キャリアコンサルタントが国家資格化。これからの転職エージェントに求められる役割とは?
「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案」の成立
9月11日に衆議院本会議で成立した「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案」の内容が、私が普段生業とする転職エージェント業界の一部では話題のニュースとなっていました。
以下が引用文ですが、要は、キャリアコンサルタント試験が国家資格となり、キャリアコンサルタントが国の登録制となり、資格を取得し登録された人のみが、キャリアコンサルタントと公式に名乗る事ができるようになったという事です。
私も、Yahoo!ニュース・オーサーでの肩書きをキャリアコンサルタントとしていますが、来年4月以降、国家資格を取得しなければ、名乗り続ける事はできず、変更しなければなりませんので、多少なりとも影響のある話題です。
標準レベルのキャリアコンサルタントの国家資格化
今までも、標準レベルでは、「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」などキャリアコンサルタントの民間資格はありましたし、
熟連・指導者レベルでは、国家技能検定1級 キャリア・コンサルティング技能士、国家技能検定2級 キャリア・コンサルティング技能士という 国家検定も存在していました。
私も各方面から情報収集したのですが、詳細な座組みがわかりにくいのですが、どうやら今回の法案では、これまで民間資格のみであった標準レベルのキャリア・コンサルタントにおいても、国家資格化される事になったという事のようです。
今回の法案の目的
今回の法案の目的として、青少年の適職探しを助け、雇用を促進させることが主な目的と言われています。キャリアコンサルタントは、青少年の職業選択の相談相手となり助言や指導を行う役割を期待されているという事のようです。
日本の終身雇用制、年功序列制が崩壊し、キャリア形成に正解がなくなってきた中で、ひとりひとりが自らキャリア形成を考える必要性がでてきており、必然な流れかもしれませんね。
日本における転職手段
そもそも日本の転職者の職業選択の手段はどのような状況なのでしょうか。
厚生労働省によると、2014年1年間の転職入職者は484万人(前年417万人)、常用雇用者の中の転職入職率が10.5%(同9.1%)との事です。
2013年度の数値になりますが、417万人の転職手段の中での人材紹介会社経由のシェアは以下と、ハローワークが圧倒的に大きいですが、
人材紹介会社経由シェアはまだわずか2%ですが、それだけでも、少なくとも年間8万人以上が転職エージェント経由で転職をしているようです。
大手転職エージェントの面談からの転職決定率が10%程と言われますので、あくまで推定ですが、その10倍とはいかないまでも相当な人数が転職エージェントと何らかの接点を持っている可能性があります。
1 ハローワーク 29%
2 求人広告 27%
3 縁故 24%
4 前職からの出向等 4%
5 人材紹介会社 2%
*その他(学校など) 14%
転職エージェントのサービスレベルの課題
また、昨今の好況もあり、転職エージェント・人材紹介会社の事業者数は年々増えており、中には「儲かるから」というだけの理由で異業界から参入する事業者も増えています。
転職だけでなく、新卒分野の人材紹介会社も増えていますが、学生は就業経験がない分、判断材料がない場合が多いです。
エージェントのナビゲート次第で、人生に非常に大きな影響を与えてしまいます。
転職エージェント(弊社も含めですが)は、企業からフィーをもらっており、個人からは一切無料でサービス提供する事が一般的です。
そのせいか、明らかに本人が離職リスクが高いと知りながら、特的企業へ誘導してしまうエージェントもいると聞きます。
今回の法案により、5年毎にキャリアコンサルタントの免許を更新しなければいけなくなるので、転職エージェントへのサービスレベルの向上と均質化が期待できるかもしれません。
手前味噌ではありますが、弊社でも、転職エージェント・コンサルタントごとのサービスレベル(親身さ・専門性)を見える化しようと転職エージェントが回答するQ&Aサイトを運営しており、業界の発展と転職者へのサービスレベル向上に少しでも貢献できればと考えております。
地域経済の活性と転職エージェントの役割
あえて無機質な言い方をしてしまいますが、転職エージェントの仕事をしておりますと、労働力の分配と配置が将来のその地域の経済状況に大きな影響を与えると感じます。
人は経験の生き物であり、経験した事から物事を発想し、行動に移します。
