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ネットの誹謗中傷は「正面から食らわないようにします」。白石聖が「しょせん他人事」な中島健人のバディ役

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)「しょせん他人事ですから」製作委員会

ネットの炎上やSNSトラブルを変わり者の弁護士が解決していくドラマ『しょせん他人事(ひとごと)ですから~とある弁護士の本音の仕事~』がスタートした。中島健人が演じる主人公のバディとなる駆け出しのパラリーガル役は白石聖。高校時代にデビューして、清楚なヒロインから役幅を広げていき、昨年からドラマに立て続けに出演中だ。7年ぶりの共演となった中島との掛け合いや、ネットの問題について自身が思うことなどを聞いた。

なぜ会ったこともない人にそこまで言われるのか

――『しょせん他人事ですから』は原作マンガを読まれていたそうですが、どういう流れで知ったんですか?

白石 ネットに出ていた広告が気になって、読んでみたんです。「いわれのないガセネタで炎上して誹謗中傷の的になってしまったブロガー主婦。出会った弁護士はネット案件に強いみたいだけど、だいぶ変わり者」という。キャッチーさに惹かれて、そのまま1巻を購入してしまいました(笑)。

――ネットでのトラブルがテーマになっていて、身近な問題だとも感じました?

白石 そうですね。今、ネットのトラブルは誰でも身近にあるものだと思います。私が観てきたリーガルドラマでは、扱う題材が殺人事件とか大きいことが多い印象でした。でも、今回の2話でのヌーヌーというアーティストが虚偽の情報を拡散されて、ファンの人も信じてしまう状況とか、もし自分の身に起きたらと考えたら恐ろしいです。被害者になるだけでなく、情報を鵜呑みにしてリポストしてしまったら、加害者になる可能性もあって。そういう怖さも改めて勉強になっています。

――タレントさんとして、ネットでの誹謗中傷に思うことはありますか?

白石 ありますね。炎上のニュースを見ると、「何で会ったことのない人に、そこまで言われなければいけないんだろう?」とは感じます。それこそ、もっと他人事と考えてくれたらいいのに。ネットを見ているだけで、気分が落ち込むこともあります。

「何か言ってる」くらいで受け流そうと

――自分について何か書かれているのを、目にすることもあります?

白石 出演した作品や雑誌についてリポストするために、エゴサをすると見たりします。私は苦手な言葉はNGワードに入れて、目に入らないようになっていて。それでも見たくないと思ったら、そのままスワイプします。気にしていたらキリがないので。

――適切な対応かと。

白石 「気をつけよう」と思うご意見もいただいても、まっすぐ受け止めすぎて、悲しいことになったりもしますよね。なので、正面から食らわないように、「何か言ってる」くらいで受け流すようにしています。

――最初から流せたんですか? ダメージを受けた経験はないですか?

白石 ダメージを受けたことはあります。でも、私は落ち込むというより、怒りになってくるんです(笑)。それで逆に「頑張ろう」と思えたことが、最初の頃はありました。

迷うくらいなら投稿しないほうがいいかなと

――白石さんはインスタのフォロワー数が22万人います。発信する側として、意識することもありますか?

白石 昔はツイッター(X)は何気ないこと、思ったことを気軽につぶやけるツールだと思っていました。このお仕事を始めてからは、そういうわけにもいかないなと。うまい向き合い方をされているタレントさんもたくさんいて、ファンの方と交流できるのはとてもいいと思うんです。だけど、自分のひと言で傷ついてしまう人もいるかもしれない。誤情報が入っているかもしれない。いろいろ考えているうちに、言わないのが吉かなとなってしまいました。出演作や番組の宣伝はさせていただいても、プライベートに近い発信は怖くなってしまって。

――ちょっとした文章を上げるのに、何回も推敲するという話も聞きます。

白石 私も下書きが何コもあった時期がありました。今は迷うくらいならやめておこうと。その分、インスタでは写真のみで気兼ねなく投稿できるので、いいですね。

法廷までの行程がとんでもなく長くて

――リーガルドラマに馴染みはありました?

白石 はい。私はシリアスな弁護士ものより、ちょっとコミカルで観やすいテンポ感の作品が好きでした。

――『しょせん他人事ですから』でパラリーガルの加賀見灯を演じるに当たって、事前に何か調べたりはしました?

