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早ければ今日にも「春一番」 カギは風速が握っている

饒村曜気象予報士
「春一番」になるかもしれない予想天気図(2月4日9時の予想)

冬の終わりは日本海低気圧

 令和2年から3年(2020年から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、寒冬となっています。

 日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しているからで、これまで5回の強い寒気が南下しています。

 この強い寒気の南下は、1回目は12月14日頃から、2回目は年末年始頃、3回目は1月7日頃から、4回目は1月16日頃からで、5回目は1月29日頃からのものです。

 そして、強い寒気が南下するたびに、各地の冬日(最低気温が0度未満)と真冬日(最高気温が0度未満)の観測地点数が増加しています(図1)。

図1 各地の冬日と真冬日の観測地点数の推移
図1 各地の冬日と真冬日の観測地点数の推移

 冬のさなか、寒気の南下が強い時は、日本付近で低気圧が発生しません。

 発生しても本州南岸ですので、日本海で低気圧が発生するようになったということは、季節は真冬から早春に変わったともいえます。

 これまでの冬日と真冬日の観測地点数からみると、3回目の強い寒気南下がこれまで最強の寒気南下ですが、このまま、今冬最強の寒気南下になりそうです。

 低気圧が日本海で発達するようになり、強い南寄りの風が吹きますが、この強い南よりの風のうち、春になって最初に吹く強い南風が「春一番」です。

立春の翌日に春一番?

 令和3年(2021年)2月4日は、立春の翌日ですが、日本海で低気圧が発生・発達する見込です(タイトル画像参照)。

 「春一番」の基準は地方により異なりますが、立春(今年は2月3日)から春分(今年は3月20日)までの間に日本海で低気圧が発達し、南寄りの風が強く吹いて気温が上昇することが目安です(表)。

表 各地方の「春一番」の基準
表 各地方の「春一番」の基準

 つまり、2月4日の場合は、立春のあとであり、日本海に低気圧があっての南寄りの風ですので、多くの地方では風速が基準値を超えていれば「春一番」となります。

 ただ、日本海の低気圧が大きくは発達しませんので、風速が基準値を大きく超えることはないと思われますので、「春一番」になるかどうかは微妙です(図2)。

図2 雨と風の分布予報(2月4日9時の予想)
図2 雨と風の分布予報(2月4日9時の予想)

 例えば、関東地方でいえば、東京都千代田区北の丸公園にある風速計で平均風速8メートル以上を観測したかどうかが基準です。

 千葉県房総半島の館山や、東京都大田区の羽田空港などで平均風速が8メートル以上の強い風が吹いていても、「春一番」にはなりません。

【追記(2月4日15時)】

 気象庁は2月4日14時に関東地方で「春一番」が吹いたと発表しました。

 東京で13時26に最大風速8.6メートルを観測したためです(最大瞬間風速は15.2メートル)。

 「春一番」の一番早い日は、定義より立春の日(多くの年は2月4日)ですので、これより早いのは、立春の日が2月3日の年で、かつ「春一番」が立春の日に吹いたときだけです。

 今年のように、立春が2月3日の年は少なく、ほとんどの年の立春は2月4日ですので、令和3年(2021年)の春一番は、事実上の最早といえるでしょう。

春は間近

 「春一番」になるかどうかは微妙ですが、日本海の低気圧が大きくは発達しないということは、低気圧通過後の寒気の南下も弱いことを意味します。

 低気圧通過後に少し気温が下がりますが、その後は気温が高い日が続きます。

 東京の最高気温と最低気温の予報をみても、ともに平年値より高い日が続く予報です(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温(2月4日から10日は気象庁、2月11日から19日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温(2月4日から10日は気象庁、2月11日から19日はウェザーマップの予報)

 北日本や東日本の日本海側ではもう少し先になりそうですが、東日本の太平洋側から西日本では、着実に春の訪れが近づいています。

タイトル画像の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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