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SOバレットらオールブラックス経験者が15人!今年のラグビーTLは世界的スター選手が集結

斉藤健仁スポーツライター
オールブラックスSOバレットがサントリーを優勝に導けるか(撮影:斉藤健仁)

コロナ禍の影響で開幕が約1ヶ月延期されたが、いよいよ2月20日(土)からラグビーのトップリーグ(TL)が始まる。来年から新リーグが始まるため、現在の形では最後のシーズンを迎える。16チームがホワイトとレッドのカンファレンスに分かれて総当たり戦を行い、その後、下部リーグ上位4チームも加えて20チームのプレーオフトーナメントを戦い、5月23日(日)に優勝が決まる。

そんな中、各チームの監督や選手たちは「今年のトップリーグは競争が激しい」と口を揃える。それもそのはず、2015年や2019年ワールドカップ(W杯)で活躍した日本代表選手が各チームに在籍するだけでなく、多くの世界的スター選手が各チームに加入したことでリーグのレベルを上げている。

◇オールブラックス経験者は最多の15人在籍!

かねてより日本のトップリーグは南半球の強豪国との関わりが深い。トップリーグで、一番多く強豪チームで代表経験者が多いのは、やはり「オールブラックス」こと「ラグビー王国」ニュージーランド代表の選手たちだ。オールブラックスキャップホルダーだけで15人おり、2019年W杯出場選手だけで6人いる。

もっとも注目されているのが王座奪還を狙うサントリーサンゴリアスに加入したバリバリの現役オールブラックスのSOボーデン・バレットだ。2015年ワールドカップの優勝に貢献、2016年はハリケーンズのスーパーラグビー初優勝に寄与し、2016年、2017年には世界最優秀選手賞も受賞、2019年ワールドカップでも活躍した。

バレット同様に、ニュージーランド協会の許可を得て1~2年海外でプレーする「サバティカル(長期休暇)」の制度を利用して、神戸製鋼で2年目のプレーとなるのが81キャップLOブロディ・レタリックだ。レタリックも2014年に最年少で世界最優秀選手賞を受賞している。NTTドコモに加入した69キャップを誇り、「ハカ」のリーダーでも知られるSHのTJ・ペレナラも「サバティカル」を利用しての来日となった。

つまりバレット、レタリック、ペレナラの3人は今年が終われば、ニュージーランド協会との契約が残っているためNZに戻り、再びオールブラックスで2023年W杯を目指すことになろう。

ほかにも2019年W杯の主将だったNO8キアラン・リードは昨年度からトヨタ自動車でプレーし、2015年W杯の優勝に貢献した万能BKのベン・スミスとSOアーロン・クルーデンの2人が神戸製鋼に、クルセイダーズでも活躍していたCTBライアン・クロッティがクボタに加入している。こうした選手は代表を引退しての来日となっている。

◇豪州代表主将のFLフーパーがトヨタ自動車に加入!

次にトップリーグで多かった海外の代表選手は「ワラビーズ」ことオーストラリア(豪州)代表で、合計8人で2019年W杯の代表メンバーは4人だ。

SOバーナード・フォーリー(クボタ)、SOクリスチャン・リアリーファノ(NTTコミュニケーションズ)、CTBサム・ケレヴィ(サントリー)は中心選手として活躍していた実力者だ。さらに世界のラグビーファンを驚かせたのがオーストラリア代表105キャップを誇る「ジャッカル」の名手FLマイケル・フーパーのトヨタ自動車入りだった。

ワラビーズ105キャップのFLフーパー。トヨタ自動車でも得意のジャッカルが見られそうだ(撮影:斉藤健仁)
ワラビーズ105キャップのFLフーパー。トヨタ自動車でも得意のジャッカルが見られそうだ(撮影:斉藤健仁)

ワラビーズのキャプテンも務める29歳のFLマイケル・フーパーは、NZ代表選手よろしく、「サバティカル」制度を利用しての来日となった。海外の報道によると、コロナ禍でオーストラリア協会がフーパーに支払う1億5000万円を支払うことができず、フーパーはオーストラリア協会との契約を維持したまま海外でのプレーを模索し、「最初にコンタクトを取ってくれた」トヨタ自動車への加入となった。

トヨタ自動車にはライバルとしてしのぎを削ったオールブラックスのNO8リードや指揮官だったスティーブ・ハンセン(現ディレクターオブラグビー)がいたことも彼の背中を押した。

◇19年W杯で優勝の南アフリカ代表メンバーは6人がプレー

3番目にトップリーグで多かった強豪国の選手は2019年W杯で優勝した「スプリングボクス」こと南アフリカ代表選手で、7人がトップリーグでプレーしており、W杯優勝メンバーは6人もいる。

NTTドコモに加入したWTBマカゾレ・マピンピはエースとして2019年W杯で躍動し、昨年から日本でプレーする33キャップのHOマルコム・マークス(クボタ)は世界最高峰のHOのひとりだ。トヨタ自動車の61キャップFBウィリー・ルルーはスキル、ラン、判断力に長け、ハイボールキャッチも上手い世界トップレベルのバックスリーだ。

2019年W杯優勝メンバーのひとり「スプリングボクス」のHOマークス。昨年はNTTコム、今年はクボタでプレーする(撮影:斉藤健仁)
2019年W杯優勝メンバーのひとり「スプリングボクス」のHOマークス。昨年はNTTコム、今年はクボタでプレーする(撮影:斉藤健仁)

LOフランコ・モスタート(Honda)は2019年杯でHOマークスとともに「ボム・スコッド」と呼ばれた控えから出場してチームに活力を与えた。キヤノンの万能BKジェシー・クリエルは初戦でケガをして悔しいW杯となったが、26歳ですでに46キャップを重ねている。ヤマハ発動機にはセブンズでも活躍した機動力に長けたFLクワッガ・スミスがいる。

◇今年は欧州の各国代表選手も多数来日!

