Yahoo!ニュース

「サッカーはSBが活躍した方が勝つ」。中盤的になりつつある右SBを日本のストロングポイントにしたい

杉山茂樹スポーツライター
韓国戦のMVPは小池龍太(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 世の中が示す善し悪しの基準について、疑問を抱きたくなる瞬間がある。もちろんサッカー界の話だが、東アジアE1選手権が終了したばかりの現在も、その例外ではない。

 最終戦で韓国に3-0で勝利し、優勝を飾ったことは嬉しい話ではある。しかし、たかが東アジアE1選手権だ。お互いメンバーは国内組。韓国にはJリーグでプレーするプレーも含まれていたので、正確には非欧州組となるが、それぞれこの中から純然たるA代表に入りそうな選手は数名だ。1.8軍クラス同士の戦いに勝利したことを特段、喜ぶ気にはならない。

 だが現状は、喜ぶだけに止まらず、森保采配についての批判まで聞かれなくなっている。W杯本大会を前に、森保一監督が解任される可能性がほぼ消滅したことを意味する東アジアE1選手権の優勝劇だった。

 中国に0-0で引き分けても、韓国に3-0で勝てば批判は止む。韓国に対する日本側のコンプレックスを見てしまった気がする。前回、ハリルホジッチの解任は、東アジアE1選手権で韓国に1-4で敗れたことが引き金になっていた。批判が噴出したことで西野ジャパンが誕生。結果オーライの産物とはいえ、本大会でW杯ベスト16に進出した。韓国戦の敗戦が劇薬になった格好だ。

 2010年南アW杯に臨んだ岡田ジャパンも、W杯イヤーに入って行われた東アジアE1選手権。さらには壮行試合で韓国に1-3、0-2のスコアで連敗した。岡田武史監督解任論が吹き荒れる中、日本代表は南アフリカW杯に向けて旅立っていった。韓国に連敗したことが良薬になったことは、W杯本大会で岡田監督が振った、別人が乗り移ったかのような采配に現れていた。

 他方、否定されることなく、カタールW杯本大会に向かうことになった森保監督。今回の東アジアE1選手の優勝を薬にすることができなかったとは筆者の見立てだ。少なくともメディアの反応を見ているとそう見える。筆者は、この欄でもこれまでに何度も述べてきたことだが、森保監督の「先を見越して戦うことはまだできない。世界の中で日本が勝ち上がろうとした時、1戦1戦フルで戦いながら次に向かっていくことが現実的である」という思考法に、全く賛同したくない。

 選手を毎試合、グラデーションをかけるように漸次的に替えていく術がなければ、W杯本大会は戦えないとは、前回、2018年ロシアW杯を戦った西野ジャパンで得た、こちらの教訓とは、水と油の関係にある考え方だ。改めて欲しい点が多々ある中で、これこそが1番になるが、それさえも望み薄であることが今回、再び明らかになった。

この記事は有料です。
たかがサッカー。されどサッカーのバックナンバーをお申し込みください。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

杉山茂樹の最近の記事