【京都/福知山】鬼って日本以外にもいた!? 鬼の正体に迫るべく「日本の鬼の交流博物館」へ
日本各地には昔から伝わる物語や伝説、興味深い地名など色々あります。その中でも鬼に関する話は多いですね。
ところで、鬼の話って… ”日本だけじゃない” って知っていましたか?
今回は鬼について、アレコレ調査してみました。
鬼と言えば、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』で身近な存在になりましたが…
一般的なイメージとしては、赤鬼、青鬼、虎毛のパンツ。そして、桃太郎などの昔話に出てくる悪いヤツで、最後には成敗される。
ところが、成敗された鬼の一部は改心して良い鬼に…。ん?改心する?それなら理性も常識も持っているということ。なんだか人間っぽくも感じます。
鬼の正体ってなんだろう?
日本の鬼の交流博物館へ
そんな事を考え「日本の鬼の交流博物館」に辿りつきました。
ここは京都府福知山市大江町です。大江山と言えば、史上最強の鬼とも言われている酒呑童子伝説のあるトコロ。
よく見ると、博物館は鬼の頭の形、なんだかユニークでしょ。
そして、ドドーーーン!と大迫力
前庭には高さ5m、重さ10トンもある日本一の大鬼瓦の姿も見られます。
館内に入ると鬼瓦の展示がズラリと並んでいます。
確か…、鬼瓦と言えば ”魔除け” や ”家の守り神” として使われているはず…そう考えると、鬼は怖ろしい存在とは言え、必ずしも敵というワケではないようです。
そう言えば…
鬼瓦の起源は、古代ギリシアのペンダントにメデューサの首を模したもの(ゴルゴネイオン)が始まりって話を聞いた事があります。
それが次第に「家の中に魔が入り込まないように」入口に置かれるようになり、この文化はシルクロード経由で中国に伝来し、日本にやって来たという。
もちろん、諸説あるようですが…
鬼瓦の起源が外国からというのは意外に感じたのを思い出しました。そう考えると、鬼は日本だけの存在ではないのかもしれませんね。
ところで鬼とは何者なのか?
日本の鬼の交流博物館の入口付近に「鬼とは何者なのか?」と書かれているのを発見。そうそう、これが一番気になる部分です。
読んでみると…
館長の村上さんに「鬼について」お話を聞くと…
世界鬼学会会長である八木氏が「鬼はコロナ」と例えた話を教えてくれました。つまり、得体が知れず、目に見えないものも ”鬼” の一つだと。
コロナの赤いイガイガ、蔓延するウイルスを可視化することで「倒さないといけないのはコイツ」と具体化したことに類似しているという。
要するに…
平安時代の頃、疫病は今のように科学的に捉える事は出来ず ”見えない恐怖” があったに違いないと。だから本来は見えないはずの鬼を「見える存在」として描くことで、恐怖に打ち勝とうとしたのが「鬼」の始まりと考えられているのだとか。
姿形が見えないから、今の鬼のような形を作りだしたと…。
ただ、村上さん曰く、鬼は怖くて恐ろしい存在ばかりではないとも…。例えば、日常的な言葉の使い方からも分かるという。
それは「鬼の様な人」と言えば怖い意味となるが、「鬼が笑う」はユーモアがあり、「鬼才」となると天才以上の存在、「仕事の鬼」は褒め言葉として使われています。そして「心を鬼にする」も悪い意味ではありません。
確かに、鬼の伝説の中には、悪い話ばかりではなく、人を助ける鬼の話もあります。鬼は怖ろしい存在であると同時に、敬われてきた存在というの忘れては行けませんね。
ある意味、鬼はスーパーマン的な存在でもあるのかも…。
世界の鬼について
博物館の中を歩いていると、驚きの鬼を見つけました。
それがこの鬼の像です。
この鬼の名は「バジ鬼」と言い、インドネシア・バリ島の道端で祀られているそうな。
説明を読むと、これがとっても良い鬼で…
子供たちが病気にならないように、事故にあわないように見守ってくれているんだとか。しかも、子供たちに危険が迫ると声を出して危険を知らせてくれるという。
鬼と言うよりも、日本で言う「お地蔵さん」のようなイメージに近いようです。
日本以外にも鬼が…
と考えた時、それはアジア圏だけかと思っていたら、まさかロシアにまで…。
サタンと言えば、キリスト教では神の敵対者であり悪魔とされている存在。
私たちがイメージする鬼とは少し違うように感じますが、実はドイツでは半人半獣の姿で、頭に角を持つものが多いのだとか。
こう考えると、やっぱり世界は広い!