白石 パラリーガルは法廷に入ることはないようですが、裁判の傍聴に行きました。「異議あり!」みたいなことは実際はなくて、淡々と進むと脚本にも出てきていたので、見てみたかったんです。3~4回行って、一般傍聴席にパラリーガルっぽい方も見掛けました。

――弁護士の仕事について、劇中で「何とも華のない仕事」「ほぼ書類仕事」との台詞も出てきますが、イメージと違っていました?

白石 ドラマとかで観ているうえでは、華のある職業と思っていました。実際は本当に書類やパソコンでの作業や、事務的な仕事をたくさんするようです。法廷に行き着くまでに、開示請求だ何だと行程がとんでもなく長いことは、この作品を通じて初めて知りました。

勢いが付いて投げ飛ばしてしまって(笑)

――原作ではマンガチックに、灯が主人公の保田弁護士の首を絞めたり、踏み付けたりする描写もあります。ドラマでそこまではやらないでしょうけど、ネクタイを引っ張るシーンは投げ飛ばす勢いだったとか。

白石 最初からそういうシーンがあって、監督とも「あれはマンガだから」という話をしていました。1回目は台本に書かれていた通り、ネクタイをガッと引っ張って、2回目は腕とかでいいかなということだったんです。でも、中島さんが「画的にはやっぱりネクタイのほうが面白い」と言ってくださって。それなら思い切りやらせてもらうことにしたのですが、投げ飛ばしてしまったのは事故です(笑)。勢いが付いてしまって、まさかあんなことになるとは。あやうく共演NGになるところでした(笑)。

――インパクトのあるシーンにはなったでしょうね。

白石 足も踏み付けています。でも、さすがにヘッドロックはまだしていません(笑)。

感情に引っ張られやすいのは役との共通点

――真面目で仕事熱心な灯は、キャラクターとしては演じやすいですか?

白石 「どうしよう?」と考え込むことはないです。保田先生とわかりやすく正反対なほうが面白いと思うので、そこは意識しています。あと、私は灯みたいにバシバシとツッコんだりはできないのですが、スタッフの方が、灯は瞬時に反応してテンポ感を作っているキャラクターだと教えてくださって。それも気をつけて演じたいと思っています。

――以前「演じる役のコンプレックスを探す」と話されていましたが、今回は?

白石 灯には今後描かれていく過去があるのと、保田先生のスタイルが理解できなくて。コンプレックスとは違うにしても、灯の中の引っ掛かりとして持てていけたら、掛け合いにも厚みが出るのかなと。他人事と割り切れない部分は、ひとつのポイントだと思います。

――灯は相談者に感情移入しがちです。

白石 そこに関しては気持ちがわかります。私もネットで炎上している人を見ると、自分が「あーっ……」となってしまうし、感情に引っ張られやすいタイプなので。灯との共通点です。

第三者の目線だから良い道に導けて

――ただ、白石さんは「良くも悪くも人に興味がない」という発言をされていたこともあります。

白石 そうなんです。そういうところは他人事で、保田先生寄りな部分です。

――他人に立ち入らない、ということですか?

白石 まあ、そうですね。もちろん、仲良くなって、もっと知りたいと思う人もいますけど、基本あまり深入りしないタイプかもしれません。

――保田弁護士が掛け軸にまでしている“他人事”は、白石さんはどう捉えていますか?

白石 私の場合、入り込みすぎると引っ張られがちなので、深入りしたくないというのもあるんです。だから保田先生の考え方は、なるほどと共感もできます。他人事=第三者の目線だからこそ、相談者にとって良い道に導いてあげられると思っていて。それは理に適っていて、見習う部分も多いですね。

――2話で灯がヌーヌーに見せるミーハーさは、白石さんにもありますか?

白石 あります! 最近、K-POPが好きで。頑張ってキラキラしている姿がまぶしくて、応援したくなる気持ちが、25歳にして芽生え始めました(笑)。

――母親目線ですか(笑)。

白石 そうなのかもしれません(笑)。ちょっと前まで推しとか全然いなくて、今だからこそ、ヌーヌーに我を忘れて高ぶる灯に共感できます。

大人になってキモは据わりました

――中島健人さんとは『スカッとジャパン』以来、7年ぶりの共演なんですよね。

白石 7年前は1日だけの撮影で、あまりお話もできませんでした。あのときの中島さんの印象は紳士的で、まさにケンティー。テレビで観たままで、実在していたんだという(笑)。

――「キミのことが好きになった」と言われる後輩役でした。

白石 制服を着ていましたからね(笑)。甘酸っぱい恋愛ものだったのが、7年を経てオフィスで出会って、関係もバディ。ケンティーというより中島健人さんと、また共演させていただけて、ありがたいです。役者を続けていたから、こんなご縁もあったんだと感じます。

――「成長した姿をお見せできるようにしたい」とコメントされていましたが、見せられていますか?

