雑誌や書籍の買われ方の移り変わりをさぐる(2023年公開版)
インターネットの登場でビジネス的に厳しい紙媒体。書籍などの紙媒体の買われ方にはどのような変化が生じているのか。二人以上世帯における推移を、総務省統計局による家計調査の結果(年次分は2022年分が最新)から確認する。
まずは主要紙媒体の購入世帯率(※)を世帯単位で示したのが次のグラフ。年ごとに、世帯単位で該当媒体を買った人がいるかいないかの割合。1年の間に1部・1冊でも買えば該当することになる。全世帯が購入すれば100%となるので、最大値は100%(実際には今件の年ベースの「購入世帯率」の値は各月調査結果の平均なので、あくまでも概念的な指標。例えば12人の人がそれぞれ別の月に1冊だけ買い、他の月には買わなかった場合、年平均は8.3%(1÷12)となるが、12人全体として「年1冊以上買った」人の割合の実態は100%となる)。
新聞の購入世帯率は(今データの領域では)2002~2003年の78.6%が天井。それ以降は毎年少しずつ、そして確実に減少している。今では「5割近くの二人以上世帯は新聞を取っていない」状態。一方で雑誌、書籍、その他の印刷物も少しずつだが減少を続けている。雑誌は今世紀に入ってから10%ポイント以上も減ってしまった。特に2012年以降は減少度合いが加速している。今や二人以上世帯では、10世帯のうち9世帯近くが「1年間に1冊も雑誌を買っていない」計算になる。
続いて世帯購入頻度(※※)。こちらは分かりやすいように月あたりで、世帯あたりどれぐらいの世帯が各媒体を購入しているかを示したもの。新聞など自宅に投函してもらうタイプは「1か月分の契約」で1購入と換算する。例えば1か月31日分投函してもらったから100×31=3100%となるわけではない(要は定期購読の契約率と見ればよい)。
2002年から2005年までは新聞の世帯購入頻度が100%かそれに近い状態だったが、それ以降は少しずつ減少を続けている。先の「購入世帯率」と見比べると、購入世帯の減少分がそのまま世帯購入頻度の低下にもつながっていることが分かる。つまり駅売りなどで販売される新聞には「大きな」変化は無いと考えられる。
直近の2022年においては、新聞では購入世帯率同様、世帯購入頻度も減少している。2012年は多少イレギュラーの可能性がある動きを示していたが(購入世帯率は落ちたものの、世帯購入頻度は上昇した)、やはり特異な事例、ぶれの範囲だったようだ。あるいは震災の影響や新学習指導要領の影響の可能性はある。もっとも2005年にも似たような現象が確認されており、驚くほどのものでもない。
他の紙媒体も状況的にはさほど変わらないが、雑誌が2009年に多少持ち直しを見せているのが目にとまる。このグラフの値は「金額」ではなく「購入された度合い」を示すので、この業界にとってはポジティブな話といえる(要は世帯単位での購入者が購入頻度を増やした)。しかし残念ながら2010年・2011年は再び大きな減少を見せ、2009年の持ち直しも帳消しとなった。それどころか2011年以降は下げ方が加速している。
この下げ方に加速がついた原因の一つとして考えられるのが、先の震災。これを起因と断言することはできないものの、タイミングは一致しており、要因の一つである可能性は高い。あるいは同時期に日本国内におけるスマートフォンの爆発的な普及率の上昇が始まっていることから、むしろこれが多分に影響した可能性はある。いずれにせよ相関関係レベルでの推測であり、因果関係を立証するものではない。
この数年はことさらに紙媒体の販売不振ぶりが取りざたされている。しかし今グラフを見る限り、多かれ少なかれその動きは「不調」が声高に叫ばれる昔から生じているのが分かる。昨今の問題とされている事象は「昨日今日に始まったもの」ではなく、「前々から存在していたもの」で、それが顕著化・加速化しただけに過ぎない。
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※購入世帯率
純粋に購入者が一人でもいた世帯の割合。1世帯内で複数の人が購入していても、購入世帯としては1世帯としてカウントする。
※※世帯購入頻度
世帯単位での月あたりの購入頻度。例えば特定の世帯において該当期間中に誰かが2回雑誌を購入すれば、その世帯の期間中の世帯購入頻度は200%になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。