健康保険料は増え続ける!健保組合22年度9400億円の赤字試算から考察
共同通信の報道によると、大企業の社員がメインで加入する健康保険組合の全国組織である健康保険組合連合会は新型コロナによって、2021年度は全体で6700億円、22年度は9400億円の赤字になるようです。20年度の保険料を平均9.2%で維持した場合、22年度に収支を均衡させるには10.5%に引き上げる必要があるということです。企業業績が悪化して従業員の賃金が低下し、保険料収入も減少することが要因です。
このコラムでも度々給与明細のカラクリについてお伝えしておりますが、健康保険料等の社会保険料の計算の基礎となる標準報酬月額は、4月から6月の給与(手当等を含む)をもとに計算します。そのため、4月から6月の残業(残業手当)が大きく影響します。よく専門家は「4月5月6月(残業手当の支給月が翌月の場合は3月4月5月)の残業には気をつけて」と言うのはこのためです。
おそらく、今回コロナによる緊急事態宣言の影響で4月から6月の給与や残業が減るなど報酬低下の影響もあって健康保険料の財源が十分に確保できなかったことが予測されます。コロナの影響であれば一時的に思われるかもしれません。しかし、医療費や介護費に関しては少子高齢化という構造的な問題を抱えています。
全国組織、中小企業などに勤める人向けの協会けんぽの保険料率の変遷を見ると、健康保険料は上がり続けています。昭和22年度に3.6%だった保険料は令和2年度には健康保険料10%に加えて介護保険料が1.79%へ。人口構成をもろに受ける制度だからです。また、高齢化の山はこれからピークに向かうために、今後も保険料は上がり続けることが予想されます。
資料3-1 社会保障の給付と負担等について - 内閣府からも日本の財政赤字の要因である社会保障給付の内訳でも医療の負担が非常に大きいということが分かります。
健康保険料は給与天引きのために上昇しても気づきにくいです。給与明細にしっかりと目を通すようにしましょう。 労使折半なので半分は企業負担ですが、この分が報酬としてもらえていたはずだと考えると非常に大きな負担となることが分かります。企業負担も含めると天引きされている保険料の2倍の健康保険料がかかっていると考えることができるからです。
給与明細は基本「勤怠」「支給」「控除」の3つで構成されています。そのうち、控除は「税金」と「社会保険料」など基本給と手当など報酬から控除になります、
額面と手取りの差額の正体は「控除」なのです。特に社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料率)は高額になります。厚生年金保険料率に関しては平成29年9月を最後に引上げが終了し、18.3%で固定されています。自己負担分は9.15%です。
厚生年金保険料とともに引かれている金額が多いのが健康保険料です。厚生年金保険料は将来年金としてもらえる予定ですが、健康保険料や介護保険料は掛け捨てです。仕事が忙しくてあまり病院に行かない若年層にとっては高い保険料を払っているのにもったいないことになってしまいます。
毎月給与明細をしっかりと見ることによって、引かれている「控除」の正体に気づき、若年層も政治に参加をするなどして声を大に上げることが大切なのかもしれません。また、具合が悪ければ病院に行く、健康保険組合の福利厚生などを利用して掛け捨ての健康保険を活用する工夫も必要です。