猛烈ハリケーン「アイダ」米国南部に上陸へ、奇しくも「カトリーナ」と同じ日に
2005年8月29日、アメリカを未曾有のハリケーンが襲いました。ハリケーン「カトリーナ(Katrina)」がルイジアナ州に上陸し、死者1,800人、被害総額1,250億ドルという全米の観測史上最悪の被害を出したのです。
その悲劇からちょうど16年が経つ29日(日)、ハリケーン「アイダ(Ida)」がカトリーヌが上陸したルイジアナ州を再び直撃する可能性が高まっています。さらに恐ろしいことに、カトリーナを上回る勢力で上陸する恐れも出ています。
アイダの現況
現地時間28日(土)朝時点、アイダは北西方向へ26キロのペースで進んでいます。中心気圧985hPa、最大風速は39メートルの、ハリケーンとしては最も弱い「カテゴリー1」の勢力です。
アイダが通過したキューバやジャマイカでは洪水や土砂災害が報告されています。
上陸時の風と雨
急速に強まるのはこれからです。ハリケーンが進むメキシコ湾の海面水温は30度以上と温かく、現地時間28日(土)夜にも「カテゴリー3」のいわゆる「メジャーハリケーン」に到達するもようです。
沖合の海水温はさらに高く32度近くあるため、アイダは最大風速62メートルの「カテゴリー4」へと発達し、現地時間29日(日)午後にもルイジアナ州東部に上陸する恐れがあります。
予想される降水量は最大で500ミリ、最大瞬間風速は75メートルです。
海抜0m以下の沿岸に高潮・高波
加えて恐ろしいのが高潮です。
ルイジアナ州などの沿岸では、海抜0メートル以下の地帯が広がっているため、もともと被害が出やすい地形をしています。予想される高潮の高さは最大4.5メートル、それに高波も加わることから、沿岸部ではかなりの被害が広がることも予想されます。
ハリケーン接近を受け非常事態宣言が出されていますが、とにかく避難するようにと、当局は住民に呼び掛けています。
カトリーナより強かったローラ
2005年にカトリーナがルイジアナ州に上陸したときの勢力は「カテゴリー3」でしたが、実は同州は、昨年2020年8月に「カテゴリー4」の「ローラ(Laura)」の直撃を受けています。ローラは、州の観測史上最強タイの勢力で上陸しました。
ローラの方が強かったにもかからわず、死者は二桁台と、カトリーナの被害を大きく下回りました。その背景には、カトリーナを教訓に治水対策が行われていたこと、防災の意識が高まっていたこと、そしてより多くの人たちが避難したことなどがあったようです。
リタイヤしやすい、「I」ストーム
ところでハリケーンには、アルファベット順に一つ一つ名前がつけられています。おかげで、名前から今年何号であるのかが分かるようになっているのです。アイダは「I」スタートなので、大西洋ハリケーンとしては今年9号です。
名前は6年ごとに繰り返し使われるのですが、甚大な被害を出したハリケーンの名前はリタイアとなり、それ以後使われなくなります。
実は統計上「I」スタートの名前は、もっともリタイアしやすいのです。
1954年から2020年までに、大西洋で発生してリタイアしたハリケーンの名前を調べてみると、11個が「I」始まりでした。これは2位で9個の「C」と「F」を引き離し最多です。9号ができる頃というのは、ちょうど強く、上陸しやすいハリケーンが発生しやすいという背景があります。
残念ながら、今年の「I」ストームも欠番となる可能性が出てきています。
追記(8/30):
アイダは29日(日)カトリーナと同じ日にルイジアナ州に上陸しました。上陸時の最大風速は67メートルで「カテゴリー4」の勢力でした。風速で見ると、これまでルイジアナ州に上陸したハリケーンとしては、2020年のローラと1856年のハリケーンと並び最強となりました。また全米に上陸したハリケーンとしては、5位タイの強さでした。