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男子の「スポーツブラ」を女子選手が着けるとどうなるのか? メーカーに聞きました。

谷口輝世子スポーツライター
写真はSTATSports提供 

 数年前から、サッカー選手らが「スポーツブラ」のようなものを着用する姿を見かけるようになった。

 このスポーツブラのようなものには、背中に小さなポケットがついていて、GPSデバイスを入れるようになっている。胸の揺れを固定するのではなく、デバイスを固定するためのスポーツブラなのだ。

 デバイスから取得できるデータは走行距離、スピード、加速、最大スピード、ステップ時のバランス、心拍数、ゲーム中にどの位置にいたかなどである。

 このようなスタイルのウェアラブルデバイスの採用が最も進んでいるのはサッカー界で、世界の名門クラブや代表チーム、日本国内でも使われている。このほか、ラグビー、バスケットボール、アメリカンフットボールなどでも盛んに使われるようになった。

 テクノロジーを使うメリットは選手のコンディションを管理し、ケガのリスクを下げることだ。走行距離、運動量、強度を可視化することで、練習量やトレーニングの質をコントロールできる。試合であれば、疲労によるパフォーマンス低下が起こる前に交代の判断を下すこともできる。

 FIFAは2015年7月に試合中のGPSデバイスの着用を許可。今年のFIFA女子ワールドカップでも複数の代表チームがGPSデバイスを着用していた。優勝した米国代表もそのひとつだ。

 米国代表チームが使用しているのはSTATSport社製のもの。米サッカー連盟がSTATSportsと契約している。同社の商品はデバイスを固定するウェアは4種類あり、スポーツブラと似た形状のものは「ベスト」と呼ばれていて、この他にノースリーブ、半そで、長そでのベースレイヤーがある。ベースレイヤーにも背中部分にデバイスを固定するポケットがある。

 同社の広報によると「一番、人気があるのはベスト型です。マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リバプールらの選手たちが黒いベストを使っていますので、他のお客様もそれを好まれます。冬場はベースレイヤーも人気商品です」と言う。

 男子選手は、スポーツブラ状のベストをそのまま素肌の上に着用していたり、トレーニングウェアの上から被っていたりする。夏の練習を伝える画像には、素肌の上に着けているものをいくつか見かけた。シャツの上から被るのは暑いからだろう。体に直につけても、ベストそのものは、他の衣類と同様に洗濯可能だから問題ない。

 では、女子選手の場合はどうなるのか。スポーツブラを着用して、その上からベストを重ね着するのだろうか。同社の広報にたずねたところ、「スポーツブラとして使うこともできますが、練習着に重ねて使う選手が多いようです」という回答だった。

 このベストは男女兼用で大人用のサイズは5種類(子ども用も4種類)。もともとズリ落ちたりしないよう、サポーターのように作られているから、スポーツブラとしても使えるというわけだ。

 練習時には、シャツの上から被るとしても、試合の時には、ユニホームの上からベストを着用することはできない。試合時は、スポーツブラの代わりにこのベストを着るか、スポーツブラに重ねてベストを着けることになる。スポーツブラの上にサポート力のあるベストを重ねる場合は、つけごこちのよいようにホールド力をそれぞれで工夫したほうがいいかもしれない。スポーツブラをつけ、そのうえにノースリーブのレイヤーを着て、ユニホームをつけることもできる。

 女子選手がデバイスポケットのついたベストをさらに心地よく着けるために、女子の競技選手向けにスポーツブラを作っている会社と、ウェアラブルデバイスを作っている会社が提携するというのはどうだろうか。そして、女子選手の胸を適度にホールドできるスポーツブラに、デバイスを入れるポケットをつけた商品があってもいいような気はする。

 

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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