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パーソナリティー障害とは:人口の15パーセントがパーソナリティ障害!?

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■21世紀はパーソナリティ障害の時代

20世紀は、自分を責めるタイプの「神経症者(ノイローゼ)」が目立ちました。20世紀は神経症の時代であり、神経症を理解することは、人間を理解することにつながりました。

21世紀の今、「パーソナリティ障害」が増えています。21世紀はパーソナリティ障害の時代であり、パーソナリティ障害を理解することが、人間を理解することにつながるでしょう。

■パーソナリティ障害とは

人間には様々な性格、個性があります。気が長い、短い、おしゃべり、無口。どれも個性です。どれもOKです。しかし、パーソナリティの特徴が、個性の範囲を超えて偏っていることがあります。パーソナリティの偏りによって自分自身が困ったり、周囲が困ったりすると、それをパーソナリティ障害と言います。

神経症(ノイローゼ)は、一時的になるものですが、パーソナリティ障害はパーソナリティの問題ですから、長く続きます。「障害」と名がついているとはいえ、普通の病気とは違います。一目でわかるおかしな人とは限りません。

様々なタイプのパーソナリティ障害がありますが、有能で魅力的な人もいます。先進国の人口の数パーセントが、何らかのパーソナリティ障害でしょう。ある研究者は、人口の15パーセントがパーソナリティ障害だと言っています。

パーソナリティ障害の人々は、こだわりを持ち、生きづらさを感じ、傷つきやすい人と言えるでしょう。心の障害(病気)と聞くと、「全員入院させろ」といった乱暴なことを言う人もいますが、そんなことをしたら、ものすごい人数の人が入院することになります。パーソナリティ障害のほとんどの人は、入院が必要な症状の人ではありません。

どこにでもいる、変わり者(風変わりなクラスターAのパーソナリティ障害)、目立ちたがり(感情的演技的なクラスターBのパーソナリティ障害)、小心者(不安や恐怖心が強いクラスターCのパーソナリティ障害)です。1割前後もパーソナリティ障害者がいるとするなら、「どこにでもいる」と言っても良いでしょう。

パーソナリティ障害は、とても身近な存在なのです。

■パーソナリティ障害が引き起こすトラブル

こんなにたくさんパーソナリティ障害がいるとすれば、その中で病院に行って診断を受けている人はほんのわずかです。私達が知るのは、たとてば事件が発生して精神鑑定の結果が出た時などです。

たとえば、池田小学校乱入事件(2001)の犯人は「妄想性パーソナリティ障害」(クラスターA)でした。

妄想性パーソナリティ障害の人は、人の善意が信じられません。何の根拠もないのに妻や同僚が自分を裏切っているのではないかと疑ってしまいます。パーソナリティ障害が直接犯行原因になるわけではありませんが、パーソナリティ障害のために人生が上手くいかず、それが犯罪の遠因になることはあるでしょう。

境界性パーソナリティ障害(クラスターB)は、トラブルメイカーです。自分が見捨てられるのではないかという強い不安をもっているために、なんとか周囲を自分の味方にしようと常識はずれのことまでしてしまいます。たとえば、ひどいウソをついたり、自殺すると脅したりします。

とてもわがまま、自己中心的な行動で周囲をふりまわしたり、とんでもない要求をおしつけて困らせることもあります。様々な事件やトラブルの背景に、実は境界性パーソナリティ障害の問題が潜んでいることも多いでしょう。

下関駅通り魔事件(1999)の犯人は、犯行前に「回避性パーソナリティ障害」(クラスターC)の診断を受けていました。

回避性パーソナリティ障害の人は、とても自信のない人です。自分の味方だと確信が持てないと、友好関係がつくれません。この事件の犯人は、とても優秀な人だったのですが、そのために仕事が上手くいかず、絶望して犯罪へと向ってしまいました。

■パーソナリティ障害と成功

ユニークな人が、みんな人生に失敗するわけではありません。芸能人、スポーツマン、芸術家、学者、社長などなど、ユニークで周囲に迷惑もかけるけれども、才能豊かな人々もいます。

一つのポイントは、周囲の理解と協力でしょう。ユニークで世間知らずの人が、サポート役に恵まれて成功する話はたくさんあります。パーソナリティの偏り、歪みがなければ、人生はもっとらくだったと思いますが、成功も手に入れていなかったでしょう。

■パーソナリティ障害の人と上手くつきあうために

人間関係を良くするコツは、自分を知り、人を知り、あの手この手が使えることです。パーソナリティ障害の人も、多くは悪意はありません。しかし、うっかりすると、彼らに振り回され、とんでもない目にあってしまいます。

たとえば、境界性パーソナリティの人に振り回されている人はたくさんいます。最初から犠牲者になる人もいれば、援助者になろうとして、結果的に奴隷になってしまう人、共倒れしてしまう人もいます。

「最初はあなたが我慢と努力をかさね、何とか上手くいくかもしれません。しかし、疲れます。あなたが倒れれば、相手も倒れます。境界性パーソナリティーの人を助ける最も良い方法は、「普通の人間関係を長く続ける」です。」(「パーソナリティ障害の人とのつきあい方」:Yahoo!ニュース個人有料「心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法」)

パーソナリティ障害とまではいわなくても、その傾向を持っている人となれば、さらにたくさんいるでしょう。私達自身の中にも、その傾向があるかもしれません。

パーソナリティ障害を理解し、うまくつきあっていくことは、現代の課題と言えるでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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