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令和初の三冠王へ。ヤクルト・村上を過去の達成者と比べると

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

5打席連続アーチで本塁打、打点部門を独走

 首位を走るヤクルトの主砲・村上宗隆がこれぞ4番という活躍でチームの勝利に貢献した。

 後半戦最初のカードは2位の阪神を相手に連敗スタート。7月31日の3戦目もヤクルト打線は6回まで無得点イニングが続き、苦しい展開が続いていた。そんな中、2点を追う7回に阪神の誇る左キラー・渡邉雄大からレフトスタンドにアーチを描く。これで1点差に迫ると9回には守護神・岩崎優の投じたインハイのストレートを捉えた。甲子園の浜風をものともしない一撃をライトスタンドに運び、土壇場で試合を振り出しに戻した。左対左を苦にしない、どころか対左投手打率は.356。延長11回には2点本塁打を放ち試合を決めた。勝ち越しの場面は2死1塁だった。1塁が空いていない状態で得点圏に走者を進める形となったとしても勝負を避けるべきだったとの声が出るほど。移動日を挟んで8月2日の中日戦でも初回と3回に一発を放ち、プロ野球新記録の5打席連続本塁打を達成した。ボール先行なら迷わず歩かせる、が最適解かと思わせる圧巻のパフォーマンスで39本塁打、98打点。2位とは17本塁打差、27打点差の独走状態となり、怪我さえなければタイトル獲得はほぼ確実。打率も.321でリーグ3位と好位置につけており、令和初の三冠王誕生が現実味を帯びてきた。

若さとパワーと脚力と。記録ラッシュのシーズンに

 これまで三冠王は11度達成されており、その成績を合計し143試合に換算するとおよそ打率.350、50本塁打、130打点となる。現在の村上は打率.321、58本塁打、146打点ペース。まだ22歳ながらその成績は王貞治(元巨人)、落合博満(元ロッテ)ら球史に残る大打者の全盛期と遜色ない。

 今季放った安打は107本だからなんと安打の1/3以上をスタンドまで運んでいる。凄まじいパワーだ。長打力は長打率で測られることが多いが、これは単打でも上昇する。純粋な飛ばす力は「長打率−打率」で計算されるIsoPで比較可能だ。これは安打が全て単打なら.000となり、長打が増えるほど数値が大きくなる。目安は.200以上なら長打力に優れたスラッガー。村上のIsoPはその倍近い.397。三冠達成時にこれを超えているのは1974年の王が打率.332、49本塁打、107打点で記録した.429のみだ。

 村上は他にも記録を更新するかもしれない。これまで三冠王達成時の最多盗塁は1982年の落合が記録した8盗塁。村上はすでに9盗塁を決めている。三冠王+2桁盗塁となれば史上初。22歳で三冠王に輝けば最年少。リーグ連覇を果たせばMVP獲得も間違いない。一体どこまで凄いんだ。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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