白石 インしてすぐ、中島さんに「身長伸びた?」と聞かれました(笑)。せいぜい数cm伸びたくらいだと思いますが、当時の私は仕事を始めて1年も経ってなくて。今は台本の読み方も役との向き合い方も違いますし、成長は少なからず見せられていると思います。中島さんの中で私のイメージは、ありがたいことに可憐で清楚という感じだったらしくて。今は大人になってキモは据わったかもしれません。

考えるより感情が先行するのは正しいなと

――去年からはほぼ毎クール出演作が続いてますが、女優として新しい扉が開いたような感覚もありますか?

白石 自分的には、頭で考えて芝居をしている部分があったんです。感情が大事なのはもちろんわかっていましたが、この言葉をきっかけに気持ちが動いて涙が出るとか、計算していたり。でも、その通りに行かないこともあって、考えるより感情が先行する。生ものだから、それが正しいんだと、つい最近実感しました。

――『何曜日に生まれたの』の心に傷を負って病院にいるアガサ役では、言葉を発しない中で伝わるものがありました。

白石 演じたことのない役で難しかったです。自分でない人格で精神を保って、本当の自分は抑えられている。架空の病気だから、アガサの精神状態を想像するしかなくて、それを映像で見せるにはどんな動き方をするのか。人間っぽくない不思議な存在でいるにはどうしたらいいか。すごく考えました。

叩いてもホコリはまったく出ないと思います

――8月には26歳の誕生日を迎えますが、最近は美容雑誌での仕事が増えていたり、きれいなお姉さんぶりも見せていますね。

白石 もともと美容は好きなので、美容雑誌で見ていただけるのは嬉しいです。自分でも、そういう現場で新しい情報を知れるので、ありがたくて。

――中島さんが7年前の白石さんに抱いたという「可憐で清楚」というイメージは、多くの人にあったと思います。その印象を保ったまま、大人になったようですね。

白石 自分で言うのもナンですが、私は叩いてもホコリはまったく出ないと思うんです(笑)。清楚なのかはわかりませんが、そう見ていただけてたらいいですね。

かき氷は1年じゅう食べてます

――これから『しょせん他人事ですから』の撮影が佳境に入ると思いますが、個人的な夏のお楽しみもありますか?

白石 夏は季節として好きなんです。誕生日もあって、皆さんから温かいメッセージをいただけたりもするから、楽しみです。

――そろそろ年齢を重ねるのがちょっと……となったりもしませんか?

白石 ないですね。そういう考え方をする自分にはなりたくないです(笑)。

――暑いのもそんなに苦ではなく?

白石 暑いから夏がイヤだなという気持ちにはなりません。

――いいことのほうが多いと?

白石 花火が見られたら嬉しいですね。かき氷は大好きで、夏だけでなく1年じゅう食べています(笑)。

――去年の春の取材では、教習所に通っているとのことでしたが、免許は無事取れたんですか?

白石 取れたのですが、車には全然乗れてなくて。忘れないうちに乗らないと、さすがにちょっとマズいなと思っています(笑)。

芸映提供
芸映提供

Profile

白石聖(しらいし・せい)

1998年8月10日生まれ、神奈川県出身。高2のときにスカウトされて、2016年にデビュー。主な出演作はドラマ『I’’s』、『恐怖新聞』、『しもべえ』、『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』、『新空港占拠』、映画『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』、『胸が鳴るのは君のせい』など。ドラマ『しょせん他人事(ひとごと)ですから~とある弁護士の本音の仕事~』(テレ東ほか)に出演中。2nd写真集を9月6日に発売。

ドラマ8『しょせん他人事(ひとごと)ですから~とある弁護士の本音の仕事~』

テレ東ほか・金曜20:00~

公式HP

(C)「しょせん他人事ですから」製作委員会
(C)「しょせん他人事ですから」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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