「ファンの熱意など2019年W杯を通じて日本に魅力を感じたのも事実。最近は(南半球だけでなく)北半球の選手も日本プレーしたがっています」とパナソニックの名将ロビー・ディーンズHCが話すように、今年は北半球、つまり欧州の強豪チームのトップ選手も来日が多いのが特徴で、彼らがまたトップリーグに違った彩りを与えることになりそうだ。

その筆頭は近年、日本のライバルで2019年W杯でも対戦したスコットランド代表76キャップのSHグレイグ・レイドロー(NTTコミュニケーションズ)だ。プレースキックや判断は正確で、キャプテンシーと経験でチームをリードするはずだ。

他にも2019年W杯で準優勝したイングランド代表のLOジョージ・クルーズ、ウェールズ代表としてW杯に出場したCTBハドレー・パークス(ともにパナソニック)、サラセンズ時代の2018―19シーズンに欧州最優秀選手に選ばれたSOアレックス・グッド(NEC)などがいる。

イングランド代表で準優勝に貢献したLOクルーズ。5度目の優勝を目指すパナソニックFW陣の大きな戦力となっている(撮影:斉藤健仁)
イングランド代表で準優勝に貢献したLOクルーズ。5度目の優勝を目指すパナソニックFW陣の大きな戦力となっている(撮影:斉藤健仁)

2018年度シーズンは神戸製鋼がMVPを受賞したオールブラックスのレジェンドだったSOダン・カーターの活躍もあり2度目の優勝を飾ったことは記憶に新しい。

ラストシーズンのトップリーグもオールブラックスが大活躍したチームが優勝するのか、それとも2017年度のサントリーのFB松島幸太朗(現フランス・クレルモン)のように日本代表選手がチームの先頭に立って戦ったチームが優勝するのか。

いずれにせよ、今年のトップリーグは日本代表選手や将来の日本代表を担う若手選手だけでなく、世界のスター選手の競演を大いに楽しんでほしい!

◇トップリーグ 強豪国代表キャップを持つ、主な外国人選手一覧

※☆は2019年W杯メンバー

【☆ホワイトカンファレンス】

神戸製鋼コベルコスティーラーズ(一昨年度優勝)

LOブロディ・レタリック(NZ代表81キャップ)☆

SOアーロン・クルーデン(NZ代表50キャップ)

FBベン・スミス(NZ代表84キャップ)☆

ヤマハ発動機ジュビロ(一昨年度3位)

CTBヴィリアミ・タヒトゥア(トンガ代表9キャップ)

FLクワッガ・スミス(南ア代表6キャップ)☆

パナソニック ワイルドナイツ(一昨年度6位)

LOジョージ・クルーズ(イングランド代表45キャップ)☆

CTBハドレー・パークス(ウェールズ代表29キャップ)☆

リコーブラックラムズ(一昨年度8位)

FLエリオット・ディクソン(NZ代表3キャップ)

CTBジョー・トマネ(豪州代表15キャップ)

NECグリーンロケッツ(一昨年度10位)

NO8ジャック・ラム(サモア代表38キャップ)☆

SOアレックス・グッド(イングランド代表21キャップ)

キヤノンイーグルス(一昨年度12位)

CTBジェシー・クリエル(南ア代表46キャップ)☆

日野レッドドルフィンズ(一昨年度15位)

FL/NO8ニリ・ラトゥ(トンガ代表54キャップ)

SHオーガスティン・プル(NZ代表2キャップ)

NTTドコモレッドハリケーンズ

SH TJ・ペレナラ(NZ代表69キャップ)☆

SOオーウェン・ウィリアムス(ウェールズ代表3キャップ)

WTBマカゾレ・マピンピ(南ア代表14キャップ)☆

【☆レッドカンファレンス】

サントリーサンゴリアス(一昨年度2位)

NO8ショーン・マクマーン(豪州代表26キャップ)

SOボーデン・バレット(NZ代表84キャップ)☆ 

CTBサム・ケレヴィ(豪州代表33キャップ)☆

トヨタ自動車ヴェルブリッツ(一昨年度4位)

LOジェイソン・ジェンキンス(南ア代表1キャップ)

FLマイケル・フーパー(豪州代表105キャップ)☆

NO8キアラン・リード(NZ代表127キャップ)☆

FBウィリー・ルルー(南ア代表61キャップ)☆

NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(一昨年度5位)

FLリアム・ギル(豪州代表15キャップ)

SHグレイグ・レイドロー(スコットランド代表76キャップ)☆

SOクリスチャン・リアリーファノ(豪州代表26キャップ)☆

クボタスピアーズ(一昨年度7位)

HOマルコム・マークス(南ア代表33キャップ)☆

SOバーナード・フォーリー(豪州代表71キャップ)☆

CTBライアン・クロッティ(NZ代表48キャップ)

Honda HEAT(一昨年度9位)

LOフランコ・モスタート(南ア代表39キャップ)☆

FBマット・ダフィー(NZ代表2キャップ)

東芝ブレイブルーパス(一昨年度11位)

FLマット・トッド(NZ代表25キャップ)☆

SOトム・テイラー(NZ代表2キャップ)

CTBセタ・タマニバル(NZ代表5キャップ)

宗像サニックスブルーズ(一昨年度13位)

PRパディー・ライアン(豪州代表3キャップ)

三菱重工相模原ダイナボアーズ(一昨年度14位)

FL/LOジャクソン・ヘモポ(NZ代表5キャップ)

SOコリン・スレイド(NZ代表21キャップ)

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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