AIどうしが音声で対話するという無駄な状況を排除する特許について
「AI同士の音声対話を検知したら、デジタルデータ通信へ切り替える技術--特許出願」というニュースがありました。出願人は、米国のクレジットカードを中心とした金融サービス会社のCredit One Service社です。発明の名称は、「ARRANGEMENTS FOR DETECTING BI-DIRECTIONAL ARTIFICIAL INTELLIGENCE (AI) VOICE COMMUNICATIONS AND NEGOTIATING DIRECT DIGITAL COMMUNICATIONS」(AIによる双方向の音声通信を検知し、直接的なデジタル通信のネゴシエーションを行なうための手順(栗原訳))です。
AI が人間に対して合成音声で応答するサービスは既に一般的になっています。一方、AIが音声合成で人間に電話をかけるサービスも一般的になりつつあります。今後、電話でAIどうしが音声で話し合うという状況も生じ得ます(もう生じているかもしれません)。そういう状況では、情報を音声合成して、相手側に送り、それを音声認識してなんてことを行なうのは無駄なので、通常のデータ通信に切り替える(たとえば、出前の注文であればメニューのコードと数量のデータをWebAPIで入力させればよいでしょう)という発明です。「その発想はなかったわ」的な良い発明だと思います。
さて、この特許出願、上記記事では「公開」となっているのですが、実は、もう審査が完了して権利化されています。審査のステップは、特許査定→特許料支払→特許登録→USPTO(米国特許商標局)のサイトに載る→Google Patent等の外部サイトに載る、と進んでいくので、特許査定が出てからネットでサーチ可能になるまでは多少時間がかかるのですが、この出願については、9月2日時点で上記の「特許登録」の段階まで行っています。特許番号は10785314号です。
では、最終的にどのような範囲で権利化されたのかを見ていくことにしましょう(USPTOの審査経過検索サービスPAIRを使うとわかります)。一般に、目の付け所が素晴らしい発明でも、審査過程で新規性・進歩性を維持するために限定を行なっていくことで、権利範囲が狭く、価値が低い特許になってしまうことはよくあります。この特許の場合はどうでしょうか?
この特許の請求項1(特許化されたバージョン)は以下のとおりです。
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