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任天堂の通期決算 当初予想「3期連続の減収減益」→結果「増収増益」 なぜ?

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:アフロ)

 任天堂の2024年3月期通期連結決算が発表され、売上高は約1兆6718億円(前年度比4.4%増)、本業のもうけを示す営業利益は約5289億円(前年度比4.9%増)で、まさかの増収増益でした。

 ゲームビジネスは、新しいゲーム機の販売から4年目前後で業績のピークを迎え、その後はフェードアウトするもの。ニンテンドースイッチの業績的なピークは、3年前(2021年3月期)に迎えています。

 実際、任天堂が昨年度に発表した2024年3月期の決算予想ですが、売上高が1兆4500億円(前年度比9.5%減)、営業利益が4500億円(同10.8%減)でした。それなりの落ち込みを予想しており、要するに「3期連続の減収減益」となるはずが、まったく違う結果になりました。もちろん、歓迎すべきことではあるのですが、もう少し掘り下げていきます。

 ニンテンドースイッチの売れ行きは、もちろん減少しているものの、決算のさまざまな数字を見ても、かなり緩やかに推移していることが分かります。特にソフトの落ち込みが少なく、数年前の人気作でもロングテールで売れています。もちろん新作では「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」だけで2000万本以上を売る大ヒットとなったことも大きいのですが、全体で押しとどめています。

 そこに円安の“後押し”があり、業績面でプラスに働きました。前年度の業績の落ち込みを極限まで支えたことが、結果として「増収増益」になったわけです。

 任天堂の決算説明資料でも、為替のプラスの影響に触れています。売上高では前期比で944億円のプラス、営業利益での為替の影響額は、約350億円のプラスだそうです。企業規模が大きいのもありますが、とんでもない額ですね。

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 ですが逆に、円安効果を割り引く考えもあります。実質はスイッチの売れ行きがピークを過ぎて減少している事実はそのままで、減収減益のようなもの……と考えることもできるのです。それでも、ピークを迎えたゲーム機の売れ行きの減少を抑え込み、ここまで持続できたのは、見事というほかありません。

 しかし、ニンテンドースイッチの後継機についてのアナウンスを今期中(2025年3月まで)にすると発表したために、メディアもゲームファンの目も全部そちらに行き、決算の話題は吹き飛んでしまいました。

 ともあれ、後々に振り返ったとき、ニンテンドースイッチのピークを迎えた後の手法は、経営の視点で学ぶべき点がありそうです。つい新作ゲームばかりに目がいきますが、これだけ多くのソフトがあるのですから、より効果的な活用方法を模索したいところです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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