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「光の春」に今冬5回目の強い寒気南下、その後「温度の春」が到来

饒村曜気象予報士
寒気を感じる女性(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

「光の春」

 令和3年(2021年)1月1日の東京の日の出は6時51分、日の入りは16時39分と、日中の時間は9時間48分でした。

 正月から1ヶ月たった1月28日は、日の出は7分早くなり、日の入りが25分遅くなることで、日中の時間は32分も長くなっています(表)。

表 東京の日の出の時刻と日の入りの時刻
表 東京の日の出の時刻と日の入りの時刻

 日中の時間の伸びの大部分は、多くの人活動している時間帯である日の入りが遅くなったことによるもので、まだまだ寒い日が続いていますが、日中の時間が長くなったと感じている人も多いと思います。

 まもなく立春(今年は2月3日)です。

 立春の頃は、明るさによって春の到来が近いということを感じられることから、まだまだ寒い日が続いていても、「光の春」と言われてきました。

強い寒気の南下

 令和2年から3年(2020年から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、寒冬となっています。

 日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しているからで、これまで4回強い寒気が南下しています。

 1回目は12月14日頃から南下したもので、日本海側を中心に記録的な大雪となり、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で2000台以上の車が立ち往生しています。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気がおりてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となりました。

 3回目は、1月7日から8日で、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側で大雪となり、特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

 この3回目は、今のところ、今冬一番の寒さです。

 4回目の強い寒気の南下は、大学入試の制度が変わって初めての大学入学共通テスト(第一日程)が行われた1月16日頃から南下してきたもので、北海道稚内市では、雪による悪天候のため、16日に予定した大学入学共通テストが中止(1月30日に再試験)となっています。

 そして、強い寒気が南下するたびに、各地の冬日(最低気温が0度未満)と真冬日(最高気温が0度未満)の観測地点数が増加しています(図1)。

図1 冬日と真冬日の観測地点数の推移
図1 冬日と真冬日の観測地点数の推移

 4回目の強い寒気の南下の後は、しばらく平年並みか平年より高い気温の日が続いてきましたが、今週後半は5回目の強い寒気が南下する見込です。

5回目が今冬最後か?

 日本に南下してくる寒気の目安として、上空約5500メートルの気温が使われます。

 氷点下30度なら強い寒気、氷点下36度なら非常に強い寒気で、日本海側では大雪の可能性があります。

 1月29日から日本海に南下してくる寒気は、氷点下36度以下の強い寒気です(図2)。

図2 上空約5500mの気温分布予想(上は1月29日夜、下は2月2日夜の予想)
図2 上空約5500mの気温分布予想(上は1月29日夜、下は2月2日夜の予想)

 この非常に強い寒気の南下は、東北から北陸地方までで、東日本の太平洋側から西日本には南下しないと予想されていますが、氷点下30度以下の強い寒気は、西日本の日本海側まで南下してくる予想です。

 そして、北海道は、これまで4回の強い寒気南下と同様、5回目も氷点下42度以下の猛烈な寒気が入ってくる見込みですので、寒さに警戒が必要です。

 また、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となり、日本海側の地方を中心に暴風が吹き荒れ、大雪に警戒が必要です。

 気象庁では、5日先までに暴風警報や大雪警報などを発表する可能性を「高」「中」の2段階で示した早期注意情報を発表しています(図3)。

図3 暴風警報に関する早期注意情報
図3 暴風警報に関する早期注意情報

 これによると、1月28日には山口県で暴風警報を発表する可能性が「高」、1月29日は北日本の日本海側と山口・大分県で、1月30日は北日本の日本海側で「高」となっている他、広い範囲で「中」があります。

 ただ、1月31日は、暴風警報を発表する可能性のあるところが無くなっています。

 また、1月29日は北海道と東北地方の日本海側から北陸地方で、1月30日は東北地方の日本海側から北陸地方で大雪警報を発表する可能性が「中」となっています(図4)。

図4 大雪警報に関する早期注意情報
図4 大雪警報に関する早期注意情報

 北日本と北陸地方は、これまでの4回の寒気南下で平年より多くの雪が降っています。

 多雪地帯では、このところの日中の暖かさで表面が融け、積雪量は減ってきていますが、それでも1メートル以上の積雪がある都市部は少なくありません。

 加えて、融けた積雪の表面は、夜間の冷え込みで凍ってアイスバーン状になっており、人的被害が大きくなる新雪雪崩が発生する可能性が高くなっています。

 この状態での大雪ですので、暴風と大雪に警戒するとともに、多雪地帯では新雪雪崩に注意が必要です。

5回目の強い寒気の南下が終わると

 気象庁の1ヶ月予報では、2月の気温は、北日本ではほぼ平年並みですが、その他の地方は平年より高くなっています。

 これは、日本付近では冬型の気圧配置が長続きしない見込みであるためです。

 つまり、5回目の強い寒気の南下が終わると、暖かい日が続く可能性があります。

 「光の春」に続いて、「温度の春」が到来する可能性が高く、厳しい寒さを凌ぐのも、あとわずかと思われます。

タイトル写真の出典:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

表の出典:国立天文台ホームページをもとに著者作成。

図1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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