なぜエムバペのレアル移籍の噂は絶えないのか?ベリンガムの覚醒…不要と必要の狭間で。
冬のマーケットが閉幕した。
レアル・マドリーは補強を行わなかった。前線、中盤、守備陣、加入選手はおらず、カルロ・アンチェロッティ監督は現在の陣容で今シーズンを戦い抜く運びとなっている。
キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、アントニオ・シウバ(ベンフィカ)、ゴンサロ・イナシオ(スポルティング)…。複数候補は挙げられていたが、最終的に選手の獲得は見送られた。
■エムバペとの紐付け
マーケットが開くたび、紐付けられるのはマドリーとエムバペの関係だ。
ドイツ『ビルト』やスペイン『アス』では、エムバペがマドリー移籍を決断したと報じられた。年俸7000万ユーロ(約105億円)、2029年夏までの契約で、半年後の移籍に迫っていることが伝えられた。
「どこかのタイミングで退団する時はくる。僕は変化を恐れない。ただ、自分のキャリアを築いて、自分の道を進んでいきたい」とは『GQ』のインタビューにおけるエムバペの言葉だ。
エムバペの移籍の噂は絶えない。だが一方で、マドリーは異なる事情を抱えていた。
■マドリーの事情
マドリーは今季序盤、GKティボ・クルトワ、エデル・ミリトンがひざの負傷で長期離脱を強いられた。さらに、昨年12月のビジャレアル戦でダビド・アラバが負傷して、正守護神と主力のセンターバックが不在になった。
そこで、A・シウバやイナシオを獲得する可能性が検討された。結果的に、CBの到着はなかった。しかしながら、エムバペ以上に重要な案件が、マドリーにあったのは確かだ。
マドリーは今季、システムチェンジを断行した。アンチェロッティ監督は従来の【4−3―3】をやめて、【4−4―2】を選択。新たな試みに打って出た。
布陣変更が行われ、躍動したのがジュード・ベリンガムである。
今夏、移籍金1億500万ユーロ(約151億円)でボルシア・ドルトムントからマドリーに移籍したベリンガムだが、シーズン前半戦、17試合で13得点をマークした。
アンチェロッティ監督は、ベリンガムをトップ下に配置した。そして、そのシステムは機能した。だがアンチェロッティ監督はそこで満足しなかった。守備の改善を求め、少しずつ、チームを梃入れした。
ディフェンスの際、マドリーはベリンガムを左MFに据え、トニ・クロース、フェデリコ・バルベルデでダブルボランチを組ませるようにした。【4−4−2】中盤フラット型のシステムを駆使して、安定感を得たのだ。
また前述の“CB問題“においても、アンチェロッティ監督が手腕を発揮した。オウレリアン・チュアメニを偽CBで起用し、ナチョ・フェルナンデス、アントニオ・リュディガーの負担を減らした。
■無冠の可能性と補強
今季のマドリーのここまでの戦いぶりを見て、一番の功労者はアンチェロッティ監督かも知れない。マドリーはそこを理解しており、先日、アンチェロッティ監督と2026年夏までの契約延長を行っている。
とはいえ、マドリーは、マドリーだ。世界最高峰の選手を連れてくるのは、このクラブの宿命でもある。
「エムバペはセンターフォワードの選手ではない。サイドでのプレーを好む選手だ。マドリーの左サイドには、ヴィニシウス (・ジュニオール)がいる」とはファビオ・カペッロ氏の弁だ。
「だがエムバペはエムバペだ! マドリーの補強を考えた時、現在のスカッドにセンターフォワードの選手がいるかを問わなければいけない。該当する選手はいない。そこが欠けているんだ。テクニック面を考慮すると、エムバペの方が(アーリング・)ハーランドより上だと思う」
マドリーは今季、充実のシーズンを送っている。チャンピオンズリーグで、グループステージ6戦全勝。リーガエスパニョーラでは首位を走っている。“難癖”をつけるとすれば、先のコパ・デル・レイで、アトレティコ・マドリーに敗れてベスト16敗退が決定している。
ここまでは順調、しかし一方で無冠の可能性もある。テンポラーダ・エン・ブランコーー。白紙のシーズンになった時、再びエムバペの移籍報道が加熱するかも知れない。