「舞いあがれ!」悠人の金の置物が再登場。価値は舞いあがっているのか
悠人の金の置物が岩倉家にまだあった。あれは価値が上がっているの?と制作統括・熊野律時チーフ・プロデューサーに聞くと「ご想像にお任せしますが、価値が上がっても、大切に持っているのだと思います」とのこと。それはともかく、朝ドラこと連続テレビ小説「舞いあがれ!」(NHK総合)もあと7回。
「いよいよ空飛ぶクルマに舞(福原遥)が関わっていく週で、刈谷(高杉真宙)と玉本(細川岳)と再会し、共にもう一度、空に挑みます」
熊野CPの声もいつも以上に弾んで聞こえた。
刈谷にはモデルがいた
最終週直前、大学の人力飛行機サークルなにわバードマンの仲間たちが集まってくる。
熊野「かつて空を飛ぶ夢を共有した仲間たちが、別の人生を歩んだ末、ひとりまたひとりと、
もう一度集まってくる。一旦は違う道を行ったとはいえ、空を目指す思いを今も変わらず持っている者たちの再会は、このドラマのやりたいことーーみんなの力を結集して物事に当たるーーの根幹に直結しています」
熊野CPの言うように、こういう展開はエンタメとしてわくわくする。
空飛ぶクルマも、なにわバードマンOB再集結も、すべてが最初から計画、準備されていたものだった。
熊野「まず空飛ぶヒロイン舞を描き、リーマンショックによって東大阪で工場の再建に取り組むことになった舞が最終的にどこへ向かうか考えて、ものづくりと空を飛ぶことを合体させられたらいいねという話になりました。桑原亮子さんが、いま、空飛ぶクルマが開発中だから、ものづくりとそれを合体させるといいのではないかとアイデアを出して、全体の構成が出来上がりました」
人力飛行機、航空機、空飛ぶクルマ……と専門的な分野の取材を同時に行って脚本づくりが行われた。とくに空飛ぶクルマはまさにいま実用に向けて開発中のもので、熊野CP は「国産ジェットが行き詰まっている一方で、新たな空飛ぶクルマの開発が進んでいることは興味深いと思いました」と語る。
熊野「何十年も前から、これまで漫画やSFで描かれてきた空飛ぶクルマですが、現実では一向に実現してこなかった。今、開発している人達は、できないはずはないから自分たちの手で作ってみようと思ったそうです。空飛ぶクルマを実際に見たいという、すごく素朴でシンプルな思いからはじめている。難しいと思わないのか?と質問したら、時間はかかるとは思うが、必ずできる、と言い切っていて、それだけ確信を持っていることがすごいと感じました」
取材した空飛ぶクルマの開発には、学歴、性別、経歴関係なく、航空機づくりとは関係ない分野からきた人も参加しているという。
熊野「ほんとうに自分たちが見たいものをつくる意欲と実力がある人たちが集まってくる状況が、舞や刈谷たちの思いが、多くの人を巻き込んでいくことと重なると感じました。
空を飛ぶことは、人と人やものづくりの技術の結集です。みんなの力を集めたら、空さえ飛べる。コロナ禍で人に会えない、外国にも行けないようになったとき、人間の可能性、明るい希望をもう一度信じたい。『舞いあがれ!』はそういう構想からはじまりました。五島という離島を舞台のひとつにしたのもそれが理由です」
刈谷のキャラも空飛ぶクルマの取材で出会った人たちをモデルにして造形したそうだ。
熊野「刈谷のキャラは実際に開発に取り組んでいる方たちを参考にしているんです。ある種のロマンチストの面と、理系のエンジニアの面があり、まっすぐ熱く夢を語る人たちに取材でお話を聞く中で、人力飛行機編に登場し、のちに舞と再会する刈谷は、きっとこういう人なんだなと思ってキャラを作りました」
タイトルバックのクレジットには、空飛ぶクルマ開発部分・原案として、福澤知浩さんと中井佑さんの名前がある。両者とも空飛ぶクルマの開発をそれぞれ行っている方々だ。この方たちや、JAXAや、取材した多くの人たちの情熱やクールな頭脳の実例が、刈谷を形作ったのであろうか。だからこそ、刈谷の言動はなにわバードマン編のときから、高杉真宙の演技も含め、ひときわ説得力があった。
ドラマに出てくる大型ドローンも開発途上のものをベースにアレンジを加えたものだという。
制作統括、あのドラマを見ていた
ちなみに、某民放で、この3月、主人公がパイロットを目指すドラマをやっていたことを知っているかと熊野CPに聞いてみた。
熊野「見ました。おもしろいなって。すごい豪華版のダンボール製のシミュレーターが出てきてこれはすごいと思いました(笑)」
連続テレビ小説「舞いあがれ!」
総合:月~土 午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00 ※土曜は1週間の振り返り
BSプレミアム・BS4K:月~金 7:30〜7:45
出演: 福原遥、横山裕、赤楚衛二、山下美月、高杉真宙、山口紗弥加、細川岳、山口智充、くわばたりえ/永作博美、高畑淳子
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太