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なぜレアルはベンゼマの“代役”を獲得しなかったのか?ハーランド、D・ヌニェス…ビッグクラブの算段

森田泰史スポーツライター
ゴールを喜ぶマドリーの選手たち(写真:ロイター/アフロ)

王者の新たな挑戦が、始まった。

レアル・マドリーは、リーガエスパニョーラ開幕から、好調を維持している。3戦全勝で首位をキープ。連覇を目指して、前進している。

エスパニョール戦で決勝点のベンゼマ
エスパニョール戦で決勝点のベンゼマ写真:ロイター/アフロ

今夏、マドリーは、オウリエン・チュアメニ(移籍金8000万ユーロ/約112億円)、アントニオ・リュディガー(フリートランスファー)を獲得した。最終ラインと中盤の補強を行い、戦力を整えた。

一方、前線の補強はなかった。ルカ・ヨヴィッチ(フィオレンティーナ)、ボルハ・マジョラル(ヘタフェ)、そしてカンテラーノのフアンミ・ラタサ(ヘタフェ/レンタル)が放出されたが、カリム・ベンゼマの代役は獲得されなかった。

■ストライカーへの渇望

この夏、欧州のビッグクラブはこぞってストライカーを獲得している。

アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ/契約解除金6000万ユーロ/約84億円)、ダルウィン・ヌニェス(リヴァプール/移籍金7500万ユーロ/約105億円)、ロベルト・レヴァンドフスキ(バルセロナ/移籍金4500万ユーロ/約63億円)、ガブリエル・ジェズス(アーセナル/移籍金5200万ユーロ/約72億円)、ロメル・ルカク(インテル/レンタル)…。多くのクラブがゴールスコアラーを確保した。

シティに移籍したハーランド
シティに移籍したハーランド写真:ロイター/アフロ

だがマドリーは動かなかった。資金がなかったわけではない。不要だという判断があっただけだ。

リヴァプールに移籍したD・ヌニェス
リヴァプールに移籍したD・ヌニェス写真:ロイター/アフロ

■攻撃の軸

昨季、マドリーはリーガとチャンピオンズリーグで優勝して2冠を達成した。攻撃の中心にいたのは、ベンゼマ(公式戦46試合44得点15アシスト)とヴィニシウス・ジュニオール(52試合22得点20アシスト)だった。

だが今季はカタール・ワールドカップを控えている。ベンゼマ、ヴィニシウス 、共に昨季以上に疲労が溜まるシーズンになるだろう。とりわけ、34歳のベンゼマにとっては、過密日程でフィジカルコンディションを保つ難しさがある。

カルロ・アンチェロッティ監督に考えがないわけではない。昨季、またプレシーズンで、アンチェロッティ監督はゼロトップを試してきた。エデン・アザール、マルコ・アセンシオ、ロドリゴ・ゴエス、ルカ・モドリッチ、イスコらがそのポジションで起用された。

今季に関して言えば、期待が懸かるのはアザールだ。

アザールは2019年夏にチェルシーからマドリーに移籍した。2018−19シーズンには、チェルシーで21得点をマークしている。元々、ドリブラーで、ゴールよりチャンスメイクに喜びを感じるタイプだ。だがアンチェロッティ監督はアザールを3トップの中央に据え、ベンゼマの代役として使うアイデアを認(したた)めている。

アザールとベンゼマ
アザールとベンゼマ写真:ロイター/アフロ

「ベンゼマは最も重要な選手だ。現時点、世界で最も効果的なプレーをする選手だと思う。我々のチャンピオンズリーグの優勝において、ベンゼマは大きな働きをした。決勝でのゴールこそなかったが、我々がファイナルに進めたのは彼のおかげだ」

「ベンゼマはチームのリーダーだ。昨シーズンを良い形で締めくくった。そして、今年、バロンドールの獲得に向かっている。彼の獲得に疑義を挟む者はいないはずだ」

これはアンチェロッティ監督のコメントだ。

攻撃の中心であるヴィニシウス
攻撃の中心であるヴィニシウス写真:ロイター/アフロ

刷新か、再生かーー。マドリーが選んだのは後者だろう。

そう、彼らは現ヨーロッパチャンピオンだ。ゆえに選択の余地があったと言える。ベンゼマの代役を獲得しなかった判断の是非は、今季の結果で測られることになる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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