<東京で「食べログ」点数が最高な街はどこか>を疑う
食べログで高得点の街
どこがグルメな街だと思いますか。
<東京で「食べログ」点数が最高な街はどこか>という記事で、食べログの点数を集計することによって、グルメな街を導き出していました。
対象としたのは、食べログのトップページにある「注目エリア」内の東京都内であり(PCページ専用)、1ページ20店鋪で最大ページ数は60ページとなっているので、1200店までしか集計できないと説明されています。
そして、集計した結果は以下の通り。
- 1. 六本木エリア
- 2. 銀座エリア
- 3. 上野エリア
- 4. 東京エリア
- 5. 飯田橋エリア
- 5. 新宿エリア(飯田橋と同点)
- 7. 新橋エリア
前述記事における集計方法や分析結果に関して、以下の通り疑問点があるので、それについて述べます。
- どの1200店なのか
- とのランキングなのか
- 1つ目のジャンルだけでよいのか
- イタリアンは六本木エリアに注目なのか
- 1万円を超える店の割合は、銀座エリアは六本木エリアに比べて低いのか
- 銀座の1000円未満は、カフェが多いのか
どの1200店なのか
食べログは最大ページ数が60ページという仕様なので、全部で1200店までしか集計できないのは仕方がありません。
しかし、この集計した1200店とは、どの1200店なのでしょうか。
食べログでは、以下の通り並べ替えられますが、どの順番で並び替えたかによって、集計結果は大きく変わります。
- 標準(会員店舗優先)
- ランキング
- 口コミ数
- ニューオープン
対象エリアの全店数は以下の通りで、多くのエリアが1200店を超えています。
選択した並び順によって、60ページに含まれる1200店が変わってくるので、集計結果も大きく変動することでしょう。
- 上野エリア 6721店
- 新宿エリア 5295店
- 六本木エリア 3669店
- 渋谷エリア 3090店
- 池袋エリア 3077店
- 東京エリア 2998店
- 新橋エリア 2831店
- 銀座エリア 2740店
- 浅草エリア 1980店
- 吉祥寺エリア 1452店
- 恵比寿エリア 1428店
- 麻布十番エリア 656店
- 表参道エリア 594店
デフォルトでは「標準(会員店舗優先)」なので、意図して変更しないと他の並び順になりません。恐らく、前述記事の趣旨的には「ランキング」で並び替えているとは思いますが、明示されていないので気になるところです。
どの店が対象の1200店となるかは、非常に大切なところなので、ここは明示しておかなければならない前提ではないでしょうか。
どのランキングなのか
先の問題と並んで気になることがあります。それは、たとえ「ランキング」で並び替えていたとしても、以下のように様々なランキングがあるので、どれを選んだのか、ということです。
- 総合ランキング
- 夜のランキング
- 昼のランキング
- 料理・味
- サービス
- 雰囲気
- CP
- 酒・ドリンク
前述記事の主旨を鑑みると、「総合ランキング」が最も相応しいでしょう。「総合ランキング」がデフォルトになっているので、もしも明示的に選択していなくても特に問題はありません。
ただ、「総合ランキング」で算出した場合でも気になるところはあります。それは「総合ランキング」が昼と夜の点数を合わせた点数になっていることです。
食べログでは、「夜のランキング」と「昼のランキング」ではかなり店の顔ぶれが異なるものです。
したがって、「総合ランキング」で算出した結果をもとにしているにも関わらず、その点数で昼も夜も語っているのであれば、議論が雑であると考えられます。
昼は昼で、夜は夜で点数を集計した上で考察しなければ、それぞれの街の特徴は分析できないでしょう。
1つ目のジャンルだけでよいのか
「複数のジャンルを掲載している場合、最初に表示しているものを優先した」と記載されていますが、これでは足りないと思います。
何故ならば、レビュアーや店舗が店を登録したり修正したりする時に、自由な順番でジャンルを登録できるようになっているので、どれが1番目のジャンルとして登録されるかは、バラバラになりがちだからです。
例えば、フレンチの下にはフレンチ(上の階層と同じジャンル名)、モダンフレンチ、ビストロがあり、これらは一緒に登録されている場合が多いですが、どれを1番目にするかは記入者に依存してしまいます。
また、和食の下は非常に細かく分かれており、洋食・西洋料理」「中華料理」などに比べると2倍以上のジャンル数となっています。その一方で、イタリアンの下にはイタリアン(上野階層と同じジャンル名)だけしかありません。
こういった状況では和食やフレンチは、イタリアンに比べてずっと店舗が分散し易くなるのではないでしょうか。
従って、ジャンルを集計するのだあれば、1つ目だけではなく、しっかり3つ(登録できるジャンル数は1つから3つのうち任意)とも集計する必要があります。
