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本当に住みやすい街大賞2022で大賞よりも注目された3位「多摩境」。急浮上の理由

櫻井幸雄住宅評論家
ゲストにハナコ、朝日奈央さんを迎えて発表された「本当に住みやすい街大賞2022」

 12月7日、住宅ローン専門金融機関「ARUHI」が主催する「本当に住みやすい街大賞 2022(関東)」が発表された。

「本当に住みやすい街大賞2022」

1位:辻堂(JR東海道線)

2位:川口(JR京浜東北線)

3位:多摩境(京王相模原線)

4位:大泉学園(西武池袋線)

5位:海浜幕張(JR京葉線)

6位:たまプラーザ(東急田園都市線)

7位:花小金井(西武新宿線)

8位:月島(東京メトロ有楽町線)

9位:船堀(都営地下鉄新宿線)

10位:新秋津(JR武蔵野線)

 関東エリアで第1位になったのは、神奈川県の辻堂。昨年第3位からの大賞受賞だ。2位の埼玉県川口は、前回と前々回の2年連続大賞だったが、今回は辻堂に大賞の座を明け渡した。

 ここまでは順位が入れ替わっただけといえるし、4位大泉学園(前回2位)や6位たまプラーザ(前回も6位)など、入賞常連の街も多い。

 そのなか、多くの人の関心を集めたのが3位の多摩境だ。

 「なぜ、その街が?」ではなく、「それ、どこ?」「どんな街なの?」と興味津々の人が多かった。多くの人にとって馴染みの薄い街が今回初めてランクインし、しかもいきなり3位に入ったのだから、それも当然だろう。

 3位多摩境とは、どんな街なのか。そして、3位入賞の理由を、同賞の審査委員長を務めさせていただいている私から説明したい。

南大沢と橋本に挟まれた、穴場的な駅

 京王相模原線多摩境駅の所在地は東京都町田市で、八王子市や神奈川県の相模原市緑区橋本に近い場所だ。

 京王相模原線多摩境駅の上り隣駅が南大沢駅。アウトレットや首都大学のキャンパスがある場所として、ご存じの方も多いだろう。下りの隣駅はリニア中央新幹線の新駅ができることで注目度アップの橋本駅である。2つの有名駅に挟まれて、穴場のように目立たない駅、それが多摩境駅だ。

 多摩境駅に降りたつと、駅前からマンションエリアが始まることに驚く。住宅中心の街として開発されてきたわけだ。

多摩境駅の周辺には多くのマンションが立ち並んでいる。筆者撮影
多摩境駅の周辺には多くのマンションが立ち並んでいる。筆者撮影

 一方で、大きな買い物施設もある。コストコが多摩境駅から1キロメートルほどの場所にあり、歩いて行くことも可能。カインズもあり、それは多摩境駅から歩いて11分ほどだ。

 周辺には、野山も残っており、自然が身近。住み心地はよいと考えられる。

 その多摩境駅が今回3位に入ったのは、コロナ禍の影響が大きい。

多摩境は、コロナ禍で脚光を浴びた

 コロナ禍は、郊外の住宅地にスポットを当てた。

 それまで都心や郊外駅近の便利なマンションばかり人気になる時代が続いたが、郊外で自然が豊かな場所の生活もわるくない、と気づかせてくれた。

 自然が身近で、ゆったりした広さの住宅を無理しないでも手が届く価格帯で購入できる場所……それが、湘南エリアの辻堂であり、多摩丘陵の多摩境だった。

 多摩境駅周辺では、最初の緊急事態宣言が出た2020年4月、販売を開始したばかりの大規模マンションがあった。

 それは、駅から若干離れていたが、マンション敷地内に森があり、80平米クラスの大型3LDKが3000万円台半ばからの価格で購入できる、という特徴があった。

 駅から離れていても、大型商業施設が隣接する、という便利さも備えていた。

 コロナ禍で家時間が増えたとき、多くの人が憧れた「住戸のゆとり」や「環境の心地よさ」、そして「日々の買い物は便利」という特徴を備え、価格が手頃だったために、そのマンションは2020年から21年にかけて人気のうちに完売した。

 「本当に住みやすい街大賞」は、直近1年間で住宅ローンを組んだ人が多い場所をピックアップするところから、街の選定を始める。

 規模の大きい人気マンションや一戸建て住宅地が出現したところは、ランクインしやすいわけだ。

 逆に、住宅価格が上がり、購入者が減った場所は順位が落ちやすいし、もともと住宅価格が高く、購入できる人が限られる場所はランクインしない。それが、単なる人気投票ではない、「本当に住みやすい街大賞」の特徴だ。

 ちなみに、「本当に住みやすい街大賞」の「住みやすい」は、「住んで快適」という意味に、「家を借りやすい、買いやすい」という意味も含んでいる。

 3位の多摩境駅周辺は、2つの住みやすさでコロナ禍が起きてからマンション購入者が急増。今回、いきなりランクインし、堂々3位に輝いた。

 知らない人が多い場所なのだが、意外な人気スポットを掘り起こすこと……それも「本当に住みやすい街大賞」を発表する目的だと考えている。

※冒頭の写真は、筆者撮影

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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