秘密の花園?研究開発拠点?~山形の観光名所・川西ダリヤ園は本日、開園
・日本一のダリヤ園
山形県にある川西ダリヤ園は、ダリアの花はメキシコ原産のキク科の植物で、大輪の美しい花を咲かせます。日本には江戸時代末期にオランダから持ち込まれたと言われている花です。
山形県川西町にダリヤ園がオープンしたのは、1960年。町民が古くから栽培していたダリアの花を町のシンボルにということで、ダリアだけの公園としてオープンしています。ここは、日本最古にして、最大のダリヤ園なのです。
なお、最近では、ダリアという表記が一般的ですが、ここ川西町ではダリヤ園。ダリ「ア」の花がいっぱいのダリ「ヤ」園ということになっています。
・2021年度は本日開園
ダリアの花の見頃は、夏。8月から10月いっぱいくらいが、ダリヤ園も一番美しい期間になります。今年度の開園期間は、8月1日から11月3日です。
650種10万種のダリアの花が、約4ヘクタールの公園に咲き乱れる景色は幻想的です。これらの種類や規模は、ダリヤ園としては日本一です。東北の短い夏を爆発させるように、これから10月まで大きな花が次々に咲いていきます。
美しい花を写真に収めたり、写生が趣味の方にも人気の題材です。園内には子供の遊具もあり、ハイキングコースやパークゴルフ場なども隣接しているので、高齢者から家族連れ、若い人たちにも楽しめる場所になっています。
ダリヤ園の隠れた楽しみの一つが、ダリアの花の名前です。「どうして、こんな名前に?」と笑い声やスマホで撮影して友人や知人に送る人も多くいます。
・秘密の花園~朝のダリヤ園を独り占め
この川西ダリヤ園で隠れた人気なのは、朝のダリヤ園の特別入園。併設されている「川西町浴浴センターまどか」の宿泊客向けの特別サービスで、開園期間中、毎朝6時から9時まで、一般客が入園する前に、宿泊施設から直接園内に入れます。
朝の涼しい時間帯に、誰にも邪魔されずに写生をしたり、ほかの観光客が映りこまない写真を存分に撮ったりと、人気のサービスです。コーヒーを持って、園内のあずまやで、花園の中でのモーニングコーヒーを楽しむなんてこともできます。宿泊者だけに許された秘密の花園です。
宿泊客向けの朝のダリヤ園特別入園は、以前から実施していたものですが、今回のコロナ禍によって、改めてその価値が高まっているようです。
・料理のグレードアップ・近距離、日帰り客に選ばれるために
「遠距離からのお客さまが減少している分、県内などからのお客さまで頑張ろうとしています」というのは、「川西町浴浴センターまどか」の島貫順一支配人です。「温浴施設の休憩スペースや、宿泊施設、レストラン部門のコロナ対策は、昨年度にできる限りのことをすべてやっています」という。
「以前よりも、お一人やご夫婦お二人という旅行の方も増えています。安心して利用してもらえるように努力しています。」というのは、フタッフの黒澤宏子さん。以前とは異なり、県内客が増加しており、小人数で日帰り観光が増えているという。
県外観光客の大幅減少、インバウンド客の消失、さらに長期化する首都圏での新型コロナの感染拡大は、地方の観光産業に大きな打撃となっています。川西ダリヤ園などもその例外ではありません。
「幸い、ダリヤ園は屋外ですし、園内も広く密になることはありません。併設されているパークゴルフ場も、屋外でのスポーツで、大人も子供も楽しめるということで人気があります。当館も感染防止に努めながら、いろいろなサービスを提供していきたい。」島貫支配人は言います。
「もともと川西産の材料を取り入れるなど、お料理には力を入れてきたのですが、今回、東京の有名フレンチレストランで経験を積んだ若手スタッフが新規加入したのです。今年のダリアシーズンに向けて、これまでの和食や洋食に加えて、本格的なフレンチの魅力も取り入れるなど、ダリヤ園に来た日帰りのお客様にも喜んでもらえるようないろいろ企画を立てているところです」と黒澤さんは張り切っています。
・ダリアで元気に~町の産直所も用意万端
「いよいよダリヤ園開園ですから、ダリアコーナーを作ってみました。」そう笑うのは、川西町の産直所「森のマルシェ」の横山亜紀マネージャー。県内のお客様もちょっと珍しいなと思ってもらえるような商品も用意したと言います。「町内の高齢者の方たちに声をかけて、ダリアの花を使った作品なども作ってもらいました」と言います。さらに、「ダリヤ園に行かれて、おみやげにダリアの生花が欲しいという方も、よく立ち寄られます。なので、開園期間中は、川西町特産のダリアの花も販売しています。」と言うように、町内のダリア栽培農家の方たちとも連携強化しています。
・川西ダリヤ園の隠された役割
実は、ダリアの花は、単にダリヤ園で観賞用にだけ植えられているわけではなく、園芸作物として川西町をはじめとする山形県で栽培され、全国に販売されています。大振りで美しいダリアは、産地間競争が激しいのですが、実はその競争に勝ち抜く大きなカギが、川西ダリヤ園なのです。
ほかの産地ではない数多くの品種と新たな品種の開発が、この川西ダリヤ園で行われています。毎年、新たな品種が生み出されている研究開発拠点でもあり、単なる観光名所ではないのです。
・9月、10月には観光客が戻ってきてくれないか
首都圏の飲食店やホテルの苦境がしばしば伝えられますが、地方の観光産業もコロナ禍の影響を大きく受けています。そして、その影響は観光産業にとどまらず、関係する商業、農業、水産業など多岐に及びつつあります。
今回、お話を聞いた川西町の方々も、コロナ禍による様々な制限の中で、なんとか業績の安定と復興をと試行錯誤しておられます。「なんとかワクチン接種が中高年から若年層に行き渡り、9月、10月には観光客が戻ってきてくれないか」と言う声を多くの方から聞きました。
川西ダリヤ園の最盛期は10月上旬。東北の短い夏が終わる頃には、多くの人の歓声が聞こえてているようにと願わずにいられません。
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