イタリアンは六本木エリアに注目なのか
六本木エリアがトップであり、かつ、六本木エリアの中でイタリアンが最も多いジャンルであることから、「評価の高いイタリアンを食べるならば、六本木をチェックすることが不可欠だと言えそうだ」と記載されていますが、これも解せません。
六本木エリアには広尾や麻布十番などイタリアンの名店が多いエリアも含まれているので、六本木エリアは評価の多いイタリアンが多くなっていることは事実です。しかしこれは、六本木エリアがトップであり、かつ、六本木エリアのジャンルではイタリアンが最も数が多いことから導き出されている結論ではありません。
従ってやはり、エリア別にイタリアンの点数を算出して、六本木エリアと他のエリアを比べてみる必要があります。
1万円を超える店の割合は、銀座は六本木に比べて低いのか
1万円を超えるような高級店の割合が、銀座エリアは六本木エリアよりも低いのでリーズナブルと記載されています。
確かに六本木エリアにはファインダイニングがたくさんあり、値段も高いです。しかし、私の直感からすると、銀座エリアにあるレストランの値段は六本木エリアにあるレストランと同等以上の印象を持っています。
従って、食べログで値段を指定して検索し、店舗数を調べてみました。先に紹介して店鋪数で割り、以下の通り割合を算出してみました。
- 六本木エリア 昼
1万円以上 42店舗
割合 42/3669=1.14%
- 六本木エリア 夜
1万円以上 494店舗
割合 494/3669=13.46%
- 銀座エリア 昼
1万円以上 53店舗
割合 53/2740=1.93%
- 銀座エリア 夜
1万円以上 380店舗
割合 380/2740=13.87%
すると、どうでしょうか。
六本木エリアと銀座エリアでは、昼も夜も割合はほとんど変わりません。「1万円を超える店の割合は、六本木エリアに比べて低い」とはどういう計算をしたのでしょうか。
また、「1万円を超える店の割合は、六本木に比べて低い」が正しいとしても、1万円を超える店の数を比較するのではなく、客単価の平均を算出して全体を俯瞰してみなければ、リーズナブルであるとは言えないと思います。
銀座の1000円未満は、カフェが多いのか
最後の気になった点はこちらです。
フレンチ、イタリアン、日本料理、中華料理などファインダイニングとなりうるジャンルでは、そもそも1000円未満の店が少ないです。
その一方で、どんなに高級なスイーツであってもプティガトーであればまず1000円未満ですし、ホテルでなければカフェや喫茶店では通常1000円もしません。
そういった意味では、1000円未満のジャンルでカフェ、喫茶店が多くなるのは、銀座エリアに限らずどこでも同じです。
また、「銀座はショッピングの街」とありますが、2016年度における百貨店の売上では、「伊勢丹新宿店」が1位、「西武池袋店」が3位、「三越銀座店」は17位となっています。もちろん、銀座エリアには百貨店だけではなくブランドの旗艦店も多いので、ショッピングの街であることは否定しません。
しかし、銀座だけがショッピングの街ではないので、銀座ならではの特徴としてショッピングとカフェや喫茶などを結び付けることはできないでしょう。
他には、「1000円未満の客単価の店」ではカフェ、喫茶、ケーキ、チョコレート(前述記事ではケーキ店、チョコレート店とありますが、食べログのジャンルではケーキ、チョコレート)が目立つと述べている一方で、「銀座価格なので1000円台」と補足しているのは矛盾です。
それ以外で気になる点
集計方法や分析についてではありませんが、他にも気になったところがあります。
「食事をした人が「星」の数による0.1刻みの点数による評価と200字以上の感想を記したテキストによって訪れた店をレビューし」と記載されていますが、200文字未満でもレビューを投稿することは可能です。
ただ、レビュアーページには口コミが表示されますが、店のページには口コミが表示されなかったり、点数が反映されなかったりと制限があります。
指摘を通して伝えたいこと
ここまで気になる点をみてきましたが、私は単に腑に落ちないところを指摘したかっただけではありません。これらの指摘を通して伝えたいことがあるのです。
前述記事の冒頭でこのように記されている通り、今日では、食べログは店の集客や売上を左右する大きな存在となっています。
だからこそ、<文春の報道から食べログの有名レビュアーの全レビュー削除へ至った件で、みなさんに理解してもらいたいこと>で触れたような問題も起きました。
食べログは大きな影響力があるだけに、食べログを通してグルメを語る時には、レストラン情報や口コミや点数などの蓄積された膨大なデータとそれらが複雑に関係し合った様々な機能に対して、細心の注意を払いながら、慎重に議論を展開していかねばならないと私は思うのです。