4980人の鹿島スタジアムと64922人の国立競技場にスタジアム論が深化しない日本の現状を見た
川崎フロンターレ対パリサンジェルマン(PSG)戦の舞台となった国立競技場の、その記者席に着席するや、筆者の脳裏には24時間前に観戦した日本代表対香港のスタンド風景が蘇った。
国立競技場と鹿島スタジアムは、同じ競技が行われる舞台には見えなかった。この日、国立競技場を埋めた観衆は64922人。先月行われたブラジル戦の観衆(63638人)を上回る、新しくなった国立競技場の最多入場者を記録したのに対し、香港戦の鹿島スタジアムを訪れた観衆はわずか4980人。日本代表のホーム戦で、観衆がこれしか埋まらなかった試合はいつ以来だろうか。人数制限のない中で行われた試合を除けば、筆者の記憶には存在しない。少なくとも過去半世紀近くは起きていないはずの、まさに大事件に相当した。
今回の東アジアE1選手権の代表メンバーに、森保監督は鹿島アントラーズの選手を1人も招集していない。今回の招集は国内組のみで、26人という通常より多い人数を選んでいるにもかかわらず、Jリーグで現在2位につける名門チームの選手を除外した。不入りの原因が、地元ファンの反感を買った結果と考えるのは自然だ。香港戦を観戦した4980人の中に鹿島ファンは、限りなくゼロに等しかったと思われる。協会の失態と言わずにはいられない。
しかし、それを踏まえても4980人は少ない。森保ジャパンが潜在的に抱える不人気、相手チームの弱さ等々を加味しても、である。
筆者が不入りとして記憶する代表戦は、2010年東アジアE1選手権対香港戦になる。舞台は旧国立競技場で、観衆は16368人。強雨が降りしきる中での試合だった。悪天候の中で行われた弱者相手の一戦に、よくこれだけの観衆が訪れたものだと、逆に感心させられた記憶がある。
鹿島スタジアムが舞台なら、満杯率はもっと低かっただろう。悪天候の中、今回同様、鹿島の選手が誰も招集されず、その結果、地元ファンが訪れなければ、観衆はせいぜい2、3千人程度だったのではないか。反対に、香港戦が国立競技場で行われていれば30000人は固かっただろう。
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