宮前商店街。ここが本来、熱田のメインストリートなのですが、長らくシャッター街になってしまっているのです。あつたnagAyaの内見会が開かれた平日午前中に筆者が歩いたところ、営業していたのは58店舗中わずか10軒。夜のみ営業の居酒屋もあるとはいえ、参拝する日中の時間帯に大半の店のシャッターが閉まってしまっているのはさびしい限りです。
もうひとつ名鉄神宮駅の北側にある小さな横丁が神宮小路。1950年代に作られた長屋形式の飲食店街で、飲み屋や中華料理店が15軒ほど。昭和の空気がそのまま残っているかのような激渋の路地裏です。
商店街も横丁も、時代に取り残されたかのような印象も受けますが、近年少しずつ新しい飲食店などもオープンしています。わざわざ足を運ぶファンも獲得し、じわじわですが再生の萌芽も現れているのです。レトロ風ではなく、リアルにレトロな空間は、今後ますます“エモい”と若い世代にも刺さるポテンシャルを秘めています。
今ある町の再生と合わせた「まちづくり」+「観光」を
このような古びた商店街や路地には経年でしか生み出せない味わいがあります。老朽化しているからといって一掃するのではなく、秘めたる魅力を活かした再生を進めることができれば、名古屋でもここにしかないにぎわいを呼び込めるのではないでしょうか。
あつたnagAyaの登場でいよいよ緒に着いた熱田の「まちづくり」+「観光」の総合的な推進。商業施設を核に周囲にも広がる発展に期待しましょう。
(写真撮影/すべて筆者)