私自身も、リクルートという会社で人材紹介の営業経験があったが故に、独立して、今も転職エージェント事業を生業としています。
就業経験というのは、その人の次のステップや未来に大きな影響を与えます。
その意思決定に関わるのが転職エージェントの役割だとも思っています。
就業経験の連鎖による経済発展効果の可能性
過去に、福岡県のハローワークで外部講師としてキャリアについての講義をさせていただく機会がありました。
私自身は、北海道小樽市の出身ですが、福岡と札幌の市場は似ており、飲食業や美容室などのサービス業が多いです。
地場の人材会社の経営陣の方にお話を伺うと、地元の20代の人材はエージェントに登録には来ずに、求人雑誌やアルバイトの延長で、多くが飲食店や美容室に就職されていくようです。
とても素晴らしい事と思います。
ただし、同時に、もう少し多様性がある事がその地域の産業を活性する事に繋がるのではないかと感じました。
飲食店の店長経験を積んだ人は、やはりその後のキャリアも飲食店で暖簾分けしたり、独立していくケースが多いです。
それでは、その地域でのパイ(市場)を増やす事にはならず、同じパイ(市場)を食い合う競合プレイヤーが1社増えるのみです。
例えばですが、地元で就職するAさんが、飲食店向けのアプリケーションを提供する会社の法人営業を行う事で、クライアントとなるより多くの飲食店の生産性が高まり、同時にAさんにとっては、飲食店向けの法人営業経験が積まれます。
その経験を生かして、Aさんが飲食店向けに新しいソリューション・サービスを企画提供する会社を興せば、そこに勤める社員もまた飲食店向けの法人営業経験が積まれていきます。
法人サービスを提供する企業の営業職は、飲食店の店舗スタッフと比較し、ビジネスモデルや利益構造的に、給与所得が高くなりがちであり、生活が少し裕福になるでしょう。もちろん飲食店を卑下しているわけではありません。
そのお金を、地元の飲食店に落とす事で、飲食店もさらに潤います。
わかりやすく簡易化したため極端な例かもしれませんが、こうした地域活性の好循環を作るキッカケが、ひとりひとりのキャリア選択と繋がっているのだと思っています。
成熟化した日本においての転職エージェントに求められる役割として、キャリア選択の意思決定に関わる転職エージェントにはそうした視座もあってしかるべきではないでしょうか。
※もちろん国や地域・エージェントのエゴや発展だけでなく、転職者個人の満足ややりがいが最優先されている事が前提ですが。
国としてのロジック
私事ですが、最近、仕事とは関係なく、個人的な活動として、諸先輩方に混じり、霞が関の某省庁の幹部の方の勉強会にお招きいただき、労働人口の減少について助言をさせていただく機会をいただきました。
そこで、おこがましくも、私自身が感じ発言させていただいた事として、労働者としての移民受け入れにしても、対象とする事業者や個人が具体的に特定されていなかったり、教育にしても、どういったゴールや成果を望むための手段としての教育なのかといったものが定義されておらず、漠然とした話になりがちであるという課題感でした。
もちろん、国の政治というのはステークホルダーが国民全員と影響力が大きく全体最適視点で考えなければなりませんし、マクロ視点が中心となる領域である事は理解できます。
ただし、範囲が広く、中長期的な影響を与える国のメッセージは、なるべく戦略的であってほしいと思います。
つまり、どういったアウトプットを目指すべきかのロジック・アルゴリズムがあってしかるべきではないかと個人としては考えています。
例えばですが、国も経営だと例えた場合、成熟社会の中で、労働力をより高い生産性や成長性を期待できる産業に集中させるべきと思います。
それがどういった産業かについては、それぞれのご意見があるかと思いますが、国としてそういった意図を持った上で、推奨する産業があって良いのではないかと思います。
前述した通り、終身雇用制、年功序列制が崩壊する中で、職業選択においても正解がない時代と言われていますが、個人の仕事選びの多様性や自由はもちろん尊重されつつも、国として推奨する産業・職業とそのロジックがあると、一つの参考情報・判断材料にはなるのではないでしょうか。
これからの転職エージェントに求められる視座と役割
今の20代のビジネスパーソンは皆さん、将来食えなくなる事への危機感が強く、自立というキーワードを口に出される方がとても増えています。
ただそのために、具体的にどうすれば良いのか?どの産業や職業が有望なのか?といった事がわからず、悩んでいる方が多いです。
これからの転職エージェントやキャリアコンサルタントは、そうした方々の職業選択に何かしらの示唆を提供する存在となっていく事を社会から期待されているのではないかと、今回の法案決定のニュースを聞くにつけ、勝手ながら感じている次第です。