館内には「世界の鬼」と題された様々なお面の展示があります。
これがとっても興味深い。
迫力あるお面の数々、その中には「これも鬼?」「その地域の精霊では?」と感じるお面も見られますが、そこには実に興味深い説明も…。
つまり、その地域の守り神が、新しい勢力によって虐げられ、悪魔や悪霊の扱いになってしまうということ。
その土地の守り神だった存在が、新しい支配者の都合で悪者(鬼)になってしまう。
考えたら、これこそ恐ろしい話ですね。
もしかすると、日本の鬼も…
得体の知れぬ災害や疫病を鬼と呼んだ以外に、権力に従わない反逆者を悪者(鬼)に仕立てて征服した…なんて話が一つや二つあっても不思議では無さそうです。
酒呑童子伝説
さて、この大江山には3つの鬼退治伝説が残っています。
①陸耳御笠(土蜘蛛)の伝説。
②英胡・軽足・土熊の伝説
③酒呑童子の伝説
その中でも特に有名なのが、酒呑童子の伝説です。
王権に叛く悪鬼の大将、その名を酒呑童子という。山伏姿で身をかくした源頼光を筆頭とする6名は酒呑童子を討伐しに屋敷へ。
珍客に気を良くした酒呑童子、頼光一行を血の酒と人肉で手厚く歓待するが…
頼光たちに毒酒を飲まされ酔い潰れ、だまし討ちに。
首となった童子は「鬼に横道なきものを(鬼は人をだましたり、嘘をついたりしない)」と頼光を激しくののしったそうですが…
卑怯な手を使ったのは鬼ではなく人間だったというお話。
⇒酒呑童子に関する面白い動画『転生したら鬼退治を命じられました』(外部リンク)
尚、館内では『酒呑童子絵巻』が展示されています。
この物語も諸説ありますし、だまし討ちが必ずしも卑怯とは限りません。戦いとはそのようなモノだと思います。
ただ、「鬼の方が正々堂々としていた」というのはスッキリせず、「鬼に横道なきものを…」の言葉は、その背景に何か別の意味があったような詮索をしたくなってしまう。
それは単に、日本人特有の敗者に同情する判官びいきの感情なのかもしれませんが、結局のところ、アレコレ妄想し、調べ、色々と巡るのが面白いのでしょう。
鬼の伝説を巡るなら、京都府福知山市大江町は外せませんよ!
最後に…
最近、私は昔話にとっても関心を持っています。その物語の裏には、「何か後世に残そうとした別の想いがあるのではないか」と感じる事があるからです。
鬼は本当に存在したのかは分かりません。
でも、物語の中で何かモヤッとした気分になる時は鬼がよく出てきます。これもまた考えすぎなのでしょうけど。ただ、そんな事を考えているからでしょうか?
アニメ『鬼滅の刃』で炭治郎が「鬼は虚しい生き物だ。悲しい生き物だ」と放った印象的なシーン。そこにストーリーの面白さを越え何かグッとくるものがありました。
もしかすると、昔話に登場する鬼の存在感と、どこか重なる点があったのかもしれません。
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「日本の鬼の交流博物館」
住所:京都府福知山市大江町仏性寺909
電話番号:0773-56-1996
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日
入館料:330円(高校生220円/小中学生160円)
公式ホームページ(外部リンク)
地図(外部リンク)
取材協力:日本の鬼の交流博物館 館長 村上誠さま