なぜエムバペは移籍を“決意”したのか?レアルの思惑とパリSGの代役探し…千載一遇のチャンス。
移籍の瞬間が、近づいている。
キリアン・エムバペが、パリ・サンジェルマン退団に迫っている。エムバペは、すでにナセル・アル・ケライフィ会長にその意思を伝えたという。イギリス『ジ・アスレチック』やフランス『RMC』がその旨を報じ、スペイン『マルカ』『アス』といったメディアが追随した。
エムバペは2022年夏にパリと契約延長を行なった。その際、「2年延長+1年オプション」でサインをしていたが、その1年オプションを行使せず。次の夏、フリーで移籍する“決意”を固めている。
エムバペは移籍する流れになっている。移籍先候補として考えられるのは、当然、レアル・マドリーだ。
■レアル・マドリーの思惑
マドリーは、この数年、エムバペの獲得を試みてきた。2021年夏、移籍金2億ユーロ(約300億円)のオファーを提示。2022年夏には、フリーで迎え入れるため準備を整えた。だが幾度となくエムバペ側に“フラれて“きた格好だ。
マドリーは今夏、カリム・ベンゼマが退団している。アル・イテハドからビッグオファーが届き、サウジアラビア移籍が決定した。
本来であれば、その時にエムバペを…、というのがカルロ・アンチェロッティ監督とフロレンティーノ・ペレス会長の算段だったはずだ。だがその目論見は外れ、ストライカー不在でのチームビルディングを強いられた。
状況は変わった。アンチェロッティ監督は今季から加入したジュード・ベリンガムを攻撃の中心に据えようと考えた。
【4−3−3】から【4−4−2】に布陣を変更して、トップ下にベリンガムを配置。最近では、【4−3−3】のトリプルボランチとゼロトップにチャレンジしている。無論、ゼロトップのレギュラーはベリンガムだ。
ベリンガムは今季、公式戦29試合で20得点をマークしている。彼のこれまでのキャリアハイは14得点だった。すでにその数字を塗り替え、マドリーで充実のファーストシーズンを過ごしている。
■序列とヒエラルキー
そう、状況は変わったのだ。ベンゼマ不在の最初のシーズンで、得点力不足に悩まされ、無冠に終わっていたら、エムバペを歓迎する機運が高まっていただろう。
だが守備陣にも負傷者が続出するなかで、アンチェロッティ監督はソリッドなチームを作り上げた。リーガエスパニョーラでは、先日、ジローナとの天王山を制しており、優勝に向けて邁進している。
また、注目すべきはチーム内の序列だ。
エムバペはパリSGで年俸7200万ユーロ(約108億円)を受け取っていると言われている。手取りでは、およそ5500万ユーロ(約82億円)だ。
一方、マドリーは手取りで年俸2500万ユーロ(約37億円)から3500万ユーロ(約52億円)のオファーを考えているという。マドリーでは、年俸2000万ユーロ(約30億円)以上を受け取るのはルカ・モドリッチ、ダビド・アラバ、トニ・クロースといったベテラン勢になるが、いずれにせよパリSGで受け取っている額には及ばない。
そして、そのエムバペが加入することで、少なからずチーム内のヒエラルキーに変化が生じる。
■エムバペの代役を探す必要性
他方でパリSGはエムバペの代役を探す必要がある。エムバペの年俸と支払われるべきだったロイヤリティボーナスの8000万ユーロ(約120億円)が浮いて、それを補強費に充てる計画だ。
パリSGはビクトール・オシムヘン(ナポリ)、ラファエル・レオン(ミラン)に関心を寄せている。オシムヘンの契約は2026年夏までで、レオンの契約は2028年夏までだ。
パリSGのプランAはオシムヘンだと見られている。プランBとしてレオンが挙げられるが、実際にエムバペの移籍が決まった後、“両獲り”に動く可能性は否定できない。
「エムバペのレアル・マドリー移籍について、僕は彼から何も聞いていない。もし、聞いていても、ここでは言えないけれどね」とはフランス代表でエムバペのチームメートであるオウレリアン・チュアメニの言葉だ。
「僕たちは、エムバペの移籍について、ロッカールームで話している。重要なテーマだからね。今後、数週間で、少し落ち着くといい」
マドリーは、現時点で、沈黙を貫いている。エムバペとパリSGの何らかのアクション、公の場での発言を待っているところだ。
今季、ベリンガムの活躍で、マドリディスタはエムバペの存在を忘れることができた。だが、エムバペは、エムバペである。マーケットの機会としては、千載一遇のチャンスだ。終わらないストーリーに、決着がつけられようとしている。