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日ハム・ボールパーク新駅計画、計画見直しでも90億円!? JR北海道提案プランは異常に高い

鉄道乗蔵鉄道ライター

 プロ野球・日本ハムファイターズの新本拠地「エスコンフィールド北海道」に隣接するJR千歳線に計画されている北海道ボールパーク新駅計画。JR北海道が新駅の総工費を90億円前後に圧縮する方針であることが明らかになり、近く正式に北広島市に提案をするという。

 新球場開業の直前となった2023年2月、JR北海道は建設費の全額を負担する北広島市に対して、新駅の総工費を当初想定の80~90億円のおよそ4割増しとなる「最大で125億円」となることを要求。北広島市は「その金額では合意できない」と回答し、JR北海道に対して計画の見直しを求める事態となっていた。

新たな計画では北広島駅寄りの直線区間に

 地元紙の報道などによると、新たな計画の新駅は、当初計画の曲線区間から北広島駅寄りの直線区間に建設をする方針で、当初は、札幌方面から到着した列車の折り返し運転を行うための引上げ線を新駅に併設する方針だったが、折り返し列車を隣の北広島駅などで待機させる方式に変更。当初は、夜間工事での建設作業を前提としていたものを列車が走っている時間帯に一部の作業を進めることで、人件費の削減や工費の短縮を図るという。

 なお、列車の折り返しを別の駅で行う方法については、元JR東日本社員で交通コンサルタントの阿部等氏が関係者に対して提案活動を行っていた方法に近く、その詳細については2023年4月24日付記事(日ハム球場の新駅は安く2年で作れる 専門家が目からウロコの新提言)で詳しく触れている。

北広島駅寄りの直線区間(筆者撮影)
北広島駅寄りの直線区間(筆者撮影)

それでもJR北海道の計画は高い

 しかし、地元紙の報道によると北広島市内部では「90億円でも高い」との見方が多く、ある幹部は「駅を小さくすれば40億~50億でも作れる」と指摘しているという。

 実際に、近年の国内各地の新駅の建設費と比較してもJR北海道のボールパーク新駅は飛びぬけて高い。当初の「最大で125億円」とされた建設費は、首都圏の新駅建設費に匹敵する金額となっている。例えば、2020年に開業したJR東日本・山手線の高輪ゲートウェイ駅が約192億円、2023年に開業した京葉線の幕張豊砂駅が126億円だった。

 一方で、京阪神や名古屋都市圏の新駅は、前出の北広島市幹部の指摘通り40億円~50億円で建設できており、2019年に開業したJR西日本の梅小路京都西駅が49億円、2012年に名古屋都市圏で開業したJR東海の相見駅は46億円で建設されている。

JR北海道は千歳線の過密ダイヤを主張するも

 JR北海道が「最大で125億円」とした当初の計画では、千歳線が過密ダイヤであることから特急列車や快速列車を通すための通過線や折り返しのための引上げ線が必要であるとし、ボールパーク新駅には大掛かりな設備が必要であると主張していた。最新の千歳線のダイヤでは最も運行本数の多い平日朝8時台では、片道11本の運行があり、これらの列車間隔は平均すると5.4分だ。しかし、首都圏や京阪神の列車間隔を考えると過密ダイヤであるとは言いがたい。

 千歳線には、特別快速、快速、特急、普通、貨物と異なる種別の列車が運行されていることからダイヤが複雑だという主張もあるが、阪神タイガースの本拠地・甲子園球場最寄りの阪神甲子園駅は千歳線よりもはるかに過密で複雑なダイヤで列車が運行されている。

 阪神甲子園駅は平日19時台の大阪・梅田方面は、1時間に20本の列車が設定されており、列車間隔の平均は3分。列車種別も直通特急、快速急行、急行、普通と多岐にわたる。その上、甲子園球場での試合開催時にはさらに多数の臨時列車が運転される。注目すべきは、臨時列車の運転方法で、試合終了時に、大阪・梅田方面に向かう臨時列車は、甲子園駅の折り返し線だけでは待機できる車両数に限界があることから、あらかじめ2.6km離れた西宮駅や10km以上離れた石屋川車庫に待機させておいた車両を試合終了に合わせて、順次、甲子園駅へと送り込んでいる。

 北海道外のこうした事情を知っていれば、確かにJR北海道が主張する設備は過剰で、かつ見直しがされた90億円でも駅の建設費が高いと北広島市幹部が指摘するのも納得だ。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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